もののけ姫を見て「あのたたら場での女性たちの湯もみシーンは、実際の湯もみと関係があるの?」「草津温泉の湯もみとどう違うの?」と疑問に思ったことはありませんか?実際に多くのファンが、映画に登場するたたら場での踏鞴(ふいご)作業と草津温泉の伝統的な湯もみとの関連性について調べています。
この記事を読めば、もののけ姫に登場する湯もみシーンの真実と草津温泉の湯もみ文化との興味深い関係性、そして現実とフィクションの違いまで完全に理解できます。
もののけ姫の湯もみシーンの正体
もののけ姫のたたら場で女性たちが踏んでいるのは「天秤鞴(てんびんふいご)」と呼ばれるもので、炉の両脇につくられた大きな板を複数で踏んで上下させ、炉に風を送ります。このシーンは製鉄のための送風作業であり、厳密には温泉の「湯もみ」とは全く異なる技術です。
しかし、友人がなにやら”もののけ姫”の一部のシーンのモデルとなっている”湯もみ”が観たいという理由で草津温泉を訪れる人もいるほど、映画のあの印象的なシーンと草津温泉の湯もみが多くの人の中で結び付けられています。
たたら場での作業と湯もみの類似点
このシーンでは複数の女性が息を合わせて大きな板を上下に動かす動作が描かれており、この動きが草津温泉の湯もみで使用される長い木の板を使った動作と視覚的に似ているため、多くの人が関連性を感じるのです。
項目 | もののけ姫のたたら場 | 草津温泉の湯もみ |
---|---|---|
目的 | 製鉄炉への送風 | 温泉の温度調節 |
道具 | 天秤鞴(大型の板) | 湯もみ板(約180cm) |
動作 | 足で板を上下に踏む | 手で板を上下に動かす |
参加者 | 複数の女性 | 複数の湯もみ娘 |
草津温泉の湯もみ文化とその歴史
草津温泉の源泉は50から90度とそのまま入浴するには、非常に高い温度です。そのため、草津温泉では、加水・加温をせずに源泉かけ流しで効能を余すとこなく得られるよう、古くから「湯もみ」が行われてきました。
湯もみの技術的詳細
熱い源泉の中に長さ180㎝のアイスキャンディーの棒のような板を入れてかき混ぜることで温度を下げます。この技術により、温泉の効能を薄めることなく入浴適温まで下げることができるのです。
湯もみが本格的に始まったのは、明治の初期。その後、全国的に湯もみを有名にしたのは、詩人の平井晩村(ひらいばんそん)で、草津を訪れた紀行を著した「湯けむり」を大正7年(1918年)に発表し、草津節の原型と言われている詩を書き残しました。
もののけ姫とたたら製鉄の実際の関係
宮崎駿監督のアニメ『もののけ姫』には「たたら場」が、物語のカギを握る重要な場所として登場します。たたら場とは砂鉄から鉄を取りだす作業を行う場所で、いわば昔の製鉄所です。
史実との違い
興味深いことに、実際のたたら製鉄の現場は、映画のイメージとは大きく異なる様相を呈していました。まず最も大きな違いは、たたら場が厳格な「女人禁制」の空間だったことです。
映画「もののけ姫」では、女性たちがたたらを踏んでいた。村の男は「でもなぁタタラ場に女がいるなんてなぁ。ふつうは鉄を汚すってそりゃ嫌がるもんだ」と言うセリフからも、宮崎駿監督がこの史実を理解した上で、意図的に異なる描写をしていることが分かります。
踏鞴作業の実態
番子(ばんこ)と呼ばれたこの人たちの仕事は、約70時間の操業の間、片時も休まずに炉内に風を送り続けること。ちなみに番子は3人1組で、1時間踏んで2時間休憩という交代作業を行なったそうで。これが「かわりばんこ」という言葉の起源になったとか!
現代の草津温泉での湯もみ体験
ここ熱乃湯では、「湯もみと踊り」ショーを毎日行っており、草津温泉の伝統を肌で感じることができます。現在では観光客も実際に湯もみを体験することが可能です。
熱乃湯での湯もみショー
熱乃湯のショーは、毎朝9:30から16:30までの間、1日6公演に渡り、オープニングムービーの上映後、草津節・草津湯もみ唄の踊りや湯もみが見られます。
観覧料は2025年4月現在で大人700円、館内は自由席、約20分の豪快な「湯もみと踊りショー」が楽しめます。
湯もみ体験の詳細
日曜日・月曜日は300円で湯もみ体験ができます。板を動かしてお湯をかき混ぜるのですが、お湯がすごく重くて、腰と腕がきついですという体験談からも、湯もみの大変さが伝わってきます。
SNSで話題の投稿と考察
現在、もののけ姫と草津温泉の湯もみについて、多くの興味深い投稿がSNSで話題になっています。
「草津の湯もみを初めて見たとき、もののけ姫のたたら場を思い出した。あの息を合わせた動きと歌声が重なって見えた」
引用:個人ブログより
「湯もみは私の中では、もののけ姫の「たたらば」のように、十数人、あるいはもっと多くの人で行われているのかと思っていましたが、ここのショーでは、四人だけで行われていました」
「もののけ姫の影響で草津温泉に行きたくなった人、意外と多いよね。あのシーンの迫力とか、みんなで力を合わせる感じが湯もみと似てる」
引用:Twitter投稿より
もののけ姫が与えた湯もみ文化への影響
『もののけ姫』が描いたたたら場は、確かにフィクションです。しかし、その背景には、日本の山間部で何百年にもわたり受け継がれてきた、本物の「たたら文化」が存在します。
文化の再発見
映画の影響により、多くの人が実際の草津温泉の湯もみ文化に興味を持つようになりました。フィクションが、忘れられかけた文化への入り口となりうるという価値は、非常に大きいと言えるでしょう。
観光への波及効果
「もののけ姫にも登場!?「湯もみ体験」もできる草津温泉の魅力」という形で、観光PR にも活用されるほど、映画と湯もみ文化の関連性が注目されています。
おさるの湯もみという新しい文化
草津温泉では、「熱い源泉を効能を薄めずに冷ます草津温泉の伝統の「湯もみ」。可愛いおさるたちがこの「湯もみ」に挑戦します」という新しいエンターテイメントも生まれています。
「会場の「おさ湯」にはおさるさんサイズの温泉が!ショーが始まると見習いおさると名人おさるが出てきました。最後は草津温泉ならではの湯もみも披露してくれました」
現代に受け継がれる伝統技術
草津温泉の源泉は約50度近いため、温度を適温に下げる必要性があります。でも折角効能のある源泉を、水で薄めてしまうのはもったいないですという考え方は、現代でも変わらず大切にされています。
技術の継承と発展
毎週土・日・祝日の11:30から14:00までは、湯もみガールズの指導で湯もみ体験ができるなど、伝統技術を観光客にも体験してもらう取り組みが続けられています。
まとめ:フィクションと現実の美しい交差
もののけ姫のたたら場での湯もみシーンは、厳密には製鉄のための送風作業であり、草津温泉の湯もみとは技術的に異なります。しかし、複数の人が息を合わせて大きな板を動かすという視覚的な類似性と、伝統技術への敬意という点で深い関連性があることが分かりました。
映画のたたら場が、史実とは異なる描写をされていることは明らかです。では、宮崎駿監督はなぜ、あのようなたたら場を描いたのでしょうか。それは、現代にも通じる普遍的なメッセージを込めるためだったのです。
もののけ姫の影響で草津温泉の湯もみ文化に興味を持った多くの人々が、実際に現地を訪れて伝統技術を体験しているという現象は、フィクションが現実の文化継承に果たす重要な役割を示しています。映画を通じて日本の伝統文化に触れ、それを実際に体験することで、私たちは過去と現在、そして未来をつなぐ大切な架け橋を築いているのです。