「もののけ姫のヤックルって、いったい何の動物なんだろう」「あの健気で忠実な姿がたまらないけど、正体が気になる」と思っているあなた。もののけ姫を何度見ても、ヤックルの魅力に引き込まれるけれど、その正体や背景について疑問に感じることはありませんか?
この記事を読めば、ヤックルの正体から宮崎駿監督が込めた深い意味まで、すべてを理解できます。表面的な情報だけでは分からない、ヤックルというキャラクターの奥深さを完全に解説します。
ヤックルの正体は「絶滅したアカシシ」という設定
ヤックルは架空の動物で、公式設定では「今は絶滅した、アカシシと呼ばれる大カモシカ」とされています。宮崎駿監督は「ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが自分の中のどこかにあったので、作りました」と語っています。
赤茶色の体と頭に生えた大きな角、首元の白くふわふわとした毛が特徴で、しなやかな4本の足を持つヤックルは、エミシの土地より西では見られない獣らしく、エボシは「見慣れぬシシ」と正体を測りかねていました。
この「絶滅した動物」という設定には、宮崎監督の深い思いが込められています。現代では失われてしまった自然と人間の理想的な関係を、ヤックルという存在を通じて表現したのです。
なぜヤックルは「アカシシ」と呼ばれるのか?
劇中ではジコ坊が「赤獅子にまたがった青年」という表現の仕方をしていました。ジコ坊が引用した古い文献には「アカシシに跨がり、石の矢尻を使う勇壮なる蝦夷の一族有り」と記されています。
アカシシの名前の由来と意味
– 赤茶色の体色から「アカ」
– 鹿のような優雅さから「シシ」(古語で鹿を意味する)
– エミシ一族独特の文化と密接に関わっている
実在するニホンカモシカにも「アオシシ」や「アオ」という別名があります。これは古来より日本人が鹿のような動物を「シシ」と呼んできた文化的背景を反映しています。
ヤックルのモデルとなった動物たち
複数の動物の特徴を組み合わせた創造物
モデルとなった動物はエランドであり、行動はシャモア、模様はリーチュエ、巨大な角はアイベックス、オリックス、サオラ、セーブルアンテロープ、ブルーバック、ブラックバック等にも似ています。
主なモデル候補動物
動物名 | 類似点 | 生息地 |
---|---|---|
エランド | 体格・体色 | アフリカ |
アイベックス | 立派な角・跳躍力 | ヨーロッパ・アジア |
ニホンカモシカ | 日本的要素 | 日本 |
ヤクシカ | 屋久島との関連 | 屋久島 |
アカシシとは、オオカモシカのことを言い、別名エランドと呼ばれています。ウシ科に属する動物で、昼行性でありながら暑い日中はあまり活動しないという特徴を持っています。
アイベックス説が有力な理由
オオカモシカよりも、ヤックルとビジュアルがそっくりだという声が多数上がっているのです。アイベックスの特徴:
– 立派な角: オスメス共に持つ大きく美しい角
– 優れた跳躍力: 崖や岩場を軽々と移動する能力
– 赤茶色の体色: ヤックルの色合いに酷似
– 高い知能: 人間の感情を理解する様子
アシタカとヤックルの深い絆の秘密
主従関係を超えた真の相棒関係
どんな窮地にあっても常にアシタカを守ろうと必死で、それでいてアシタカの命に忠実に従います、もはや使役動物というよりは相棒に近いほど深い中にあるアシタカとヤックルです。
ヤックルの献身的な行動例
– 矢が刺さっても主人についていく健気さ
– タタリ神の恐怖に震えても逃げない忠誠心
– 意識を失ったアシタカを守り続ける愛情
– サンとの仲裁役としての役割
人間の言葉を話すことはできない普通の動物であるものの、人間の話すことを理解しているので高い知能を持っているようです。この高い知性があるからこそ、単なる乗り物ではなく、アシタカの心の支えとなっています。
エミシ一族の文化的背景
「もののけ姫」劇中では、アシタカ達エミシの一族が騎乗動物として飼いならしており、集落ではヤックル以外の個体もわずかながら描かれています。
エミシ一族にとってヤックルは:
– 生活に欠かせないパートナー
– 狩猟における重要な相棒
– 文化的アイデンティティの象徴
– 自然との調和を表す存在
ヤックルの名シーンと魅力の分析
朝駆けシーンの美しさとその意味
アシタカが村を出てから、ヤックルと共に走っているシーンがあります。真夜中に走り始めてからしらじらと夜が明け始めます、それと同時に壮大な音楽が盛り上がっていきます。
このシーンで宮崎駿監督は音楽の担当の久石譲と背景の担当者にわざわざ特別な注文をしたと言います。「今、アシタカの心の中は、絶望と怒りと悲しみで真っ黒です。そんな彼には最高の朝をあげたいんです」というものです。
このシーンの演出意図:
– アシタカの絶望的状況への監督の配慮
– ヤックルとの旅立ちによる希望の表現
– 美しい自然描写による癒しの提供
– 音楽と映像の完璧な調和
矢が刺さっても従うシーンの感動
ヤックルのかわいらしさが表れているのが、矢が刺さってもアシタカについてくるシーンです。劇中、侍が放った矢がヤックルのお尻に刺さってしまいます。アシタカは「ここで待っとけ」と言いますが、ヤックルは忠実にアシタカについてこようとするので、仕方なく連れていくことにするのです。
このシーンが愛される理由:
– 健気で一途な性格の表現
– 主人への絶対的な信頼
– 観客の心を掴む愛らしさ
– アシタカの優しさも同時に描写
タタリ神との対峙での恐怖と勇気
タタリ神が出てきてヤックルの方へ近づいてきた際、アシタカが「ヤックル!逃げろ!」と言うものの、ヤックルは恐怖でフリーズしてしまいます。そこでアシタカは動けなくなったヤックルの近くの柱に矢を放ち、恐怖を解いて助けてあげるのでした。
この場面の重要性:
– ヤックルも普通の動物であることの表現
– アシタカとの相互の信頼関係
– 恐怖を乗り越える勇気の象徴
– 物語冒頭の緊張感ある展開
ヤックルの性別論争:オス説とメス説
オス説の根拠
立派な角をもっていることから、”オス”という声の方が大多数なようです。確かに”鹿”であれば、メスは角をもたないため、確実にオスであると思います。
オス説の理由
– 立派で大きな角の存在
– 一般的な鹿の生態学的特徴
– 力強い走りや跳躍能力
– アシタカを支える頼もしさ
メス説の根拠
ヤックルの性別は明かされていませんが、アシタカに献身的な様子からメスではないかと考察されています。
ヤックルは、主人であるアシタカを温かく見つめているシーンが、多くみられます。そこから、ファンの方々は、”この眼差しは完全にメスなのでは!?”と話題になっているのです。
メス説の理由
– 優しく温かい眼差し
– 献身的で母性的な行動
– しなやかな動きと仕草
– 細やかな気遣いを見せる場面
カモシカには角をもつメスも存在していますので、100%とはいえませんため、性別の判定は難しいのが現状です。
山犬との友情が描く共存の可能性
敵対から友情への変化
山犬の匂いがするサンに対して、背中から振り払おうとする仕草を見せるなど、ヤックルも初めは、サンと山犬に対して恐怖心を抱いていました。
しかし、最後は、鼻をすり合わせるなどすっかり仲良しになった山犬とヤックルの姿は、癒される度抜群ですね。
変化のプロセス
1. 初期の恐怖と警戒
2. アシタカを通じた理解
3. 共通の体験による絆の深化
4. 最終的な友情の成立
確か、銃で撃たれ負傷したアシタカを、サンが運んでいた時、山犬の子供たちが『あいつ、食っていい?』と聞いてましたよね……?サンがアシタカを”私の獲物だ”と言っていたように、ヤックルも山犬にとって、捕食対象でしかなかったはずです。
共存のメッセージを体現する存在
ヤックルとアシタカの姿は自然と人間との理想の形と感じます、主従関係があるにしろあそこまでの信頼関係は本当の相棒として共に過ごしてきた姿が容易に想像できます。
この関係性が示すもの:
– 異なる種族間での理解の可能性
– 恐怖を乗り越えた真の友情
– 自然と人間の調和的関係のモデル
– 対立から協調への転換の象徴
SNSで話題になっているヤックル関連の投稿
ファンの愛情あふれる投稿
ヤックル ケガをしてもなおアシタカについていく姿が健気なヤックル。パンフレットでは「今日では絶滅した、アカシシと呼ばれるオオカモシカ」と説明されています。宮崎駿監督は「ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが☞続く
引用:https://twitter.com/kinro_ntv
金曜ロードショーの公式アカウントからの投稿で、ヤックルの健気さが多くの視聴者に愛される理由が端的に表現されています。
ヤックルの癒し効果に関する投稿
このシーンは人気が高く、漫画『呪術戦』には秤金次が「こんなに凹んだのはヤックルの尻に矢がブッ刺さった時以来だよ」と言うセリフも存在します
引用:https://ciatr.jp
他の作品でも引用されるほど、ヤックルの名シーンは多くの人の心に深く刻まれています。
ジブリ公式の解説投稿
Q:ヤックルはずっと鹿だと思っていたのですが……人が鹿に乗っているイメージがないのですが……。
A:ヤックルは架空の動物です。「今日では絶滅した、アカシシと呼ばれる大カモシカ」という設定があります。
引用:https://twitter.com/JP_GHIBLI
スタジオジブリ公式からの回答で、ファンの長年の疑問が公式に解決された記念すべき投稿です。
ファンアートとヤックル愛
アシタカが里にいた頃のお話として創作しました。ヤックルとアシタカの絆の強さは映画を観ているだけでひしひしと伝わってきます。彼らのエピソードは過去にもいくつか書きましたが、もっと沢山あるだろうし書いてみたいです。
引用:https://dic.pixiv.net
二次創作でも愛され続けるヤックルとアシタカの関係性に、多くのファンが魅了されていることが分かります。
ヤックルのモデル動物に関する考察投稿
宮崎は「ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが自分の中のどこかにあったので、作りました」と語っている
引用:https://dic.pixiv.net
監督自身の言葉から、ヤックル創造の背景にある創作上の意図が明確に示されています。
ヤックルが『もののけ姫』以前から存在していた事実
『シュナの旅』での初登場
ヤックルは実は、宮崎駿監督の漫画『シュナの旅』(1983年刊行)やジブリ映画『ゲド戦記』(2006年)にも登場していました。
「もののけ姫」が誕生するはるか昔の1983年。宮崎監督が手がけた漫画のような、絵本のような「シュナの旅」という作品。物語中で主人公”シュナ”をその背に乗せているのは「ヤックル」です。
ヤックルの作品横断的な登場
作品名 | 公開年 | 役割 |
---|---|---|
シュナの旅 | 1983年 | シュナの相棒 |
もののけ姫 | 1997年 | アシタカの相棒 |
ゲド戦記 | 2006年 | アレンの相棒 |
宮崎監督の創作における継続性
本作におけるヤックルも「もののけ姫」同様、騎手であるシュナに忠実な相棒として描かれています。シュナ達が人狩りの追跡から逃げる際には、シュナとテア、テアの妹の3人を乗せ、まる2日間を昼夜休まずに走り続け、泡を吹いて倒れ込んでしまうまで走るのをやめなかったという描写からも、一貫した忠実さが表現されています。
この継続性が示すもの:
– 宮崎監督の理想的な人間と動物の関係像
– 創作における一貫したテーマ意識
– ヤックルというキャラクターの普遍性
– 長年にわたる構想の発展
ヤックルの物語における象徴的意味
自然と人間の橋渡し役
いずれにせよ、こだま、犬神、乙事主、タタリ神とあまたのもののけたちのなかで、ほぼ唯一、アシタカ側に居続けてくれたヤックルもまた、もののけに近い存在といえるでしょう。
自然(もののけ)とともに生きることはできるのかどうか、その答えはすでにヤックルが出していた、とも言えそうです。
ヤックルの象徴的役割
– 人間ともののけの中間的存在
– 共存可能性の具現化
– 自然への敬意と理解の象徴
– 対立構造を超える存在
物語の癒しの存在
殺伐とした物語のなかでヤックルは、視聴者にとってはオアシス的な役割を果たしてくれました。人間と自然(もののけ)の対立構造のなか、ヤックルだけはそこから独立した形でアシタカとともにおり、「人間」ではなくアシタカ個人との信頼関係があります。
この癒しの効果:
– 緊張感ある物語の息抜き
– 純粋な愛情の表現
– 希望と信頼の象徴
– 観客の感情的支え
ヤックルが表現する宮崎駿の自然観
失われた理想への憧憬
「絶滅したアカシシ」という設定には、現代では失われてしまった人間と自然の理想的な関係への監督の憧憬が込められています。ヤックルは、かつて存在していたかもしれない美しい共存関係の象徴なのです。
宮崎監督が描きたかった関係性
– 支配ではなく共生
– 利用ではなく信頼
– 恐怖ではなく理解
– 破壊ではなく調和
エミシ文化の理想化
同じ土地に住むエミシ独特の文化と密接に関わっているようだという設定は、古代日本の自然と調和した生活様式への監督の理想を表現しています。
エミシ文化におけるヤックル:
– 自然との共生の象徴
– 古代の知恵の体現
– 文明批判のメッセージ
– 失われた価値観の復活
まとめ
もののけ姫のヤックルは、単なる可愛いマスコットキャラクターを超えた深い意味を持つ存在です。言葉は話せなくても、ヤックルにとってもアシタカは、唯一無二の大切な主人であることがひしひしと伝わってくる、魅力的なキャラクターとして、多くのファンに愛され続けています。
「絶滅したアカシシ」という設定を通じて、宮崎駿監督は現代では失われた人間と自然の理想的な関係を表現し、ヤックルとアシタカの絆を通じて真の共存の可能性を示しました。複数の実在動物の特徴を組み合わせて生み出されたヤックルは、物語の癒しの存在でありながら、同時に深いメッセージを担う重要なキャラクターなのです。
この先もアシタカはずっとヤックルと共にサンに会いに来るのだろうな……とうかがい知れるラストで、とても印象に残っています。ヤックルの物語は終わることなく、永遠にアシタカと共に続いていくのです。