もののけ姫の登場人物やキャラクターの名前について詳しく知りたい!という方は多いのではないでしょうか。1997年の公開から長年愛され続けている宮崎駿監督の傑作『もののけ姫』には、実に多彩で魅力的な登場人物が数多く存在します。しかし、それぞれのキャラクターの名前の由来や背景設定、年齢などについて体系的にまとめられた情報は意外と少ないものです。
この記事を読めば、もののけ姫の全登場人物・キャラクターの名前とその深い背景について、制作秘話や宮崎駿監督の意図まで含めて完全に理解することができます。
もののけ姫の主要登場人物・キャラクターの名前一覧
まず結論として、もののけ姫に登場するキャラクターには大きく分けて人間の世界と神々の世界に分けることができ、それぞれの立場で深い愛情や憎悪、喜びそして目的があります。
【人間界の主要キャラクター】
- アシタカ(主人公・エミシの一族の青年)
- サン(もののけ姫・山犬に育てられた少女)
- エボシ御前(タタラ場の女頭領)
- ジコ坊(謎の僧侶)
- カヤ(アシタカの許嫁)
- ゴンザ(エボシの右腕的存在)
- トキ(タタラ場の女性)
- 甲六(タタラ場の男性)
【神々・森の世界のキャラクター】
- シシ神・ディダラボッチ(生と死を司る森の神)
- モロの君(犬神・サンの育ての親)
- 乙事主(イノシシ神の長老)
- 猩々(森の賢者と呼ばれる猿神)
- コダマ(森の精霊)
- タタリ神・ナゴの守(呪いとなった元イノシシ神)
なぜこれらの名前が選ばれたのか?宮崎駿監督の意図
宮崎監督は製作の最中まで物語の結末部分を思案し、作品世界の複数の対立する勢力の図を描きながら、設定レベルの地点に立ち戻りつつ考え直していたという制作秘話があります。これは登場人物の名前やキャラクター設定についても同様で、監督の深い思索の結果生まれたものなのです。
室町時代という時代設定への徹底したこだわり
室町時代は1336年~1573年までの257年間をさし、宮崎駿監督はこの時代を「混乱と流動が日常の世界であった」と表現しています。室町時代になると、得なほう、都合のいい方につこうということで動くようになる。それに、女たちが自由でかっこいいという監督の言葉からも、キャラクター設定における時代考証の深さが伺えます。
人間界の登場人物・キャラクター名前詳細解説
アシタカ(年齢:17歳)
エミシの村で、やがて族長となるさだめを持っていた少年。村の巫女・ヒイ様からは「アシタカヒコ」と呼ばれています。名前の「アシタカ」は、古事記に登場する神「味耜高彦根神(アヂスキタカヒコネ)」に由来するとされています。
サン(年齢:15歳)
犬神に育てられた15歳の少女で、サンのモデルは不明ですが、一部ではアシタカのモデルとなったアヂスキタカヒコネの妻・アメノミカジヒメではないかともいわれています。「サン」という名前は1980年に宮崎駿監督が構想していたアニメ企画案に登場するヒロイン「三の姫」に由来しているとされています。
キャラクター名 | 年齢 | 所属・立場 | 名前の由来・特徴 |
---|---|---|---|
アシタカ | 17歳 | エミシの一族 | 古事記の神「味耜高彦根神」から |
サン | 15歳 | 山犬に育てられた人間 | 「三の姫」から。三女の意味 |
エボシ御前 | 30代後半 | タタラ場の女頭領 | 烏帽子(えぼし)から |
ジコ坊 | 50代 | 謎の僧侶 | 「時衆」の坊主から |
エボシ御前の複雑な裏設定
エボシも売られて倭寇(13世紀~16世紀にかけて朝鮮および中国大陸沿岸に出没した海賊)の妻となっていたという裏設定があります。彼女自身が社会的弱者の立場にいたためか、身売りされた女や病に苦しむ人々、虐げられ行き場のない弱者たちを差別することなくタタラ場に受け入れています。
神々・森の世界の登場人物・キャラクター名前解説
シシ神・ディダラボッチ
シシ神・ディダラボッチは、生死を司る森の神様。シシ神のモデルはシカで、月の満ち欠けとともに誕生と死をくり返しています。架空の神様でもあるため、シシ神のモデルについては公表されていませんが、おそらく関東地方や中部地方を中心に伝承される、山や湖を作った巨人・ディダラボッチではないかとされています。
モロの君(年齢:300歳)
サンを育てたモロの君は、300歳のメスの犬神です。モロの君の外見には2つのモデルがいると言われており、1つはホワイトスイスシェパードッグ、もう1つはニホンオオカミです。
乙事主(年齢:500歳)
乙事主は、巨大な4本のキバを持つ白い猪神で、年齢は500歳の最長老です。モデルになったのは、古事記にたびたび登場する大猪ではないかと言われています。
コダマ(森の精霊)
精霊の一種で、豊かな森林に棲む。白い体や淡い緑色の体を持ち、頭を動かすとカラカラという音が鳴る。この音でシシ神を呼ぶ。監督とジブリスタッフの話し合いの中で、コダマは数百年〜数千年単位の長期に渡って森の中で成長して、最終的にはトトロになるとされており、ジブリ作品の世界観を繋ぐ重要な存在でもあります。
SNS・WEB上で話題の登場人物考察
もののけ姫の登場人物について、多くのファンがSNSや各種プラットフォームで深い考察を投稿しています。特に注目すべき投稿をいくつかご紹介します。
「4年前に娘が生まれてから『もののけ姫』のブルーレイを買った。娘がタタリ神を恐れなかったので、誇張じゃなく200回くらい観たと思う。」
この投稿からは、もののけ姫の登場人物たちが現代の親子にも深い印象を与え続けていることがわかります。
「登場人物それぞれが複雑な事情を抱えている」「争いや問題は簡単に解決できない」という訴えがある
この考察は、もののけ姫の登場人物たちが単純な善悪では割り切れない複雑さを持っていることを的確に表現しています。
「映画そのものから受け取った情報のみに依拠して、登場人物の名前は基本的にカタカナで表記し、一部漢字を併用する」
このような詳細な全シーン解説を行うファンの存在は、作品の登場人物たちへの愛の深さを物語っています。
「コダマがノコノコ歩いてるやつ、最後にいれてくれって。それがトトロに変化した」という宮崎駿監督の発言
この投稿は、コダマという登場人物がジブリ作品全体の世界観を繋ぐ重要な役割を持っていることを示しています。
「その後サンとアシタカは良い関係を続けていく。彼はサンとタタラ場の人たちのため、いろいろな努力を払うことになる」
この情報は、映画のその後における主要登場人物たちの関係性についてファンに希望を与える内容となっています。
名前に込められた宮崎駿監督の世界観と思想
日本の映画で日本の歴史が描かれると、いつも都を舞台に、侍や、決まった階級の人間しか出てこないことが、おかしいと思っていました。本当の歴史の主人公たちは、辺境の地や野原に住んで、もっと豊かで、奥深い暮らしをしてきたはずという宮崎監督の思想が、登場人物の名前やキャラクター設定に深く反映されています。
縄文文化と室町時代の融合
隠れながら「縄文文化」を継ぐ東北地方の蝦夷の青年が、西に残るシシ神の森と、たたら製鉄という人間の業に出会った時、「どう生きていくか」を問われるという物語として構成されており、登場人物たちはそれぞれ異なる文化圏や価値観を代表する存在として描かれています。
登場人物から読み解く「生きろ」のメッセージ
宮崎自身は「この映画を作りたかった一番の理由は、日本の子供たちが”どうして生きなきゃいけないんだ”という疑問を持っているからだ」と明言していることからも分かるように、登場人物たちはそれぞれが「生きる」ことの意味を体現する存在として設計されています。
「損得ではなくて、生きるということ自体にどういう意味があるのかってことを問わなければならない時代がきた」という監督の言葉は、各登場人物の行動原理や名前の選定にも深く関わっているのです。
屋久島ロケハンが与えた登場人物描写への影響
1995年5月と7月、2回に分かれて美術、CG、作画、制作などのスタッフを連れてロケハンのため屋久島に訪れています。宮崎駿監督のコメントより「僕が日本というものに抱いていた妄想を形にする時に、スタッフに手がかりを与えるために行った」とあるように、実際の自然環境が登場人物、特に森の神々のキャラクター描写に大きな影響を与えています。
まとめ:もののけ姫登場人物の名前が示す普遍的テーマ
もののけ姫の登場人物・キャラクターの名前は、単なる識別記号ではなく、宮崎駿監督の深い思想と世界観が込められた重要な要素です。徹底的に”二項対立”を避け、それぞれが様々な価値観や事情を持っているゆえに、どうしようもない憎しみや軋轢も生まれてしまうという複雑な人間関係を、各登場人物の名前や背景設定を通して表現しています。
【この記事のポイント】
- もののけ姫の登場人物は人間界と神々の世界に大別される
- 各キャラクターの名前には深い由来と意味がある
- 室町時代という時代設定が名前選定に大きく影響
- 宮崎駿監督の「生きろ」というメッセージが込められている
- 縄文文化と室町時代の融合という独特の世界観を体現
- 単純な善悪でなく複雑な事情を持つキャラクター構成
「互いの世界で共に生きる」というメッセージは、現代を生きる私たちも、心に留めておくべきことではないでしょうか。国際化が進み、さまざまな文化を持つ人が混ざり合う世界でどう生きていけば良いのかという普遍的なテーマが、登場人物たちの名前と設定に込められているのです。
もののけ姫の登場人物について理解を深めることは、単に作品を楽しむだけでなく、現代社会における多様性や共生について考える貴重な機会を提供してくれます。それぞれの名前と背景に込められた監督の思いを知ることで、作品はより一層深い意味を持って私たちの心に響くことでしょう。