もののけ姫のパンフレットに隠された貴重な情報を知りたいあなたへ
映画「もののけ姫」を深く愛するファンなら誰もが疑問に思うことがある。あの感動的な作品の裏側にはどんな制作秘話があるのか、監督や制作陣はどのような想いで作品に取り組んだのか。そんな疑問を解決してくれるのが、劇場公開時に販売されたパンフレットと、その後に発売されたロマンアルバムなのだ。これらの貴重な資料には、普通に映画を観ているだけでは知ることができない、深い制作秘話と隠された設定が記録されている。
もののけ姫パンフレットに記録された衝撃の制作秘話
アシタカ旅立ちの音楽に込められた深い想い
本編前半でアシタカがタタリ神の痣を負い、村を旅立つことになるシーン。その旅立ちの音楽は、当然、アシタカの複雑な心境を表現しなければいけない。宮崎駿監督は久石譲に、そう依頼したそうです。しかし、この時点で興味深い議論が生まれた。
鈴木プロデューサーは悩んだそうです。「それでいいのだろうか。たとえそうだったとしても、ぼくは、主人公の旅立ちはいつだって、勇壮さが必要だと思った。」この悩みを打ち明けると、久石譲は、二曲を用意したそうです。
そして運命の選択の瞬間が訪れる。「そしてふたつの曲が出来あがった。いずれ劣らぬ名曲だった。さて、どっちがいいだろうか。どちらにするか決めるとき、久石譲さんがぼくに目で合図を送った。宮さんは、迷うことなく勇壮さを選んだ。」
宮崎駿監督の引退宣言の真相
1997年3月10日、赤坂プリンスホテルで開催された製作発表記者会見は、後に語り継がれることになる衝撃的な出来事の舞台となった。集まった取材陣の数は過去最大規模の700人!当時、宮崎監督は追い込み作業で猛烈に忙しかったのですが、映画を宣伝するためには欠席できません。
そんな中で事件は起こる。質疑応答の場面で一人の記者から「次回作の予定は?」と聞かれ大激怒!目の前の作業で頭がいっぱいなのに、次の作品のことなんて考えられるか!とばかりにブチ切れて、「これが最後の監督作品ですッ!」と思わず言ってしまったのですよ。
それを聞いた各メディアは「宮崎駿、引退宣言!」「最後の監督作品!」などと大々的に報じました。このニュースが話題となり、集客効果に絶大な影響を及ぼしたことは疑う余地がないでしょう(当時の日本記録を更新した)。
アフレコ現場で起こった壮絶なやり取り
パンフレットやロマンアルバムには、アフレコ現場での詳細な記録も残されている。特に松田洋治演じるアシタカのアフレコは壮絶を極めた。メイキングDVD『「もののけ姫」はこうして生まれた。』では、宮崎駿監督によるキャストへの指導や指示が印象的です。松田さんも、アシタカが剣を交わしていたエボシ御前(田中裕子)とサン(石田ゆり子)を当身(あてみ)で気絶させるシーンの「誰か手を貸してくれ」、ヒイ様(森光子)への返事「はい」、タタラ場の女たちへの「そうか」で宮崎監督から熱のこもった説明を受けています。
松田 あそこまでいくと、わからないです。僕の「誰か手を貸してくれ」と、裕子さんの「一番。放て!」は、演者側としては「もう、わからん」状態。
現場の厳しさは想像を絶するものだった。松田 途中でやめたと思いますよ。別日にしようって。そしてそもそも、僕だけでもレコーディングは10回以上やっていると思います。普通は数日ですべてを録ってしまうものです。
パンフレットが明かす隠された設定の数々
エボシの運命を変えた宮崎監督の想い
モロとの戦いでエボシは片腕をもぎ取られてしまいますが、映画の構想段階で、彼女はこの時死ぬことになっていました。しかし宮崎駿が彼女を気に入っていたため、死なないように設定変更。彼女は、それだけ宮崎駿の思いれが強いキャラクターだったと言えます。
タイトル変更の危機
『もののけ姫』の映像完成間近に、宮崎駿が「アシタカ聶記<せっき>」というタイトルに変更しようと発言したのです。しかし『もののけ姫』というタイトルを気に入っていた当時の鈴木敏夫プロデューサーが、彼の意見を無視して、テレビCMなどを作成。そしてそれに気づいた宮崎駿も、見てみぬフリをしたのだとか。
タタラ場に子供がいない理由
また、タタラ場には夫婦もいるのに、なぜか子どもの姿がまったくありません。この理由については、宮崎駿監督によるとタタラ場はまだ”戦場に近い場所であり”、子どもを「わざと切り離した」とのこと。
ロマンアルバムに記録された豊富な制作資料
ロマンアルバムの充実した内容
映画の魅力をさまざまな角度から紹介したムック。フィルム・ストーリーのほか、宮崎駿監督をはじめ、宣伝コピー担当の糸井重里、アシタカ役の松田洋治、サン役の石田ゆり子、音楽の久石譲、主題歌の米良美一らのインタビュー 男鹿和雄、山本二三ら五人の美術監督、CGと撮影スタッフの仕事などが収録されている。
ロマンアルバムは単なる映画の紹介本ではない。制作に関わったすべてのスタッフの想いと技術が詰め込まれた、まさに制作の集大成と呼べる内容となっている。
掲載内容 | 詳細 |
---|---|
フィルム・ストーリー | 映画の全場面を詳細に解説 |
キャストインタビュー | 松田洋治、石田ゆり子、米良美一など |
スタッフインタビュー | 宮崎駿、久石譲、糸井重里など |
美術設定資料 | 男鹿和雄ら5人の美術監督の仕事 |
技術解説 | CGと撮影スタッフの座談会 |
パンフレットに記された重要な設定
パンフレットには、映画本編だけでは分からない重要な設定も記録されている。『もののけ姫』の映画パンフレット12頁に監督の「アシタカと結婚すると思い定めている娘(許嫁同然ということの様子)」という発言が記載されており、宮崎駿監督自身も2001年に発売されたDVD『「もののけ姫」はこうして生まれた』の中で「一族が選んだ許嫁」と語っている。
チャゲ&飛鳥との意外な関係から生まれた転機
「On Your Mark」が与えた影響
いざ仕切り直しになったものの、「どんなストーリーにすればいいんだろう?」と悩みまくる宮崎監督。そんな時、アーティストのチャゲ&飛鳥から「新曲のPVを作って欲しい」との依頼が来ました。それが『On Your Mark』です。
実はこの時、宮崎監督はチャゲアスのことを全く知りませんでした。しかし、当時『もののけ姫』の企画作りでストレスがたまっていた宮崎さんは”気分転換”として引き受けることに。この『On Your Mark』の制作をきっかけとして、「『もののけ姫』の方向性が見えた」と後に宮崎監督は語っているそうです。
製作現場の壮絶なドキュメンタリー
「もののけ姫はこうして生まれた。」の価値
最初はただ1人の頭の中にだけ存在していたキャラクターやストーリーが、多くの人の「化学変化」を経て具現化し、さまざまな魅力を内包した1本の作品として完成した後、やがて多くの人々の心を国境すら越えてとらえてしまう。その過程が、ここまで詳細なドキュメンタリーとして見られるということ自体ひじょうに画期的なことだといえる。
お客様はこのドキュメンタリー作品について、内容について高く評価しています。内容は盛りだくさんで、アニメーターさんたちの仕事内容やアフレコシーンが覗けると好評です。作品の背景や制作過程、現場の進行具合などリアルな裏側を知ることができると感じています。
宮崎駿が真に伝えたかったメッセージ
子供たちへの真摯な想い
パンフレットやロマンアルバムに記録されたインタビューから、宮崎監督の真の想いが見えてくる。(今まで子供たちに)エールを送るための映画を作ってきたんです。しかし、実際の子供たちが出会っている現実は、そんなエールだけでは済まされない。多くの問題を子供たちは全部知っているんですね、本能的に。
人類がやっていることは本当に正しいのか……という根源的な疑問に真正面から答えないと、元気に希望を持って生きろと言いながら、本当は子供たちの一番聞きたいことに答えていないことになる。エンターテインメントの道を踏み外すけど、この映画を作らないと私たちはその先仕事をすることはできないだろうと思いつめたんです。
「生きる」ことの深い意味
また舞台挨拶にて、彼は「損得ではなくて、生きるということ自体にどういう意味があるのかってことを問わなければならない時代がきた。」と語っています。
SNSや専門家の評価
『もののけ姫』のパンフレットには、映画だけでは知り得ない貴重な情報が満載。特に宮崎駿監督の長文インタビューは必読。
引用:某ジブリファンサイト
ロマンアルバムの美術設定資料は圧巻。男鹿和雄さんの背景美術の制作過程が詳細に記録されている。
引用:アニメ業界関係者ブログ
制作日記の部分が特に興味深い。3年間の制作期間中の苦悩と喜びが生々しく記録されている。
引用:映画評論家Twitter
セルアニメーション最後の傑作として記録された技術
アナログからデジタルへの転換期
『もののけ姫』製作時は、ちょうどアニメーションの製作がアナログからデジタルへと本格的に移行し始めていた時期にあたり、本作では一部でCG技術を導入しつつ、透明なシートを使ってセル画に直接色をペイントしていくというセルアニメーションの技法を使用した最後のジブリアニメとなった。
この技術的な転換期の記録も、パンフレットやロマンアルバムの重要な価値の一つだ。このセルを使った手法は、長らく世界のアニメ製作の主流であり、日本でもこの製作環境のもとで様々な演出技法が発明された歴史の積み重ねがある。
コダマとトトロの関係性についての設定
宮崎監督が語った隠された繋がり
監督とジブリスタッフの話し合いの中で、コダマは数百年〜数千年単位の長期に渡って森の中で成長して、最終的にはトトロになるとされており、『となりのトトロ』に登場した大トトロも、コダマが本作『もののけ姫』の室町時代から『となりのトトロ』の現代(昭和30年代)まで、500年程度経過した姿とされる。
この設定は、ジブリ作品の世界観を繋げる重要な情報として、多くのファンに愛され続けている。
興行収入記録達成の裏側
「百年に一本」の奇跡
日本歴代興行収入第1位の大当たりに、製作総指揮の徳間康快は仲のよい岡田茂東映会長から「百年に一度の奇跡だぞ」と言われた。徳間は「何本も当てて世界のアニメプロデューサーになる」と豪語した。
しかし、この記録も永続的ではなかった。『もののけ姫』は日本で公開された洋画も含めても歴代一位で、徳間は岡田の受け売りで「百年に一本」を周りに吹いた。20世紀はあと数年しかなく、このまま日本での20世紀最大のヒットの称号を手にするかに思えたが、翌年『タイタニック』によって抜かれた。
複雑な対立構造に込められた現代への問題提起
解決のない現実を描く意味
“森を守ろう”と一言でも言った途端に、全部手垢にまみれたものになってしまう。それは分かり切っていることだから。そういうことで作ってるんじゃないんだと。なんか偉いことを言った少年が見事に達成しました、みたいな話じゃ全然なくて。ようやくこれで生きることができる、これからね、タタラ場のこととサンの間に入って、切り刻まれながら生きるしかない。結局、何も解決していない。でも、主人公はここで生きていくことを決めたんだ、と。……生きるって、そういうことですよね。
この言葉は、もののけ姫が単純な勧善懲悪の物語ではなく、現実の複雑さを描いた作品であることを示している。
現代でも色褪せない作品の価値
時代を超越したメッセージ
新型コロナウイルスによって映画興行にも多大な影響が出るなか、全国の300以上の映画館が、スタジオジブリ過去作『風の谷のナウシカ』(1984年)、『もののけ姫』(1997年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)、『ゲド戦記』(2006年)を再上映中だ。
1997年の公開から20年以上が経過した今でも、作品の価値は全く色褪せていない。むしろ、環境問題や文明と自然の対立といったテーマは、現代においてより深刻さを増している。
まとめ:パンフレットに込められた貴重な記録
もののけ姫のパンフレットとロマンアルバムは、単なる映画の宣伝物ではない。それは宮崎駿監督と制作スタッフの魂の記録であり、日本のアニメーション史における重要な証言集なのだ。
パンフレットに記録された主な価値:
- 制作秘話の詳細な記録 – アフレコ現場の苦労、音楽制作の裏話など
- 隠された設定の公開 – エボシの運命変更、タイトル変更危機など
- 技術的記録 – セルアニメーション最後の作品としての価値
- 哲学的メッセージ – 宮崎監督の深い想いと現代への問題提起
- 制作関係者の証言 – 声優、音楽家、美術スタッフの貴重な証言
これらの資料を読むことで、映画「もののけ姫」はより深い理解と新たな感動を与えてくれる。作品を愛するファンなら、ぜひ手に入れて読み込んでほしい。そこには、映画という表現の枠を超えた、人類への深いメッセージが込められているのだから。
パンフレットとロマンアルバムは、もののけ姫という作品を真に理解するための必読資料と言えるだろう。それらの記録によって、私たちは宮崎駿監督が込めた真の想いと、制作に関わったすべてのスタッフの情熱を知ることができるのだ。