もののけ姫を見たことがある方なら、あの不気味な「人間食う」という猩々のセリフや、悪夢のようなタタリ神の姿に衝撃を受けた経験があるでしょう。特に子供の頃に見て、今でもトラウマになっているという人も少なくありません。一見すると美しい自然と神秘的な世界を描いたジブリ作品でありながら、なぜもののけ姫にはこれほどまでに恐ろしい要素が含まれているのでしょうか?
この記事では、もののけ姫に登場する「人間食う」というフレーズの真意から、作品全体に漂うホラー要素まで、宮崎駿監督が意図的に組み込んだ恐怖の演出とその深いメッセージについて徹底的に解説していきます。
もののけ姫の「人間食う」の正体とは
もののけ姫で「人間食う」というセリフで有名なのが猩々(しょうじょう)という生き物です。「おれたち、にんげん、くう」「人間を食べて人間の力がほしい」「人間やっつける力ほしい」といった独特な話し方で、多くの視聴者の記憶に強烈に残っています。
猩々(しょうじょう)の正体
猩々とは本来オランウータンの和名であり、作品中ではゴリラのような外見で描かれています。彼らは森の賢者と呼ばれる下位級の神で、人間によって破壊された森を取り戻すため、夜ごと崩された斜面に集まって木を植える活動をしています。
しかし、「人間食う」というセリフは、単純に人間を食べたいという意味ではありません。これは「人間を食べて知恵をつけ、人間を倒したい」「人間と同等の力を手に入れるために人間を食べる」という意味なのです。
「人間食う」に込められた深い意味
宮崎駿監督が猩々たちのセリフに込めた意味は、「自然を破壊する現代の人間たちに向けたメッセージ」であると考えられます。かつて住んでいた豊かな自然の森の住処を奪われ、人間を憎み、妬み、嫉妬してしまった結果、森の賢者ではなくなってしまった猩々は、人間を滅ぼすことを決意しました。
猩々のセリフ | 真の意味 | 象徴するもの |
---|---|---|
「人間食う」 | 人間を食べて力を得たい | 自然の復讐心 |
「人間の力もらう」 | 人間と同じ力を手に入れたい | 力への渇望 |
「人間やっつける力ほしい」 | 森を守るために人間と戦いたい | 自然保護の意志 |
タタリ神のホラー要素が持つ恐怖
もののけ姫の中で最も恐怖を誘う存在といえば、間違いなくタタリ神でしょう。子どもの頃トラウマになった人も多いタタリ神は、身体が粘土質の触手でびっしりと覆われ、土蜘蛛のような形をした化物です。触れるものすべてを死に至らしめ、傷つける者には死の呪いを植え付けます。
タタリ神の視覚的恐怖
タタリ神の姿は「まっくろくろすけが化けて出たような様相」で、特にクモ恐怖症には卒倒もの。呪いそのものであるだけに、その精神は憎しみと怒りによって塗りつぶされており、動くだけで足元の植物を枯らし、木々を瞬時に腐らせるなど、無差別に呪いと死をまき散らす厄災と化してしまっています。
心理的恐怖の演出
タタリ神の恐ろしさは外見だけではありません。「たった一頭から、土も人も腐るケガレが広がって共同体が滅びかねない」という状況は、現代のパンデミックを彷彿とさせる恐怖でもあります。
もののけ姫のトラウマシーンとその影響
子供に与えた衝撃
実際に6歳で初めてもののけ姫を見た人の証言では、「テレビに映った映像」を見た瞬間に「え!!!怖い!!なに!!やだやだ消して!!」と叫んで、その後約20年間もののけ姫を避け続けて生活したという例もあります。
多くの人が子供の頃の感想として「怖くてよく分からない」と感じており、特に以下の要素が恐怖の原因として挙げられています:
- タタリ神:絵面からしておどろおどろしくて怖い
- シシ神:何を考えているのか分からない雰囲気で怖い
- 戦闘シーン:首も腕もバンバン飛ぶ
- 死の描写:人がすごく死ぬ
現代社会への警鐘
心理学的な観点から見ると、タタリ神は「もともとは愛情深くて正義感の強いみんなの頼りになる者が、怒りと憎しみに心をとらわれたために変化した存在」として描かれています。これは現代社会の人間関係にも通じる普遍的な恐怖を表現していると言えるでしょう。
ホラー要素に隠された宮崎監督のメッセージ
環境破壊への警告
宮崎作品に登場する怪物は、『風の谷のナウシカ』の巨神兵も『千と千尋の神隠し』のカナシも、人間の負の側面を象徴するものでした。もののけ姫のタタリ神も、それらに連なるような存在として描かれています。豊かになるために森を切り開く人間への祟りであり、自然の怒りと憎しみを表す存在なのです。
生と死の境界線
宮崎駿監督は、もののけ姫という作品を通じて「生と死を分けている限り、この世から争いも憎しみも無くならない」ということを伝えているのではないかと考えられます。作品全体に漂う死の恐怖は、生きることの尊さを際立たせる重要な要素でもあります。
SNSや専門家の反応・評価
Twitter上では、もののけ姫のホラー要素について多くの議論が交わされています。
実家の庭に落ちてる小さい石を放りながら、もののけ姫に出てくる猩々(しょうじょう)の真似する遊び「おれたち、にんげん、くう」「人間を食べても人間の力は手に入らない」までがセット
引用:https://twitter.com/drmfsrsdsd/status/1665691273748582401
引用
このツイートは、猩々の印象的なセリフが多くの人の記憶に残っていることを示しています。声真似をしたくなるほど印象的でありながら、その奥深い意味についても多くの人が考察を続けているのです。
#ジブリの登場人物が全員ゴリラだったら 全員この顔。セリフは全て「人間食う」※もののけ姫 猩々(しょうじょう)より
引用:https://twitter.com/GlucoTPro/status/1298188068137357312
引用
ユーモラスな視点からも語られる猩々ですが、その印象的なビジュアルとセリフが現代でもミーム的に親しまれていることがわかります。
専門家による分析では、タタリ神から呪いを受けたアシタカの呪いを、シシ神は物語の最後に解いてくれています。次世代を担う存在のアシタカを生かしたもののけ姫のラストシーンは、人間たちの発展をただ怒るのではなく、それを経てもなお現代の私たちに生きてくれ、という前向きなメッセージを伝えてくれているように思います。という深い解釈も示されています。
現代における作品の意義
大人になってからの再評価
多くの人が大人になってから改めてもののけ姫を見ると、「キャラクターの狙いや背景が分かるようになると、俄然面白く感じるようになった」と感じています。特にエボシの裏設定や行動の意味、病に侵された人々が受けてきたであろう差別、売られてきた過去があるタタラ場の女性たちなど、複雑な社会背景が理解できるようになると、作品の深さが見えてくるのです。
ジブリパークでの表現
現在のジブリパークの「もののけの里」エリアには、「タタリ神のオブジェ」も設置されており、作品の登場キャラクター、タタリ神を模したオブジェとして親しまれています。近くにはエミシの村にある「物見やぐら」もあり、作品世界を体感できる場所となっています。
結論:恐怖を通じて伝える普遍的メッセージ
もののけ姫における「人間食う」というセリフやタタリ神のホラー要素は、単なる演出上の恐怖ではありません。宮崎駿監督は意図的にこれらの要素を組み込むことで、現代社会への警鐘を鳴らし、自然と人間の関係、生と死の意味、そして真の共生について深く考えさせようとしているのです。
子供の頃にトラウマになった人も、大人になってから見直すことで、その恐怖の向こうにある希望のメッセージを受け取ることができるでしょう。もののけ姫は、美しさと恐ろしさ、絶望と希望が表裏一体となった、まさに現代に生きる私たちへの重要なメッセージを含んだ傑作なのです。
現代においても環境問題や社会の分断が深刻化する中、もののけ姫のホラー要素は決して過去のものではなく、今なお私たちに問いかけ続ける現代的な意味を持っているのです。