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もののけ姫の元ネタとは?神話・民話・歴史的背景を徹底解説!

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もののけ姫の元ネタとは?神話・民話・歴史的背景を徹底解説!

「もののけ姫の深い世界観に隠された元ネタを知りたい」「宮崎駿監督はどんな神話や歴史からインスピレーションを得たの?」と感じているあなた。もののけ姫の表面的な美しさの奥には、日本の古代文化、神話体系、歴史的背景が複雑に織り交ぜられた壮大な物語が存在しています。

この記事では、もののけ姫の基盤となった縄文文化、蝦夷の歴史、照葉樹林文化論から、シシ神の神話的モチーフ、古代日本の信仰体系まで、宮崎駿監督が16年の構想期間で練り上げた元ネタの全貌を詳しく解説していきます。

もののけ姫の歴史的背景:縄文文化と蝦夷の世界

アシタカの正体:縄文文化を受け継ぐ蝦夷の末裔

もののけ姫の主人公アシタカは、大和朝廷に抵抗し追われた蝦夷の末裔として描かれています。彼の使用する石の鏃、漆の器、祭事の衣装は縄文時代の文化にブータンや北タイの焼き畑圏など照葉樹林文化圏の要素が混ざった文化を形成していると設定されています。

劇中冒頭に登場する蝦夷の村の物見やぐらは、三内丸山遺跡などで出土・再現されているものと酷似しており、蝦夷一族が東北地方で縄文時代の文化を受け継いでいることを暗に示しているという細かな演出が施されています。

「大和との戦に敗れ五百十余年」の歴史的意味

劇中の「大和との戦に敗れ五百十四年」という台詞から、前九年の役(1051-1062)、後三年の役(1083-1087)を指すものと推定され、そこから500年経過した15、16世紀が舞台と考えられることが判明します。

この設定により、もののけ姫は単なるファンタジーではなく、日本映画で中世史をアウトサイダーの側から描くという「時代劇の革命」を意図した作品として位置づけられます。

神話的モチーフ:シシ神の正体と古代信仰

シシ神の元ネタ:多重な神話的背景

シシ神のモチーフとして、国造りの神でありタタラ製鉄の伝承と関連しているダイダラボッチ、神遣としての神鹿、雨迦久神などが推測される一方で、神道では鹿が神の使い「神使」と考えられているため、宮崎監督の中で結びついたという複合的な背景があります。

シシ神は無数の動物の様態を持つ「生と死」の自然神で、大きなシカのような姿だが、顔つきはサルを思わせる赤ら顔で人面にも似ており、耳はヤギ、目鼻は猫のような混合的な存在として描かれています。

諸星大二郎からの影響

宮崎監督は漫画家・諸星大二郎の熱心な読者として知られており、もののけ姫においてもビジュアル的に影響を受けている。例えば、主人公・サンの風貌や、デイダラボッチが森を歩く構図などが指摘されているという制作背景があります。

シシ神やデイダラボッチの姿は『孔子暗黒伝』の解明獣や『マッドメン』の巨人に似ており、サンの化粧も『マッドメン』の登場人物のそれと類似性が見られるという具体的な影響関係も確認できます。

古代日本の信仰体系:アニミズムと自然崇拝

縄文的世界観の再現

アシタカを縄文人=アイヌに近い存在と解釈すると話がスッキリし、縄文人は森の恵みで生きる狩猟採集民族で、それに対して彼らを服属させた大和朝廷は農耕や製鉄の技術を持つ弥生人という対立構造が描かれています。

ヒイ様の後ろにある土器は縄文の模様ととてもよく似ており、岩の前に祭壇が置かれ岩石信仰が見て取れる。岩石信仰は縄文時代から始まったという学説があり、エミシは縄文先住民と言われているという考古学的根拠も示されています。

タタリ神と土蜘蛛の関係

なぜタタリ神を蜘蛛のような姿にしたのかは、大和朝廷に逆らっている部族の呼び名の一つとして「土蜘蛛」というものがあって、大変な差別用語で、実際に大和朝廷に征伐を受けて凄まじい怨嗟を残しつつ死んでいった人たちの怨念がまとわりついているという深い歴史的背景があります。

民話・伝承からの影響

司馬遼太郎との対談からの着想

宮崎は作家の司馬遼太郎と対談した時、司馬が新聞記者時代に京都の岩屋不動志明院に宿泊した際、奇っ怪な体験をした話しを聞き『もののけ姫』の着想になったという具体的なエピソードも明らかになっています。

「シシ」という言葉の深い意味

『宇治拾遺物語』にも見られるように、「シシ」は獣・野獣、特に食肉のために捕獲する「いのしし」「かのしし(鹿)」を指し、シシ神が「自然界そのものの象徴」でありながら「シシ」と呼ばれることには深い意味があるとされています。

照葉樹林文化論の影響

中尾佐助の『栽培植物と農耕の起源』

本作は照葉樹林文化論の示唆を受けた世界観を舞台とし、参考とされたのは中尾佐助の『栽培植物と農耕の起源』で、日本文化の基底が稲や稲作農民ではないことを明らかにする同書の内容が製作に大きく影響しているという学術的背景があります。

遍歴民の世界

本作では稲作農民に代表される平地の「定住民」とは全く別の生活圏を持つ「遍歴民(山民・海民・芸能民など)」が多く取り上げられ、『もののけ姫』は遍歴民の世界で展開される物語として構想されています。

SNSで話題の元ネタ考察

映像研究家の叶精二さんによる解説で、宮崎駿監督が民族・歴史・文化について、膨大な情報量を1シーンごとに詰め込んでいるのがわかる。時代は室町時代で、隠れながら「縄文文化」を継ぐ東北地方の蝦夷の青年が、西に残るシシ神の森と、たたら製鉄という人間の業に出会った時、「どう生きていくか」を問われるという物語

引用:https://note.com/little_shotaro/n/n2ac4fd4e73ac

サンの仮面のモチーフは縄文人で、宮崎駿監督はサンの仮面を”土面”と呼んでおり、赤くて丸い顔に目と口のような3つの穴があいたサンの仮面は縄文時代の土面によく似たデザイン。縄文時代の土面は魔術性の強いアイテムとされておりもののけ姫で縄文人を象徴するシンボルとして採用された

引用:https://cosmicbreak.jp/mononnoke-toshidensetsu

宮崎駿監督は、もののけ姫という作品を通じて「生と死を分けている限り、この世から争いも憎しみも無くならない」ということを伝えている。屋久島の森では、巨木が倒れ、朽ちていく過程でまた新たな生命が育まれている光景を目にでき、「生」と「死」が分かれているのは、ただただ、僕たちの考えの上だけなのかもしれない

引用:https://note.com/little_shotaro/n/n2ac4fd4e73ac

最近の研究では、アイヌ語を話す人々が地元の日本語を話す人々と連携してヤマト王権の拡大に抵抗したことを示唆している。マタギは、これらのアイヌ語話者の子孫であり、彼らは地元の日本語話者に地理や彼らが狩猟した森や水の動物に関連した地名と借用語を提供した

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/蝦夷

アイヌ文化との関連性と考察

蝦夷とアイヌの関係性

二重構造モデルを提唱した埴原和郎は、「中世以前に東北地方に住んでいたエミシは,アイヌと和人との分離の途上にあった集団であり,現代的な意味でのアイヌでも和人でもなく,その中間的特徴をもっていた」とした。縄文人は歴史的変遷の中で蝦夷とアイヌの両方の祖先と考えられているという学術的見解があります。

アイヌの死生観とシシ神

この死生観は、縄文文化が受け継がれていったアイヌ文化から触れることができ、アシタカの「シシ神さまは死にはしないよ。生命そのものだから。生と死とふたつとも持っているもの」という捉え方には深いアイヌ的世界観が反映されています。

宮崎駿の制作意図と文化的メッセージ

「神話やファンタジーの世界が残っていた最後の時代」

宮崎駿は室町時代を「神話やファンタジーの世界が残っていた最後の時代」とし、「神殺し」と原生林の消滅は呼応した概念として描いているという明確な意図があります。

環境破壊への警鐘

たたら製鉄は砂鉄を原料として、燃料には木材が使用される。たたら製鉄を盛んに行うということは、それに比例して森林伐採が進んでいくということでもあり、人間社会のコミュニティの発展は自然破壊と同時並行で進んでいくという現代的な環境問題への警鐘も込められています。

総合的な元ネタの解析

宮崎駿監督は、「世界全体の問題を解決しようというのではない。荒ぶる神々と人間との戦いにハッピーエンドはあり得ないからだ。しかし、憎悪と殺戮の最中にあっても、生きるに値することはある。素晴らしい出会いや美しいものは存在し得る」と語っており、この哲学的メッセージの基盤として以下の元ネタが組み合わされています:

カテゴリー 具体的な元ネタ 作品への影響
古代文化 縄文文化、蝦夷の歴史 アシタカの設定、村の描写
神話・信仰 アイヌ神話、神道、アニミズム シシ神、もののけの概念
学術理論 照葉樹林文化論、二重構造モデル 世界観の構築
文学作品 諸星大二郎作品、宇治拾遺物語 ビジュアルデザイン
歴史的事実 前九年の役、後三年の役 時代設定の根拠

まとめ

もののけ姫の元ネタは、単一の神話や民話ではなく、古代日本の曖昧な部分を、口伝によって伝えられてきた神話や昔話、言い伝えや民謡から再構築した壮大な文化的統合体です。

宮崎駿監督は16年の構想期間を通じて、縄文文化から室町時代まで、アイヌの死生観から照葉樹林文化論まで、日本文化の深層に眠る多様な要素を有機的に結合させ、現代に通じる普遍的なメッセージを込めた傑作を生み出しました。

この深い文化的背景を理解することで、もののけ姫は単なるアニメーション作品を超えて、学者や批評家たちが批評するに値する「芸術」として、より豊かな鑑賞体験を提供してくれるのです。

このように、『もののけ姫』に登場するキャラクターたちを追っていくと、いろんな日本の文化や、作品のメッセージが見えてきます。日本という文化の面白さを知るきっかけとしても、『もののけ姫』は良いきっかけになる作品なのです。

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