もののけ姫の物語で、エボシ御前の忠実な部下として活躍するゴンザ。タタラ場においてもっとも地位の高い男衆である彼の正体について、ファンの間では様々な考察がなされています。「あのハゲの正体は何者なのか?」「なぜエボシ様にあそこまで忠実なのか?」そんな疑問をお持ちの方も多いでしょう。
この記事では、ゴンザの隠された過去から現在に至るまで、彼の全貌を徹底的に解き明かします。宮崎駿監督が設定した裏設定や、声優上條恒彦さんの魅力、そして劇中での活躍まで、ゴンザについて知りたいことが全てここにあります。
ゴンザの基本プロフィールと正体
エボシ御前の側近であり護衛を務めています。エボシ御前が最も信頼する家臣の1人です。貸し与えられた石火矢衆40名の副官を務めるゴンザ。彼の最も注目すべき特徴は、その壮絶な過去にあります。
元倭寇(海賊)という正体
「ゴンザ」は倭冠に所属していました。そこで「エボシ」と出会うことになります。やがて「エボシ」が掲げる理想郷に感銘を受け頭領亡き後は「エボシ」に仕え理想郷実現の為、尽力する事になります。
13世紀から16世紀に朝鮮半島や中国大陸、及び東アジア諸地域の沿岸や一部内陸に存在した海賊です。和寇と表記されたり、海乱鬼、八幡とも呼ばれています。つまり、ゴンザは国際的な海上勢力である倭寇の一員だったのです。
エボシ御前との運命的な出会い
本編で語られることはなかったが、かつてはタタラ場の娘達と同様に人身売買されたという辛い過去があり、彼女自身が社会的弱者であった。倭寇の頭目に買い取られ妻となるが、次第に組織の実権を握るようになった頃夫である頭目を自らの手で殺害し、明の兵器と共に日本へ帰ってきたという壮絶な過去がある。ゴンザはその時頭目に従っていた部下の一人だったが、エボシの強さに惚れ込み付いてきたという。
この設定は、宮崎駿監督が設定した裏設定であり、本編では明確に語られることはありませんでした。しかし、この背景を知ることで、ゴンザの行動や性格の深層がより理解できるようになります。
ゴンザの人物像と性格分析
短気だが義理堅い性格
威張り屋で短気な性格であり、エボシを守る使命感があることもあり血の気が多く好戦的である。その一方で、エボシのことになると弱気になる部分もあり、彼女が危機に陥ると狼狽える部分もある。
アシタカに対し得体が知れないと疑いながらも、まずはタタラ場の者たちを助けてもらった礼を伝えるゴンザ。義理を通す性格であることが見えますね。この義理堅さは、海賊時代から培われた男の美学によるものでしょう。
意外な知識と教養
粗暴なイメージがあるゴンザですが、この時代に読み書きができるのは実はかなり珍しい部類です。実際タタラ場の女性たちは文字がわからないという描写もあり、意外にもゴンザが学を身に着けていることが分かります。
倭寇であったことやエボシが明国を視察して石火矢を輸入する際にも随伴していたことから、ゴンザは多少の中国語が話せる可能性がある(むしろ、ゴンザがいたからこそ石火矢の輸入が円滑に進んだ可能性もあるのかもしれない)。
ゴンザの戦闘能力と強さ
石火矢衆副官としての実力
見た目通りに筋力に優れており、得物はかなり大きな太刀であり、すばやく鞘から抜いていたり不自由なく斬撃を繰り出せていることからも、かなりの鍛錬を積んでいると思われる。また、石火矢の取り扱いにも長けている。
サンとの戦闘シーンの真相
劇中でサンに敗北するシーンがありますが、人並み以上の素早さを持つ「サン」が強すぎるだけなのです。実際、個の力では作中でも中の上と言ったところかと思います。石火矢だけでなく太刀も使えるため接近戦と遠距離戦の両方に対応できる実力者です。
暴走したシシガミを前にしても逃げずにエボシを守り通したことで最後に男を上げた気がするという評価もあり、護衛としての真価は危機的状況で発揮されるのです。
エボシ御前への忠誠心の源泉
恋心か尊敬か
映画の公式パンフレットの中で「ゴンザは密かにエボシに惚れている」という趣旨の記載があったそうです。しかし、作中でのゴンザの言動をみている限り、「異性として惚れている」よりも「人間性やカリスマ性に惚れている」ような印象を受けます。
自分の親分を殺されたのに、ついてくるって相当の尊敬がないとできません。この行動からも分かるように、ゴンザの忠誠心は単純な恋愛感情を超えた深い敬愛に基づいているのです。
理想郷実現への共感
「エボシ」の理想郷実現のため尽力する事となります。エボシが目指す理想郷は、身売りされた娘達や病人(おそらくハンセン病患者)、その他はみ出し者といった行き場の無い社会的弱者達を差別することなく積極的に保護し、教育と職を与え、人間らしい生活が送れるように講じるというものでした。
この理想に、元海賊という社会の底辺にいたゴンザが心から共感したのは自然なことでしょう。
声優・上條恒彦の魅力と演技力
上條恒彦のプロフィール
上條 恒彦(かみじょう つねひこ、1940年〈昭和15年〉3月7日 – 2025年〈令和7年〉7月22日)は、日本の歌手、俳優、声優。長野県東筑摩郡朝日村出身。ゴンザ役の声優を務めた上條恒彦は、残念ながら2025年7月22日に老衰のため享年85歳で亡くなっています。
TBSで放送されていた学園ドラマ『3年B組金八先生』の社会教師・服部肇役で有名 声優としても、紅の豚(1992年) マンマユート・ボス 役、もののけ姫(1997年) ゴンザ 役千と千尋の神隠し(2001年) 父役 役などで活躍。
ダイナミックな声の魅力
ダイナミックで重厚感のある声や演技で、多くのファンを魅了する大ベテランです。この重厚感のある声質が、海賊出身という設定のゴンザにぴったりと合致しており、キャラクターに深みを与えています。
ゴンザの名セリフと印象的なシーン
心に響く名セリフ集
「ケガ人を届けてくれたこと、まず礼を言う」
このセリフからは、ゴンザの義理堅さと礼儀正しさが伝わってきます。疑いを持ちながらも、まず恩義を重んじる姿勢が海賊出身とは思えない品格を感じさせます。
「だが得心がいかん。我らがここに着いて半刻もせずにお前は来た。しかも谷底から大の男を担ぎ、シシ神の森を抜けてだとお……」
アシタカに対する疑念を表現したこのセリフは、ゴンザの警戒心の強さと同時に、論理的な思考力も示しています。
アシタカとの刀のシーン
ゴンザの刀のシーンというのは、ゴンザがアシタカに刀を向けるも腕力で曲げられてしまい驚愕するシーンです。しかしアシタカはゴンザの刀を素手で掴み、そのまま捻ってぐにゃりと曲げてしまいます。ゴンザは驚愕し、その後サンに顔面を踏まれて気絶したのでした。
このシーンは一見コミカルに見えますが、呪われたアシタカの超人ぶりとゴンザのエボシを守ろうとする忠誠心が現れたシーンとなりました。
SNSでの評価と感想
もののけ姫ファンからのゴンザに対する評価を見てみましょう。
もののけ姫のゴンザって結構良いやつだと思った 本業の戦闘ではからっきしだったけど、モロにやられたエボシを最後まで守ってたし
引用:Twitter
この投稿からは、戦闘では目立った活躍がないものの、最後まで主君を守り抜く義理堅さが評価されていることが分かります。
もののけ姫のゴンザ サンには顔踏まれる アシタカには剣を曲げられる 甲六を護衛できずトキに叱られる 目立った活躍はなかったけど、暴走したシシガミを前にしても逃げずにエボシを守り通したことで最後に男を上げた気がする
引用:Twitter
この評価は的確で、ゴンザの真価は平時ではなく、真の危機に直面した時に発揮されることを指摘しています。
もののけ姫のゴンザが礼儀正しいところが好きだという感想です。ゴンザはアシタカに不信感を持っていたため刀で斬りかかったり疑ったりして横柄に取られてしまいますが、それもエボシやタタラ場を守るためでした。
引用:BiBi
ファンは、ゴンザの行動の背景にある護衛としての使命感を理解し、その礼儀正しさを評価しています。
ゴンザの護衛能力の真価
真の護衛としての実力
エボシに向かって突進してくるモロにエボシは石火矢を放ちますが、急所から外れモロの勢いは止まりません。まずいっ!と思ったところで、ゴンザが火炎放射のような物をモロにぶつけ無事、谷底に落とすことに成功します。モロの迫力を前にしてビビることなく仕事をこなしエボシを守り切るゴンザは流石といえますね。
物語の終盤、エボシはモロに右腕を食いちぎられます。一人では歩けないほどの重傷を負いますが、その時もゴンザはエボシに肩を貸し逃げる手助けをします。
護衛としての心構え
ゴンザという守りがあるからこそエボシは躊躇なく無茶が出来るのではないでしょうか。これは護衛として最高の評価と言えるでしょう。主君が安心して前線に立てるのは、信頼できる護衛がいるからこその話です。
ゴンザの海賊時代の謎
泳げない海賊という矛盾
海賊のくせに泳げないなんて…どこぞの麦わら帽子の兄ちゃんと被ってるとか思ってはいけないのである、海賊の出身でありながら、なぜか泳げない。
この設定は一見矛盾しているようですが、倭寇は必ずしも全員が船員技能を持っていたわけではなく、陸戦部隊としての役割を担う者もいたと考えられます。ゴンザの場合、その体格と戦闘能力から、上陸戦での戦闘要員だった可能性が高いでしょう。
エボシとの脱出劇
ゴンザ以外にエボシに追従した配下は知られておらず、彼らがどのように無事に倭寇を抜け出せたのかも不明であるため、もしかすると血なまぐさい出来事があった可能性もある。
この部分は明確に設定されていませんが、倭寇という危険な組織からの脱出が簡単ではなかったことは想像に難くありません。
ゴンザの現代における意義
現代社会への示唆
ゴンザという人物は、現代の私たちにも多くのことを教えてくれます。元海賊という過去を持ちながら、エボシの理想に共感し、社会的弱者を守るタタラ場の一員として生きる姿は、人は過去に縛られることなく変われるということを示しています。
忠誠心と現代の働き方
ゴンザって特別重要なキャラクターってわけではないですが、エボシの強キャラ感を強調したり、重めストーリーの『もののけ姫』でコミカルシーンもやれる「いないと困る奴」だと思ってます。
この評価は、現代の組織においても「縁の下の力持ち」として組織を支える人材の重要性を表しています。目立たなくても、組織にとって不可欠な存在の価値を改めて認識させてくれます。
まとめ:ゴンザという男の魅力
もののけ姫のゴンザは、表面的には短気でコミカルなキャラクターに見えますが、その背景には壮絶な過去と深い人間性が隠されています。元倭寇(海賊)という出自でありながら、エボシ御前の理想に共感し、社会的弱者を守るタタラ場の一員として献身的に働く姿は、真の男の美学を体現していると言えるでしょう。
ゴンザ役の声優を務めた上條恒彦は、残念ながら2025年7月22日に老衰のため享年85歳で亡くなっていますが、その重厚で温かみのある声は、ゴンザというキャラクターに深い魂を吹き込みました。
戦闘では目立った活躍を見せないゴンザですが、真の危機に直面した時に発揮される護衛としての真価、義理堅さ、そしてエボシ御前への変わらぬ忠誠心は、多くのファンに愛され続ける理由となっています。
宮崎駿監督が描いた「もののけ姫」の世界において、ゴンザは決して主役ではありませんが、物語に欠かせない重要な存在として、その魅力を放ち続けているのです。彼の生き様は、現代を生きる私たちにも、過去に囚われることなく理想に向かって歩み続けることの大切さを教えてくれています。