もののけ姫を語る上で欠かせない重要キャラクターの一人である「ヒイ様」。物語の序盤にしか登場しないにも関わらず、その存在感と深い洞察力で多くのファンを魅了し続けています。また、「石火矢衆の長老」という設定や正体について様々な考察が飛び交っているのも事実です。
本記事では、エミシの村を統べる巫女ヒイ様の正体から、石火矢衆との関連性、そして物語全体における重要な役割まで、徹底的に解説していきます。
ヒイ様の基本的なプロフィールと設定
ヒイ様は、エミシの隠れ里の老巫女であり、村をまとめている存在です。占いで物事を決めていく女性であり、物事を察知する直観力と知恵を持ち、卑弥呼に相似しているとされています。
項目 | 詳細 |
---|---|
役職 | エミシ村の長老・巫女 |
推定年齢 | 70歳以上 |
推定身長 | 130cm台 |
声優 | 森光子 |
特殊能力 | 石や木片を使った占い、呪いの判定 |
エミシ族における重要な立ち位置
エミシ(蝦夷)を宮崎駿は、大和政権とその支配下に入った稲作農耕民から追われて本州北部の山中に隠れ住んだ、焼畑・狩猟・採集・工芸を生業とする原日本人の残党と解釈しています。
ヒイ様は、この500年以上も隠れ住み続けているエミシ一族の精神的支柱として、重要な決定を占いによって導く役割を担っています。彼女の一言が、アシタカの運命を決定づけ、ひいてはもののけ姫全体の物語の始まりとなったのです。
ヒイ様と石火矢衆の関係性について
多くのファンが疑問に思うのが、「ヒイ様が石火矢衆の長老なのか?」という点です。結論から言えば、ヒイ様は石火矢衆の長老ではありません。
石火矢衆の正体
石火矢衆は、師匠連からエボシ御前に与えられている傭兵の集団です。オレンジ色の服に白い頭巾を頭に巻いており、エボシ御前の一行が峠を越える時の護衛を務め、シシ神退治にも同行します。
ヒイ様との違い
ヒイ様と石火矢衆は、以下の点で明確に異なります:
- 所属組織:ヒイ様はエミシ村、石火矢衆は師匠連
- 地理的位置:ヒイ様は東北の隠れ里、石火矢衆は西の地域で活動
- 文化的背景:ヒイ様は縄文的文化、石火矢衆は当時の武力集団
- 役割:ヒイ様は巫女・長老、石火矢衆は傭兵
ヒイ様の占いと神秘的な能力
ヒイ様の占いは、3千年以上前の古代中国で吉兆を占うのに表・裏のあるタカラガイ、2枚貝などを投げていたのがモデルになっているとされています。作中では鹿の骨や石を使った特異な占いを行います。
占いの方法と意味
作中でヒイ様がアシタカを占う際に使うのは鹿角と鹿骨です。火を使わず鉱石や木片と併用して投げるという特異な占いですが、これも鹿トの一種(運命判断や方角占いの類)と思われます。
この占いの特徴:
- 古代からの伝統的な占術の継承
- 鹿という神聖な動物の骨を使用
- 自然との深いつながりを示す儀式
- エミシ独特の文化的背景
ヒイ様の名言と哲学
ヒイ様のセリフには、深い人生哲学が込められています。
最も有名な名言
「誰にも運命(さだめ)は変えられぬ。だが、ただ待つか自ら赴くかは決められる。」
この言葉は、全世界の偉人の名言にすら匹敵する重みをもっていたとも評価されています。
その他の重要なセリフ
「西の土地でなにか不吉なことが起こっているのだよ。その地に赴きくもりない眼で物事を見定めるならあるいはその呪いを断つ道が見つかるかもしれぬ」
このセリフには、アシタカへの深い配慮と、同時に一族を守るための冷静な判断が込められています。
声優・森光子について
エミシの村をまとめる巫女のヒイ様の声を担当したのは歌手で俳優の森光子。1920年生まれ、77歳で出演した『もののけ姫』で自身初のアニメ声優を経験しました。
森光子さんの経歴:
- 1930年代から俳優活動を開始
- 戦後間もない頃は進駐軍のキャンプでジャズ歌手として活動
- TBSドラマ「時間ですよ」シリーズで人気を集める
- 『放浪記』では2017回もの公演で主演を務める
- 2012年11月10日、92歳で逝去
ヒイ様黒幕説の真相
ファンの間では「ヒイ様黒幕説」が囁かれることがあります。
黒幕説の内容
ヒイ様はアシタカを呪いの原因になった西の国に行かせ、呪いを返すためアシタカを利用したのではないかという説があります。アシタカの呪いが「死ぬこと」ではなく、アシタカ自身がタタリ神になることを恐れ、タタリ神になるアシタカを西にある国の元に送り込んでしまおうと考えたとする説です。
真相の考察
しかし、この説は以下の理由で適切ではないと考えられます:
- ヒイ様の真意は一族の保護と平安の維持
- アシタカに対する深い愛情と配慮が見て取れる
- 「呪いを断つ道が見つかるかもしれぬ」という希望を与えている
- エミシの掟に従った正当な判断
エミシ文化における巫女の意義
アシタカの住む村の長老であり、巫女でもあるヒイ様の後ろにある土器は、縄文の模様ととてもよく似ています。ヒイ様の夜の集まりでは、岩の前に祭壇が置かれており、岩石信仰が見て取れます。岩石信仰は縄文時代から始まったという学説があります。
縄文文化の継承者としてのヒイ様
ヒイ様は単なる村の長老ではなく、古代から続く縄文文化の継承者という重要な側面を持っています:
- 岩石信仰の実践者
- 古代占術の継承者
- 自然との調和を重視する価値観
- 口承文化の担い手
ヒイ様の祝詞について
もののけ姫の祝詞とは、ヒイ様がタタリ神に対して言ったセリフのことです。祝詞というのは、神様に対する敬語のようなものであり、普通の言葉ではありません。
祝詞の意味と重要性
ヒイ様のセリフは、タタリ神に対して言ったもので、荒ぶる神よ落ち着いてくれという意味あいがありました。ヒイ様の祝詞からは、タタリ神様に最大限気を使っていたという事実と、日本神道を信仰していたということがわかります。
物語における重要な役割
ヒイ様の存在意義は、単なるストーリーの導入部にとどまりません:
物語の起点としての機能
- アシタカの西への旅立ちを決定
- 運命と自由意志の哲学的テーマを提示
- 古代日本の精神性を体現
- 自然と人間の関係性を象徴
現代への示唆
ヒイ様の存在は、現代社会への重要なメッセージも含んでいます:
- 伝統文化の継承の大切さ
- 自然への畏敬の念
- 運命に対する人間の態度
- 共同体における長老の知恵
SNSでの話題と反響
「ヒイ様の『健やかであれ』っていいセリフだ」
引用:https://twitter.com/user/status
「もののけ姫のヒイ様の『曇りなき眼(まなこ)で物事を見定めるなら、あるいは呪いを絶つ道が見つかるかもしれん』っていう冒頭の超投げやり中2セリフ」
引用:https://twitter.com/user/status
「ヒイ様の中の人が、あの森光子女史と知った時はガチでビックリさせられたなぁ…」
引用:https://twitter.com/user/status
これらの反響からも、ヒイ様のキャラクターが多くの人々に深い印象を与えていることがわかります。
まとめ
もののけ姫のヒイ様は、石火矢衆の長老ではなく、エミシ一族の巫女であり長老です。彼女は古代から続く縄文文化の継承者として、深い知恵と洞察力を持つ重要なキャラクターです。
ヒイ様の指示がなければ「もののけ姫」の全てのストーリーは始まりませんという指摘の通り、彼女の存在は物語全体の根幹をなしています。
物語の序盤にしか登場しないにも関わらず、その深い哲学と印象的なセリフ、そして森光子さんの素晴らしい演技により、多くのファンに愛され続ける存在となっています。ヒイ様を通じて、宮崎駿監督は古代日本の精神性と、現代人への重要なメッセージを伝えているのです。
ヒイ様の正体を理解することで、もののけ姫という作品の奥深さと、日本の古代文化に対する敬意をより深く感じることができるでしょう。彼女は単なる脇役ではなく、物語の精神的な支柱として、今後も多くの人々に影響を与え続けることでしょう。