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もののけ姫のたたらばはどこ?島根県が舞台の理由を徹底解説!

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もののけ姫のたたらばはどこ?島根県が舞台の理由を徹底解説!

もののけ姫を観て、エボシ御前が治めるたたら場の壮大な世界観に魅力を感じた方も多いのではないでしょうか?「あの美しくも力強いたたら場は一体どこにあるのだろう?」「なぜ島根県がモデルになったのだろう?」そんな疑問を抱いたことがあるかもしれません。

実は、もののけ姫のたたら場には実在するモデルがあり、それが島根県雲南市にある菅谷たたらなのです。この記事では、なぜ島根県が舞台として選ばれたのか、そしてたたら製鉄がこの地でどのように発展したのかを詳しく解説していきます。

もののけ姫のたたら場のモデル:島根県菅谷たたらの真実

現在、生産施設が残っているタタラ場は、島根県雲南市吉田町にある「菅谷たたら」のみです。そして、『もののけ』に登場するタタラ場のモデルはこの菅谷たたらだと言われています。

「もののけ姫」のなかで鉄を作っているあの建物は、全国でも唯一現存している「菅谷たたら」内の”高殿”をモデルにしていると思われます。

菅谷たたらがもののけ姫のモデルとなった理由には、いくつかの重要な要素があります:

  • 唯一現存する高殿建物:日本で唯一、たたら製鉄の建物「高殿」が現存している
  • 深い森に隣接する立地:映画同様に豊かな森林に囲まれている
  • 世界最高品質の鉄:世界1とも言われる高品質な鉄を多く生み出していた
  • 製鉄の神の言い伝え:中国地方には「金屋子神(かなやごかみ)」と呼ばれる製鉄の神の言い伝えがある

菅谷たたらの歴史と規模

1751年から170年間操業した菅谷たたらは、現在、国の重要有形民俗文化財に指定されています。田部(たなべ)家における中心的なたたらで、大正10年(1921)までの130年間稼働しました。

項目詳細
操業期間1751年〜1921年(約170年間)
所在地島根県雲南市吉田町
文化財指定国の重要有形民俗文化財(1967年)
建物規模一辺約18m四方の正方形
特徴日本で唯一現存する高殿

なぜ島根県がたたら製鉄の聖地になったのか?

島根県、特に奥出雲地域がたたら製鉄の中心地となった理由には、地理的・資源的な背景があります。

豊富な砂鉄と森林資源

中国山地では良質な砂鉄と豊富な森林資源があったため、各地にたたらが作られて発展していきました。奥出雲(島根県東部の山間部)です。この地域では良質な砂鉄が採れることから、高品質で日本刀や鉄砲の素材として使われる鉄「玉鋼」の生産に適していました。

たたら製鉄に必要な三大要素が、この地域には完璧に揃っていました:

  1. 良質な砂鉄:中国山地の砂鉄は純度が高く、製鉄に最適
  2. 豊富な木炭:広大な森林が高品質な木炭を提供
  3. 適切な粘土:炉の建設に必要な耐火性の高い粘土

奥出雲の圧倒的な生産規模

奥出雲エリアは特にたたら製鉄が盛んで、最盛期には全国の鉄の8割が生成されており、今では人口1,500人程度の吉田町にも当時は1万~1万5千人が暮らしていたという驚異的な規模を誇っていました。

この数字からも分かるように、島根県奥出雲地域は日本の製鉄業の中心地として絶対的な地位を占めていたのです。

たたら製鉄技術の発展過程と島根の役割

古代から中世へ:技術の変遷

たたら製鉄の原型は、鉄器が使用されるようになった弥生時代中期に出現し、6世紀頃には日本全国に分布していたとされています。「たたら」という名称も『古事記(712年)』や『日本書紀(720年)』に認められています。

鉄生産は、中国と東北の一部では古代・中世・近世と継続しますが、その他の地域では鎌倉時代までには姿を消してしまいます。

島根県を含む中国地方が、他の地域と異なり長期間にわたってたたら製鉄を継続できた理由は、資源の継続的な供給能力にありました。

室町時代から江戸時代:技術革新の時代

室町時代までは「野だたら」と言って、山の斜面に炉を築き、自然の風を利用していたそう。雨が降っても濡れないように、「高殿(たかどの)」という建物を作って、その中で鉄を作るようになったのは江戸時代のこと。

江戸時代には送風技術も大幅に改良されました:

江戸時代には天秤になっている大きな板を踏んで風を炉に送る足踏み鞴(ふいご)が登場し、作業効率が飛躍的に上がります。もののけ姫に出てくる「たたら」はこの足踏み式。

最盛期への到達

このような長い変遷を経たのち、たたら製鉄が成熟し完成の域に達するのは18世紀に入ってからのことである。たたら製鉄はその後も製法や設備の改良が進み、末から明治頃に最盛期を迎えます。

もののけ姫が描いたたたら場の真実

映画と現実の製鉄技術の比較

宮崎駿監督のアニメ映画『もののけ姫』は、中世(室町時代の頃)の日本の鉄をつくる村が舞台だ。威勢のいい女性たちが踏み板を踏むシーンがあるが、あの踏み板は、鉄をつくる炉に空気を送る「ふいご」である。実際は大変な重労働なので、女性が踏むことはなかっただろうが、「たたら製鉄」の様子が見事に描かれていた。

映画では女性たちがたたらを踏んでいましたが、現実には:

ふつう男性が行う番子の仕事をエボシ御前のたたらでは女性が行っています。エボシ御前のたたら場で暮らす女性たちは、皆はっきりものを言う人たちばかりですが、男性でもつらい重労働を行っているという自負が、彼女たちをそんな性格にしているのかもしれません。

たたら場の社会システム

実際たたら製鉄を行う集落は、付近の農村とは隔絶した自治領のような存在でした。たたら製鉄者たちの集落は「山内」と呼ばれ、人口は100~200人ほどあり、山内だけで通用する銭札も発行されていました。

映画でアシタカが「まるで城だな」と驚いたのも、実際のたたら場が要塞のような構造だったからです。

環境破壊という現実

また近世以前の中国山地では、製鉄の為に樹木が伐採されるなど、環境破壊があったと問題視されています。自然を破壊したことでタタリ神を生んだ『もののけ姫』の設定にも、どこか似ていると言えるのではないでしょうか。

しかし、奥出雲においては25年から30年のサイクルで木材の計画的な伐採が行われており、必ずしも森林が乱伐されていたわけではないという持続可能な管理も行われていました。

SNSで話題の菅谷たたら体験談

「もののけ姫のたたら場のモデル「菅谷たたら」を見学してきました!実際に見ると、映画の迫力が現実にあったことを実感します。高殿の大きさに圧倒されます」


引用:Twitter投稿

実際に訪問した方々の体験談を見ると、映画で描かれた世界観が現実に基づいていることを改めて実感できます。特に高殿の迫力は、映画の印象を上回るという声が多く聞かれます。

「菅谷たたらの受付の方が、屋根の三角の窓から朝日が差し込む神聖な雰囲気について教えてくれました。昔の人の計算された建築技術に感動しました」


引用:4travel旅行記

建物の構造一つ一つに込められた先人の知恵に触れることで、もののけ姫の世界観がより深く理解できるという声も多数あります。

「島根県のたたら文化伝道師の資格を取得しました。もののけ姫をきっかけにたたら文化に興味を持つ人が増えていることを実感します」


引用:note記事

映画をきっかけに本格的にたたら文化を学ぶ人も現れており、文化継承の新しい形として注目されています。

島根県が選ばれた深い理由:文化的背景

金屋子神の信仰

島根県がたたら製鉄の聖地となった背景には、単なる資源の豊富さだけでなく、精神的・文化的な土壌がありました。

たたらの脇を流れる川沿いにはたたら場の神「金小屋神(かねこやのかみ)」が祀ってあり、小さな祠(ほこら)があるのですが。この「金子屋神」様、なかなかのひねくれもので、様々な禁忌をもつ神と云われています。

この金屋子神の存在は、たたら製鉄が単なる産業ではなく、神聖な営みとして位置づけられていたことを示しています。映画でも描かれた「女人禁制」の風習も、この神への畏敬の念から生まれたものでした。

鉄師制度という独特な社会システム

これら山内のすべてを取り仕切るのが「鉄師」で、広大な山林を持ち、山林から採れる木炭や砂鉄を使って職人たちに鉄を作らせ、さらに彼らの生活全般の面倒をみました。ちょっとした小領主といった存在で、『もののけ姫』におけるエボシ御前はまさに鉄師と言えます。

島根県では田部家、絲原家、櫻井家の「鉄師御三家」が、この地域の製鉄業を支配していました。彼らは単なる事業主ではなく、地域の文化的発展にも大きく貢献していました。

現代に蘇るたたら製鉄:島根の挑戦

途絶えた技術の復活

明治時代になると海外から安価な輸入鋼材が流入したことで国内製鉄は衰退。1923年(大正12年)に商業生産を終えたことで、銑押し法の技術は失われました。

しかし、島根県では失われた技術の復活に向けた努力が続けられています。

昭和52(1977)年、日本刀の原料としての和鋼が払底したことに伴い、「日刀保たたら」を創設、以来今日まで現存する唯一のたたら製鉄として日本刀材料としての玉鋼を供給し続けています。

新たな文化継承の取り組み

「たなべたたらの里」では2018年にたたら操業が行われ、100年ぶりに田部家のたたらの火が現代に蘇りました。現在は年に2回、春と秋にたたら操業が実施されています。

この復活は単なる技術継承にとどまらず、地域のアイデンティティ回復という意味も持っています。

まとめ:もののけ姫が繋いだ島根とたたら文化

島根県がもののけ姫のたたら場のモデルとして選ばれたのは、偶然ではありません。この地が持つ以下の要素が、宮崎駿監督の構想する世界観と完璧に合致したからです:

  • 技術的優位性:日本最高品質の玉鋼を生産する技術力
  • 地理的条件:良質な砂鉄と豊富な森林資源
  • 歴史的継続性:古代から近世まで継続した製鉄文化
  • 精神的土壌:金屋子神信仰に代表される文化的背景
  • 社会システム:鉄師制度という独特な自治的共同体

現在でも島根県を訪れれば、菅谷たたら山内で映画の世界を実体験することができます。そして、現代に復活したたたら製鉄を通じて、この地域が持つ技術と文化の深さを感じることができるでしょう。

映画をきっかけに、日本の豊かな自然と文化、そして人々の営みが織りなす「たたら文化」の奥深さに触れる旅は、きっとあなたにとって新たな発見と感動をもたらしてくれるはずです。

もののけ姫のたたら場が島根県をモデルとして描かれたのは、この地が持つ1400年に及ぶたたら製鉄の歴史と文化、そして現在も息づく技術継承の精神があったからこそなのです。映画を通じて多くの人がこの素晴らしい文化に興味を持ち、実際に島根県を訪れることで、日本の製鉄技術の真髄に触れることができるのは、まさに文化継承の理想的な形と言えるでしょう。

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