もののけ姫を見ていて、冒頭のタタリ神を覆っている不気味な「もじゃもじゃ」した触手が忘れられない方も多いのではないでしょうか?あの赤黒くうねうねと動く不気味な触手は、一体何を表現しているのでしょうか。子供の頃にトラウマになったという声も多く聞かれますが、実はこの「もじゃもじゃ」には、宮崎駿監督の深い意図と驚くべき制作秘話が隠されています。
この記事では、タタリ神の「もじゃもじゃ」した触手の正体から、その象徴的意味、制作の裏側まで、もののけ姫ファンなら知っておきたいすべての情報を徹底解説していきます。
タタリ神の「もじゃもじゃ」触手の正体とは?
もののけ姫に登場する「タタリ神」とは、もののけの神が荒ぶる魂を持って変貌してしまった巨大な怪物です。赤黒いミミズのような大量の触手がうじゃうじゃ蠢く体は、まるで巨大な土蜘蛛のよう。
タタリ神を覆っている「もじゃもじゃ」の正体は、呪いそのものが物質化した触手です。これは猪神であったナゴの守が、エボシ御前の石火矢によって深手を負い、人間への憎悪と怒りが爆発した結果として生み出された、まさに「負の感情の塊」なのです。
要素 | 詳細 |
---|---|
外見 | 赤黒い粘土質の触手、ミミズのような形状 |
動き | 変幻自在、垂直の壁も這い上がる |
能力 | 触れたものを腐らせ、呪いを植え付ける |
正体 | 憎悪と恨みが物質化したもの |
なぜ「土蜘蛛」のような形状なのか?その深い意味
その体は変幻自在で、触手を体の横から伸ばして脚を形成し、猛スピードで移動したり、邪魔者を薙ぎ払ったり捕縛することも可能。垂直に近い岸壁を這ったり、機械的に方向転換したりと、まるでクモの化け物の如く暴れ回る。
宮崎駿監督がタタリ神を「土蜘蛛」のような形状にデザインしたのには、古代日本の歴史的背景があります。「土蜘蛛」とは、古代日本において朝廷に従わない土着の民を蔑称で呼んだ言葉でもありました。
アシタカの属するエミシ族もまた、大和朝廷に従わなかった民族です。つまり、エミシの村を襲う土蜘蛛のようなタタリ神という構図は、「支配される側が支配する側を襲う」という皮肉な意味合いを含んでいるのです。
驚愕の制作秘話:「もじゃもじゃ」は手描きだった
確かに、最近のアニメならほぼ確実にCGで作画するようなシーンでしょう。しかし『もののけ姫』が作られたのは1997年で、宮崎駿監督作品としてはCGが本格的に導入された最初の映画になるわけです。そのため当時はジブリ社内に新たにCG部門を開設し、「コンピュータを使うことでどんな表現が可能になるのか?」を日々試行錯誤しながらアニメを作っていたという。そして当初は「冒頭に登場するタタリ神をすべて3DCGで作画する」という計画もあったらしいのですよ。しかし実際にテスト映像を作ってジブリ内部で検討したところ、宮崎監督が「ダメだ!こんなもの使えない!」と却下。
実は、あの複雑で不気味な「もじゃもじゃ」した触手の動きは、ほとんどが手描きで制作されていたのです!
制作現場での苦労話
なお、このシーンの原画を担当した笹木信作さんは「宮崎監督の意図する”勢い”とか、生物感のようなものを表現するのが難しかった。常に”これでいいのか?”という不安との闘いだった」とコメント。また、動画を担当した鶴岡耕次郎さんは「どうしても変なクセが出てしまい、インスタントラーメンみたいな形になってしまった。描いているうちに何が正解かわからなくなり、どんどん泥沼にはまっていった」とのこと。
『もののけ姫』の冒頭シーンに出て来るタタリ神はCGじゃなくて手描きの作画なんだけど、グニョグニョ動くヘビの動きが複雑すぎて、わずか数分のカットなのに制作期間は1年7か月!動画枚数は5300枚もかかったらしい。
- 制作期間:1年7ヶ月
- 動画枚数:5300枚
- 作業担当者:ほとんどのアニメーターが嫌がる「罰ゲーム」扱い
「もじゃもじゃ」が表現する呪いのメカニズム
アシタカは村を襲ったタタリ神から村を守る際に、タタリ神の触手に右腕をやられ、そこに呪いを焼き付けられている。この呪いは黒いアザとして残り、受けた者の命を蝕んでいくと同時に、削った命と引き換えにその者の潜在能力を強制的に引き出す、まさに「神の毒」と呼べる代物である。
タタリ神の「もじゃもじゃ」した触手が持つ恐ろしい力とは、「呪いの伝播装置」としての機能です。
呪いの段階的進行
- 接触段階:触手が肌に触れることで呪いが刻まれる
- 潜伏段階:右腕に黒いアザとして現れ、徐々に全身に拡散
- 活性化段階:怒りや憎悪に反応して「タタリヘビ」として暴走
- 終末段階:全身に広がり切った時点で死に至る
SNSで話題の「もじゃもじゃ」への反応
「海外の人が、もののけ姫を見て タタリ神をスパゲッティモンスターって言っちゃうのすき」
引用:Twitter投稿
「もののけ姫のタタリ神のシーンは本当に観れなかった昔」
引用:Twitter投稿
「タタリ神の動きや作画も時間と予算がかかっただけあって、流石に高クオリティ過ぎるよ〜😆👍」
引用:Twitter投稿
「もののけ姫で一番好きなのは冒頭の祟り神くん」
引用:Twitter投稿
「『当時のセル技術の頂点』『あの動きをセルで手描きしていたのがすごい』というアニメ技術を称賛する人も多いようです」
引用:各種SNS投稿より
宮崎駿監督が込めた「もじゃもじゃ」の象徴的意味
宮崎作品に登場する怪物は、『風の谷のナウシカ』の巨神兵も『千と千尋の神隠し』のカナシも、人間の負の側面を象徴するものでした。『もののけ姫』のタタリ神も、それらに連なるような存在として描かれています。豊かになるために森を切り開く人間への祟りであり、自然の怒りと憎しみを表す存在。
タタリ神の「もじゃもじゃ」した触手は、単なるグロテスクな表現ではありません。これは現代社会における様々な「呪い」のメタファーとして機能しています。
現代的解釈
- 環境破壊への警鐘:自然への暴力が人間に跳ね返ってくる様子
- 憎悪の連鎖:負の感情が周囲に伝染していく恐ろしさ
- 現代の病気:原因不明の難病や心の病への暗喩
- 社会の歪み:差別や偏見が生み出す社会的な「呪い」
「もじゃもじゃ」の制作技術的側面
タタリ神の細かいネバネバの動きや、移動する動きはすべてセルによるもの。ナゴの守が息絶えるシーンはCGのモーフィングという技術を使い、肉が溶け落ちる前の絵と骨化した絵をコンピュータ上で変形させながら合成しています。
実際の制作では、手描きとCGのハイブリッド技法が使われていました:
シーン | 制作手法 |
---|---|
壁を破るシーン | CG制作 |
突進シーン | 手描きセル画 |
触手の動き | 手描きセル画 |
死亡時の変化 | CGモーフィング |
他のタタリ神との「もじゃもじゃ」比較
作品中には2体のタタリ神が登場しますが、それぞれ「もじゃもじゃ」の表現に違いがあります。
ナゴの守(完全体)
- 全身が触手に覆われている
- 赤黒い色調で統一
- 攻撃的で制御不能な動き
乙事主(変化途中)
- 部分的に触手が生成
- 本来の白い毛色との対比
- 理性を保ちながらも暴走
本体を黒い触手で包みこんでいる、あるいは本体から触手が生えている…といった印象なんだけど、バトワンの視点からすると”内部から寄生されている”みたいな印象も受けるんだよね。内側でドス黒く濁った感情が神様のパワーに耐えきれず、毒の触手となって溢れ出してきた…みたいな。
まとめ:「もじゃもじゃ」に込められた普遍的メッセージ
もののけ姫のタタリ神を覆う「もじゃもじゃ」した触手は、単なる怖いビジュアルではありません。これは宮崎駿監督が現代人に向けて発信した、「憎悪と怒りに支配されることの恐ろしさ」を象徴する重要な表現だったのです。
1997年の制作から27年が経った今でも、この「もじゃもじゃ」の象徴する意味は色褪せることがありません。むしろ、SNSでの誹謗中傷や社会の分断が深刻化する現代において、その警鐘はより一層重要な意味を持っているといえるでしょう。
あの不気味な「もじゃもじゃ」を見るたびに、私たち自身の心の中にある負の感情と向き合い、それに支配されることなく生きていく大切さを思い出したいものです。タタリ神の触手に込められた宮崎監督からのメッセージを、現代を生きる私たちはしっかりと受け取る必要があるのではないでしょうか。