「もののけ姫」を見ていて、あの白くて小さくて可愛い生き物は一体何なんだろう?とずっと気になっていませんか?特にカタカタと首を振る独特の動きや、森で大量に現れるシーンは印象的ですよね。
実は、あの「小さいやつ」には深い意味と驚くべき秘密が隠されているんです。この記事では、もののけ姫に登場する謎めいた小さな生き物の正体を徹底的に解き明かしていきます。
もののけ姫の小さいやつの正体は「こだま」
『もののけ姫』に登場する白くて小さな生き物の正体は「こだま」です。漢字で表記すると「木霊」となり、文字通り木に宿っている精霊というのが公式設定となっています。
公式本「ロマンアルバム もののけ姫(徳間書店)」によると、こだまは「一種の精霊のようなもので、豊かな森に住む。淡い緑色をした半透明の体を持つ。森の中で迷ったアシタカ達を導くなど、特に人間に敵意を持っているわけでは無いようである」と説明されています。
こだまの特徴と外見
こだまの見た目には以下のような特徴があります:
– 真っ白で半透明の小さな体
– 顔には目と口に見える3つの黒い穴
– 手足は短く、子どものような体型
– 感情が読み取れない無表情
白く小さな体とただ黒い穴が開いているだけのような顔は、どこか可愛らしく、同時に不気味な印象も与えます。この独特のデザインこそが、こだまの最大の特徴と言えるでしょう。
こだまが生まれた経緯と宮崎駿監督の想い
森の気配をビジュアル化する試み
森のなかには、木がたくさんあるという以上の「何か」を感じること、ああいう精霊のような不思議な存在がいる、といった感覚は、誰もが持っているだろうと、宮崎監督は考えていました。
その気配の具象化について悩んでいた際に、森のなかにいる色々なものが見える、という人に、その存在を絵にしてもらったら、こだまができていったという制作秘話があります。
「役に立たない」自然の象徴
自然と人間の関係性を描いた『もののけ姫』のなかで、自然の象徴の一つとして存在するこだま。自然が人間の役に立つから残そう、優しくしよう、といった話ではなく、自然そのものは人間にとって役に立たなくても存在します。
宮崎駿監督は次のように語っています:
自然はある意味で役に立たないものだらけですよね。だから環境の問題というのは、人間の役に立つから残そうというんじゃなくて、役に立たないから残そうというふうに僕らの考え方を転換しないと解決しないと思うんです
こだまのカタカタ音の謎
なぜ首を振るのか?3つの有力説
こだまといえば、あの独特の「カタカタ」「カラカラ」という音を立てながら首を振る動作が印象的ですが、この音の正体については複数の説があります。
説 | 内容 |
---|---|
呼吸音説 | 樹木の精霊であるこだまは、植物同様に呼吸をしており、首と頭の間にある空洞から呼吸をしており、その時にカタカタと音がしている |
話し声説 | 人間には理解できない言葉で、こだまたちの間で何か言葉を話している |
習性・合図説 | 周りに自分たちの存在を知らしめようとしていた(最も有力とされる説) |
デイダラボッチ出現時の行動
劇中では、デイダラボッチ(シシ神)の出没で、こだまたちは一斉にカタカタと大きな音を出しました。これによってシシ神に何か伝えようとしていたと考えられています。
また、ケガをしたアシタカが運ばれているシーンでも大きな音を出していたので、森に異変が起こると感じた時に首を振って音を鳴らし、森全体に合図を送っているのではないでしょうか。
屋久島に実在する?こだまの都市伝説
もののけ姫の舞台・屋久島との関係
『もののけ姫』の舞台は鹿児島県の屋久島であると、スタジオジブリは公言しています。この屋久島には「木霊の森(こだまのもり)」という森が存在しており、これがコダマの由来ではないかと考えられています。
写真に写る木霊の噂
驚くべきことに、屋久島には「木霊の森」という森があり、その森で写真を撮ると、まさに『もののけ姫』のこだまのような白くて小さい「なにか」がたくさん映るという都市伝説があります。
2006年頃からネットで広まった「屋久島の木霊」と呼ばれる写真では、可愛らしい目が二つ付いた『もののけ姫』の木霊によく似た姿が撮影されており、話題となりました。
オーブ現象の科学的説明
しかし、木や草についている水滴が光を反射し、その光がフラッシュを炊いたレンズを通じてカメラに表示をされているという説があります。屋久島は九州で一番高い山になるため雨が降りやすく、年間降水量は東京の約3倍に相当します。
高温多湿の場所では水の粒子が光に反射して、こういう白い粒が写る現象が起きるとも言われているそうなんです。ただ、この白い粒をよく見ると、それぞれに黒い点が3つあり、まるで目と鼻のようなのです。
こだまとトトロの驚くべき関係
宮崎駿監督公認の設定
実は、こだまには驚くべき裏設定があります。「コダマは将来トトロになる」これはしばしば噂される裏設定ですが、宮崎駿監督公認の設定です。
宮崎駿監督は『「もののけ姫」はこうして生まれた』のインタビューで次のように語っています:
チビで一匹でいいから、コダマがノコノコ歩いてるやつ、入れてくれって。それがトトロに変化したって(笑)耳が生えてたっていうの、どうですかね。そうすると首尾一貫するんだけど
時代設定から見る進化の可能性
もののけ姫の時代は室町後期(1400年代)で、トトロの時代は1950年代とされています。『もののけ姫』で最後に登場した小さなコダマはトトロの時代には500歳~600歳程度と考えられます。
トトロの年齢は1302歳。中トトロは679歳で、小トトロでも109歳です。『もののけ姫』の舞台となったのは中世。現代からだいたい700~500年前のことです。こだまが、外見の似ている小トトロになったとしたら意外ですが、うなずける話ですね。
劇中でのこだまの重要な役割
森の豊かさの指標
劇中でアシタカは、こだまを見て「すきにさせておけば悪さはしない。森が豊かなしるしだ」と語っています。これは、こだまが森の健全性を表すバロメーターのような存在であることを示しています。
森の命をビジュアル化
森の生命=こだまこれを宮崎駿監督はヴィジュアル化するためにこだまが必要だったみたいですね。物語の終盤、破壊されていく森の中で、こだまたちの死体が大量に降ってくるシーンがあります。木々の精霊である彼らは、木が死んでしまうと生きていくことができないのでしょう。
希望の象徴としての最後のこだま
荒廃しきった森に新芽が芽吹き、その中に一匹だけこだまがいる、というシーンで物語は終わります。こだまが大量に死んでしまうシーンは、森が破壊されてしまったことの暗喩でしたが、ここで新たにこだまがいるということは、ここから森が再生していくということを表していると考えられます。
こだまに隠された日本古来の木霊信仰
古事記にまで遡る歴史
木霊に関する記録は、かなり古いものにも確認できます。『古事記』では木の神として「ククノチノカミ」の記述がありますが、これは木霊と同種の存在と考えられています。また平安時代の辞書『和名類聚抄』には「古多万(コダマ)」が木の神の和名として記されています。
樹木崇拝としての木霊
木霊(こだま)は、100年以上の年輪を重ねた樹木に宿る精霊といわれています。また精霊が宿った樹木を木霊とも呼びます。いわゆる樹木崇拝の一種であり、切ったり焼いたりすれば不幸が降りかかり、供物を捧げるなどすれば人々に恩恵を与えると信じられています。
沖縄のきじむなーとの共通点
屋久島の森だけでなく、その周辺でも樹木や森の精霊の伝説は言い伝えられています。特に有名なのが沖縄の「きじむなー(きーぬしー)」です。小さな体が特徴的な精霊で、古い樹木に宿って森を守り、人間たちと古くから共生していると言われています。こだまと少し似ていますね。
SNSやネットでの話題
屋久島訪問者の体験談
屋久島、白谷雲水峡⛰4時間の山登りをしました☺️もののけ姫のモデルとなった場所で、宮崎駿監督は作り手に必ず現場を見るように言ったそうです✨それぐらい実物の方が緑が濃いこの大杉は寿命をとっくに超えているのに根を下ろして頑張っているそうです(屋久島の環境は過酷)コダマ見えましたか?
オーブ撮影成功者の証言
屋久島にはオーブ(木霊)がいる・・と私はこの時初めて信じられたのでした。私が会った時間は7時7分!!Wラッキーセブン☆でした
テレビ番組での検証
この白い粒をよく見ると、それぞれに黒い点が3つあり、まるで目と鼻のようなのです。そう、まるで、『もののけ姫』に出てきた”こだま”のような顔が大量に写っているんです!
もののけ姫ファンの考察
チビで一匹でいいから、コダマがのこのこ歩いてるやつ入れてくれって。それがトトロに変化したって(笑)動植物を描くのを得意としたアニメーターの故 二木真希子さんが提案されたそうです。この物語はやりきれないので、一匹のコダマのシーンによって希望を持たせたいとの思いだったのだとか
これらの投稿からは、多くの人がこだまの存在に魅力を感じ、実際に屋久島を訪れて「木霊探し」を楽しんでいる様子が伺えます。科学的な説明があっても、ロマンを求める気持ちは変わらないようですね。
初期設定との違い
実は、現在私たちが知っているこだまの姿は、初期の設定から大きく変わっています。「もののけ姫」初期のイメージでは、まるでお面をつけたような姿で手足も長く、猿にもよく似た外見でした。これで正体不明ともなれば、やっぱり不気味ですよね。
現在の可愛らしい姿になったのは、”森に何かいるのが見える”というスタッフによってキャラクターデザインが考えられた結果なのです。
まとめ:こだまが表現する深いメッセージ
もののけ姫の「小さいやつ」こと「こだま」は、単なる可愛いマスコットキャラクターではありません。
- 森に宿る精霊「木霊」として、自然の生命力を象徴
- 「役に立たない」けれど大切な自然の価値を表現
- カタカタ音は森の仲間たちとのコミュニケーション手段
- 森の豊かさのバロメーター
- 日本古来の樹木崇拝の現代的表現
- やがてトトロに進化するという夢のある設定
- 屋久島に実在するとされる神秘的な存在
宮崎駿監督は、このちいさな白い精霊たちを通じて、「役に立つ立たないというものの考え方をどっかで捨てないと、つまり、役に立たないものも含めて、全部が自然なんだという感覚にならないとダメだと思いますね」という深いメッセージを私たちに伝えているのです。
「このラストシーンは、ここから何千、何万もの歳月をかけて森が再生していくことを象徴している」と宮崎駿監督自身も語っています。森を破壊すれば、何千、何万もの歳月をかけてしか森は再生していけない。厳しい現実を、私たちの胸に刻まねばならないのです。
次回「もののけ姫」を見る時は、こだまたちの小さな存在に込められた大きな意味を感じながら、彼らの姿を見守ってみてください。きっと、これまでとは違った深い感動を味わえるはずです。