もののけ姫を初めて観た人なら誰でも印象に残る、赤い帽子と赤いちゃんちゃんを着た怪しいおじさん。この記事では、そんな謎めいた「赤いおじさん」の正体を初心者の方でも理解できるよう、基本的な情報から深い考察まで徹底的に解説していきます。
もののけ姫の赤いおじさんの基本プロフィール
名前とキャラクター設定
おじさんが自分で名乗るシーンはありませんが、エボシが「ジコ坊か」と声をかけたことから、名前が分かります。この赤いおじさんの正式な名前はジコ坊です。
項目 | 詳細 |
---|---|
名前 | ジコ坊 |
外見の特徴 | 赤い頭巾、赤いちゃんちゃん、一本歯の高下駄 |
体型 | ずんぐりむっくりで小柄 |
声優 | 小林薫 |
初登場シーン | 街道での石火矢衆との戦闘後 |
外見の特徴と印象
一見すると、赤い鼻した酔っ払いのおじさんテキな印象を受けますよね。しかし、この見た目の印象とは裏腹に、ジコ坊は物語において極めて重要な役割を果たすキャラクターです。
彼の特徴的な服装は単なる見た目の個性ではありません。赤い唐傘を持って戦う謎の集団である唐傘連の頭領としての身分を表しており、赤い色は彼らの組織のシンボルカラーでもあります。
ジコ坊の正体と組織での立場
唐傘連の頭領としての顔
ジコ坊の正体は唐傘連(からかされん)の頭領であり、師匠連(ししょうれん)の一員です。
ここで初心者の方に分かりやすく説明すると、もののけ姫の世界には以下のような権力構造があります:
- 帝(天皇) – 最高権力者
- 師匠連 – 帝直属の組織
- 唐傘連 – 師匠連の下部組織(ジコ坊が頭領)
帝(天皇)>「師匠連」>「唐傘連」という構造になっており、つまり、唐傘連のリーダーであるジコ坊は、帝の手下の、手下、というわけです。現場責任者みたいな立場ですね。
複数の組織を指揮する能力
ジコ坊の凄さは、単に唐傘連の頭領というだけでなく、複数の組織を統率している点にあります:
- 唐傘連 – 赤い傘を持つ武装集団
- 石火矢衆 – 火器を使う傭兵部隊
- ジバシリ – 山に詳しい狩人たち
また唐傘連の頭領でもあり、石火矢衆の頭でもあり、狩人(ジバシリ)などをも動かせる力を持った存在。これらの異なる特性を持つ組織を統率し、作戦を指揮する能力は、単なる「赤いおじさん」の域を大きく超えています。
ジコ坊の真の目的とは
シシ神の首を狙う理由
ジコ坊は、シシ神の首を手に入れることを目的に、タタラ場に来ていました。しかし、なぜシシ神の首が必要なのでしょうか?
不老不死の伝説
物語の設定では、シシ神の首には不老不死の力があると信じられていました。帝はかつての権力を取り戻すため、人知を超えた神の力を手に入れたかったのかもしれません。
ジコ坊個人の信念
興味深いことに、ジコ坊は個人的には、シシ神の首に不老不死の力があるとは、信じていなさそうなところ。
これを裏付けるのが、エボシとの会話での以下のセリフです:
「やんごとなき方々や師匠連の考えはわしには分からん。分から方がいい。」
このセリフから、ジコ坊は単なる命令実行者として行動しており、個人的な野望ではなく職務として行動していることが分かります。
物語におけるジコ坊の重要な役割
物語を動かすキーパーソン
ジコ坊って地味ですが、じつは『もののけ姫』の物語を動かしている、重要なキャラクターのひとりなんです。
具体的には以下のような重要な役割を果たしています:
- アシタカの案内役 – シシ神の森へ向かうきっかけを与える
- 対立の激化 – エボシと接触し、森と人の戦いを激化させる
- 情報提供者 – タタラ場の位置情報などを侍たちに提供
- 最終決戦の引き金 – シシ神の首を奪うことで物語のクライマックスを作る
アシタカとの関係性
ジコ坊とアシタカの関係は、物語の中でも特に興味深い部分です。エボシ御前に対して「アカシシに乗った青年が来なかったか?」と尋ねており、ジコ坊個人としては打算無しでアシタカを気に掛けていたようにも見える。
雑炊シーンの意味
物語序盤の野宿シーンで、ジコ坊がアシタカに振る舞った雑炊は、単なる親切以上の意味を持っています。アシタカはエミシ一族の後に長となる高貴な存在であり、一方ジコ坊は力はありつつも「師匠連」の一員にすぎず、お椀に身分の差が出ていましたね。
ジコ坊の能力と特技
驚異的な身体能力
見た目のふくよかな体型からは想像できませんが、ジコ坊は驚異的な身体能力を持っています。
ずんぐりむっくりの小柄な体型とは裏腹に一本歯の高下駄を履きながらも山々を軽々と駆け巡る身体能力の高さにも驚かされます。
優れた統率力と判断力
唐傘連や石火矢衆たちに的確に素早く指示を出したり、エボシを利用して、シシガミの首を狙ったりなど、ジコ坊はとても頭が切れます。
特に最終決戦においては、朝日が昇れば「夜の神の姿」であるデイダラボッチは消えると踏んだジコ坊は諦めることなく、何とか無事だった部下のうち唐傘連2人と石火矢衆1人を即席の担ぎ手にして、自らも首桶を乗せた輿を担ぎ必死にシシ神の森を抜ける。
この冷静な判断力と実行力は、まさにプロフェッショナルとしての資質を示しています。
声優・小林薫の演技について
小林薫という俳優
ジコ坊の声を担当した小林薫。彼は「ナニワ金融道」シリーズや、「Dr.コトー診療所」シリーズなどの人気作品に多数出演しています。2009年から主演を務めた「深夜食堂」は人気シリーズとなりました。
役者以外にも、声優としてアニメ映画『もののけ姫』や『ゲド戦記』に出演し、ドキュメンタリー番組『美の巨人たち』(テレビ東京)ではナレーションも務めている。
演技の特徴と評価
「もののけ姫」でジコ坊役として出演していた小林薫さんですが、声優として出演している作品はごくわずかで、ほとんどがドラマや映画などで俳優として出演しています。
それでも、ジコ坊の複雑な人物像を見事に表現しており、もののけ姫に登場するジコ坊の声優である小林薫さんは、声優ではなく俳優を本業としているベテランの方ですが、声優としても素晴らしいな演技を見せています。
ジコ坊の印象的なセリフ分析
人間の本質を表すセリフ
ジコ坊の数あるセリフの中でも、特に印象的なのが以下の言葉です:
「人前で砂金など見せるとな、まことに人の心のすさむこと麻のごとしだ」
このセリフは、ジコ坊の生き方を表しているとも言えます。人間の欲深さを理解しつつも、それを客観視できる冷静さを持っているのです。
最後の名セリフ
物語の終盤、ジコ坊はアシタカに向けて印象深いセリフを残します:
「まいった。まいった。正直者には勝てん」
ジコ坊が選ばなかった道を突き進み最後まで歩み切ったアシタカに対する賞賛と自分自身への自虐が含まれているセリフとなっています。
キャラクター名の由来と制作秘話
名前の由来
「ジコボウ」という名前の由来は、宮崎駿の別荘がある長野県は諏訪辺りで言うキノコの一種、ハナイグチの方言らしい。『もののけ姫はこうして生まれた』では「美味しいキノコ」と紹介されている。
この由来からも分かるように、宮崎駿監督は身近な自然から着想を得てキャラクター名を決めており、『もののけ姫』に登場する人物は、宮崎監督の別荘がある信州の地名が由来しているものが多いそうです。
デザインコンセプト
ジコ坊の「赤いおじさん」というビジュアルデザインは、観客に強烈な印象を与える効果を狙ったものです。一見親しみやすそうな外見でありながら、実は物語の重要な黒幕という二面性を表現しています。
現代における意味と教訓
中間管理職としてのジコ坊
会社の中でいうと中間管理職のような、腹黒くもうまく上と下の間で立ち回れる、出来る奴なのかもしれません。。。
現代社会においても、ジコ坊のような立場の人物は存在します。上司からの命令を忠実に実行しつつも、現場での人間関係を大切にし、時には個人的な感情と職務の板挟みに苦しむ中間管理職の姿が、ジコ坊に重ね合わせて描かれています。
善悪を超えた複雑性
ジコ坊は単純な悪役ではありません。物語の上では主人公と敵対する悪役と呼べる存在だが、そう単純な立場でもない人物。
この複雑性こそが、もののけ姫という作品の深さを表しており、現実世界の人間関係や社会構造の複雑さを反映しています。
初心者が押さえるべき重要ポイント
物語理解のための5つのキーポイント
- ジコ坊は黒幕的存在 – 物語を動かす重要なキャラクター
- 複数組織の統率者 – 唐傘連、石火矢衆、ジバシリを指揮
- 帝の命令で行動 – 個人的野望ではなく職務として行動
- アシタカに好意的 – 敵対関係でも個人的には親切
- 現実主義者 – 理想よりも実利を重視する価値観
見る際の注目ポイント
初心者の方がもののけ姫を観る際は、以下の点に注目すると、ジコ坊というキャラクターの深さがより理解できます:
- アシタカとの会話シーンでの表情変化
- 部下に指示を出すときの的確さ
- エボシとの駆け引きの巧みさ
- 最終決戦での冷静な判断力
- 物語終盤での潔い態度
まとめ:赤いおじさんの真の魅力
もののけ姫の「赤いおじさん」ことジコ坊は、一見すると脇役的な存在に見えますが、実際は物語全体を動かす重要なキーパーソンです。その複雑な立場と人間性こそが、もののけ姫という作品の深さを表していると言えるでしょう。
彼は善悪の単純な区分では語れない現実的な人物として描かれており、現代社会で生きる私たちにも通じる普遍的な魅力を持っています。初心者の方でも、この記事で紹介した基本知識を押さえておけば、ジコ坊というキャラクターの奥深さを十分に楽しめるはずです。
次回もののけ姫を観る際は、ぜひ「赤いおじさん」ジコ坊の行動と表情に注目してみてください。きっと新たな発見があり、物語への理解がより深まることでしょう。