もののけ姫に登場するアシタカの愛すべき相棒・ヤックルについて、「あの動物の正体は何なの?」「どんなモデルがいるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
ヤックルはただの移動手段ではなく、アシタカにとって心から信頼できる最高のパートナーとして描かれています。その美しい走りと忠実な性格で多くの視聴者の心を掴んでいますが、実はその正体や背景には興味深い設定や考察が数多く存在します。この記事では、ヤックルの正体からアシタカとの深い絆まで、徹底的に解説していきます。
ヤックルの正体とは?アカシシと呼ばれる架空の生き物
ヤックルは作中で「今は絶滅した、アカシシと呼ばれるオオカモシカ」という設定があり、ジコ坊の古書には「アカシシに跨がり、石の矢尻を使う勇壮なる蝦夷の一族有り」と記されています。
宮崎駿監督自身も「ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが自分の中のどこかにあったので、作りました」と語っており、完全に架空の動物として創造されたキャラクターなのです。
ヤックルの身体的特徴
ヤックルの特徴的な外見について詳しく見てみましょう。
部位 | 特徴 |
---|---|
角 | 正面から見るとハート形、輪を連ねたような凹凸のある立派な二本角 |
体色 | 赤茶色の体と首元の白くふわふわとした毛 |
脚 | 「カモシカのような脚」と称されるしなやかで強靭な四本脚 |
体型 | 人間を乗せて走れる大型の偶蹄類 |
ヤックルのモデル動物を徹底調査
ヤックルのモデルとなった動物はエランドであり、行動はシャモア、模様はリーチュエ、巨大な角はアイベックス、オリックス、サオラ、セーブルアンテロープ、ブルーバック、ブラックバックなどにも似ています。
主要なモデル候補
- エランド:アカシシの別名とも呼ばれるウシ科の動物で、昼行性でありながら暑い日中はあまり活動しない特徴を持っています
- アイベックス:オオカモシカよりもヤックルとビジュアルがそっくりだという声が多数上がっている動物です
- ニホンカモシカ:実在するニホンカモシカにも「アオシシ」や「アオ」という別名があり、設定上の関連性を感じさせます
スタジオジブリ公式ツイッターでも「ヤックルは架空の動物であり、オオカモシカがモデル」と明記されており、複数の動物の特徴を組み合わせた完全オリジナルの生き物として創造されています。
アシタカとヤックルの深い絆と信頼関係
ヤックルは性格が温厚で、主人であるアシタカの命に忠実で、身の危険を感じようともアシタカを見捨てず指示に従うとても健気で信頼感のある動物として、もはや使役動物というよりは相棒に近いほど深い関係にあります。
信頼関係を示すエピソード
映画中でアシタカとヤックルの絆の深さを示すシーンは数多くあります:
- タタリ神との遭遇:タタリ神が現れてヤックルが恐怖でフリーズした際、アシタカは動けなくなったヤックルを見捨てずに助けてあげました
- 矢が刺さっても従うシーン:侍が放った矢がヤックルのお尻に刺さってしまった時、アシタカは「ここで待っとけ」と言いますが、ヤックルは忠実にアシタカについてこようとします
- 阿吽の呼吸:手綱を解かれてもアシタカのそばにいる、踏み入るべきでない場所をわきまえるなど、かなり頭が良く情緒豊かな描写が見られます
ヤックルの名シーンと魅力
夜明けの疾走シーン
アシタカが村を出てから、ヤックルと共に走っているシーンでは、真夜中に走り始めてからしらじらと夜が明け始め、それと同時に壮大な音楽が盛り上がっていきます。
宮崎駿監督は音楽担当の久石譲と背景担当者に「今、アシタカの心の中は、絶望と怒りと悲しみで真っ黒です。そんな彼には最高の朝をあげたいんです」という特別な注文をしており、このシーンは物語の重要な転換点として描かれています。
山犬たちとの関係構築
山犬の匂いがするサンに対して、背中から振り払おうとする仕草を見せるなど、ヤックルも初めはサンと山犬に対して恐怖心を抱いていましたが、アシタカと行動を共にし、エボシに立ち向かって戦っていく中で印象を変えていきます。
最後は、鼻をすり合わせるなどすっかり仲良しになった山犬とヤックルの姿は、癒される度抜群です。
ヤックルの性別についての考察
ヤックルの性別は明かされていませんが、アシタカに献身的な様子からメスではないかと考察されています。
映画内でのあのしなやかな動きはとても美しく、メスらしさを表現しているのではないかと思ってしまうシーンも多く、多くのファンがメス説を支持しています。
ただし、架空の動物であるため、そのオスの姿はもっと角が立派なんてことも考えられ、オスを確定させるには少し弱いのが現状です。
ヤックルの能力と特技
人間を乗せて軽々と走れるぐらいには大きく頑丈な動物で、特に山岳地帯や悪路では馬よりも速く、崖や岩場も飛ぶように駆け下りてしまいます。
ヤックルの主な能力
- 高速移動能力:重装備の騎馬武者相手でも、その速さは軍馬も置き去りにしてしまうほど
- 跳躍力:ヤックルは馬にはない跳躍力を持ち、水の中を泳ぎ、そして何よりタタリ神を上回る足の速さを持っていました
- 高い知能:人間の言葉を話すことはできない普通の動物であるものの、人間の話すことを理解している高い知能を持っています
- 優れたコミュニケーション能力:山犬と挨拶のような仕草でコミュニケーションを取ることができる
他のジブリ作品におけるヤックル
ヤックルはもののけ姫以前から、宮崎駿監督が1983年に出版したファンタジー絵物語『シュナの旅』に同名キャラクターとして登場しており、ビジュアルももののけ姫のヤックルと酷似しています。
『シュナの旅』におけるヤックルも騎手であるシュナに忠実な相棒として描かれ、シュナ達が人狩りの追跡から逃げる際には、3人を乗せて丸2日間を昼夜休まずに走り続けました。
また、『ゲド戦記』にもアレンの相棒として登場していますが、こちらはビジュアルが異なりグアナコやビクーニャのような姿で描かれています。
SNSで話題のヤックルへの愛情
ヤックルに対するファンの愛情は深く、様々な形で表現されています。
このシーンは人気が高く、漫画『呪術戦』には秤金次が「こんなに凹んだのはヤックルの尻に矢がブッ刺さった時以来だよ」と言うセリフも存在します。
引用:https://ciatr.jp/topics/46435
緒羽神主、今宵は夫婦で「もののけ姫」のBlu-rayを観賞した神主。
引用:https://naonaonyanko.com/mononoke-yakkuru/
アシタカが里にいた頃のお話として創作しました。ヤックルとアシタカの絆の強さは映画を観ているだけでひしひしと伝わってきます。彼らのエピソードは過去にもいくつか書きましたが、もっと沢山あるだろうし書いてみたいです。
引用:https://dic.pixiv.net/a/ヤックル
多くのファンがヤックルとアシタカの関係性に感動し、二次創作やイラスト、考察記事を投稿していることがわかります。
ヤックルが象徴する人間と自然の共生
ヤックルとアシタカの姿は自然と人間との理想の形と感じられ、主従関係があるにしろあそこまでの信頼関係は本当の相棒として共に過ごしてきた姿が容易に想像できます。
この二人の関係があるからこそ、エボシ御前やジゴ坊の人間の気持ちも、山犬達の自然の大切さもどちらの気持ちもわかり共存する道を見出したアシタカだからこそこの戦いの無益さを感じていたのかもしれません。
ヤックルは単なる乗り物ではなく、人間と自然が共存できる理想の関係を象徴する存在として描かれているのです。
物語の最後のヤックル
シシ神の首を返し、枯れた森に再び芽吹きも見られた後、アシタカとサンは互いの道が分かれても「共に生きよう」と別れていきます。その時アシタカはヤックルに乗って森を去りますが、最後にサンに「会いに行くよ、ヤックルに乗って」と語っていました。
この言葉からも、アシタカにとってヤックルが単なる移動手段ではなく、人生を共にする大切なパートナーであることが伝わってきます。
まとめ:ヤックルの真の魅力とは
ヤックルは宮崎駿監督が創り出した架空の動物でありながら、多くの実在動物の特徴を巧みに組み合わせた魅力的なキャラクターです。エランドをベースにしつつ、アイベックスの角やシャモアの行動パターンなどを取り入れた、まさに理想の騎乗動物として描かれています。
しかし、ヤックルの真の魅力はその外見や能力ではなく、アシタカとの深い信頼関係にあります。どんな危険な状況でも主人を見捨てず、時には自らの身を危険にさらしてでもアシタカを守ろうとするその姿は、真の友情とは何かを私たちに教えてくれます。
また、山犬たちとの関係構築を通じて、異種間でも理解し合えることを示し、人間と自然の共生という物語全体のテーマを体現している点も見逃せません。
「会いに行くよ、ヤックルに乗って」というアシタカの最後の言葉は、これからも二人が永遠に共に歩んでいくことを示しており、多くの視聴者の心に深い感動を与え続けています。
ヤックルは『もののけ姫』という壮大な物語の中で、癒しと希望を与える特別な存在として、今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。その美しい走りと忠実な心は、人間と動物、そして自然との理想的な関係を私たちに示し続けているのです。