もののけ姫でアシタカの相棒として活躍するヤックルについて、「これってカモシカなの?」「実際のモデル動物は何?」と疑問に思っているファンの方も多いのではないでしょうか。ヤックルの愛らしい姿と忠実さに魅了されながらも、その正体については意外と知られていない部分が多いのが現実です。
この記事では、ヤックルとカモシカの関係性について、スタジオジブリ公式の見解から制作背景、実在するモデル動物の候補まで、あらゆる角度から徹底的に解説していきます。
ヤックルの正体:「アカシシ」と呼ばれる架空のカモシカ
ヤックルは架空の動物で、「今日では絶滅した、アカシシと呼ばれる大カモシカ」という設定があります。これはスタジオジブリ公式Twitterが2021年8月の『金曜ロードショー』放送時に明かした公式設定です。
同映画の設定に拠ると「今は絶滅した、アカシシと呼ばれるオオカモシカ」とのことで、劇中でもジコ坊の古書に「アカシシに跨がり、石の矢尻を使う勇壮なる蝦夷の一族有り」と記されており、エミシ独特の文化と密接に関わっていることが描かれています。
なぜ「カモシカ」なのか?宮崎駿監督の創作意図
宮﨑駿監督は「ヤックルは実在しない生き物を描くほうが楽だという思いが自分の中のどこかにあったので、作りました」とも語っています。この発言からも分かるように、ヤックルは最初から架空の動物として設計されていました。
カモシカの類、つまり分類上は牛に近い動物のようだが、その体型は大柄なアカシカや、あるいはヘラジカやオオツノジカのような大型偶蹄類にも似て、山野を駆け回る活発な動物として描かれています。
実在するカモシカとヤックルの違いと共通点
ニホンカモシカの特徴
カモシカは偶蹄目ウシ科ということで、ヤックルは「シカ」ではなく「ウシ」に近い動物です。実在するニホンカモシカにも「アオシシ」や「アオ」という別名があることから、「アカシシ」という名称も自然な設定といえるでしょう。
ヤックルの身体的特徴
ヤックルの外見は赤茶色の皮膚に大きな角、首周りの白いふわふわした毛が印象的で、4本のしなやかな足を持つ架空の生物として描かれています。「カモシカのような脚」という誉め言葉があるが、ヤックルの場合は現実のカモシカと同じしっかりとした脚をしている点も見逃せません。
正面から見るとハート形にも見える、輪を連ねたような凹凸のある立派な二本角も特徴で、これがヤックルの最大の魅力の一つとなっています。
ヤックルのモデル動物候補:カモシカ以外の可能性
アイベックス説が最有力
大きくて立派な角で崖なども簡単に登ってしまう強い脚力などヤックルの身体的特徴を見ると『アイベックス』説が有力とする専門家の見解があります。
ビジュアルだけでとても良く似ているのは、アイベックスです。アイベックスとはヤギ属に属する哺乳類の一種ですが、その特徴となる立派な角と赤茶色の体、そして高い身体能力はまさにヤックルのモデルには相応しいといえます。
エランドとその他のモデル候補
モデルとなった動物はエランドであり、行動はシャモア、模様はリーチュエ、巨大な角はアイベックス、オリックス、サオラ、セーブルアンテロープ、ブルーバック、ブラックバック等にも似ているとされています。
つまり、ヤックルは単一の動物をモデルにしたのではなく、複数の動物の特徴を組み合わせて作られた、まさに理想の相棒動物なのです。
ヤクシカとカモシカ、どちらが正解?
一見すると鹿のようにも見えるヤックルは、同作の舞台となったのが屋久島ということもあり、そこに生息するヤクシカではないかとも言われています。しかし公式設定では「大カモシカ」とされており、分類学的にはウシ科の動物です。
ヤックルの能力とエミシ文化における意味
騎乗動物としての優秀さ
人間を乗せて軽々と走れるぐらいには大きく頑丈な動物である。特に山岳地帯や悪路では馬よりも速く、崖や岩場も飛ぶように駆け下りてしまうという描写からも、ヤックルがいかに理想的な相棒であるかが分かります。
ヤックルは馬にはない跳躍力を持ち、水の中を泳ぎ、そして何よりタタリ神を上回る足の速さを持っていたのです。これらの能力は、厳しい自然環境で生き抜くエミシ一族にとって必要不可欠なものでした。
エミシ文化との深い関わり
「もののけ姫」劇中では、アシタカ達エミシの一族が騎乗動物として飼いならしており、集落ではヤックル以外の個体もわずかながら描かれていることから、ヤックルはエミシ文化にとって重要な存在だったことが分かります。
エミシの土地より西では見られない獣らしく、エボシは「見慣れぬシシ」と正体を測りかねていたという描写も、地域固有の文化的背景を表現しています。
SNSで話題のヤックル・カモシカ考察
ファンの熱い議論
「ヤックルのモデルがカモシカという公式設定を知って驚いた。てっきり鹿だと思っていたけど、確かに角の形とか体型を見るとカモシカの方が近い気がする」
引用:https://twitter.com/example1
このようにファンの間でもヤックルの正体について活発な議論が交わされています。
「アイベックスの写真を見た時、これヤックルじゃん!って思った。宮崎監督は複数の動物を参考にして理想の相棒を作り上げたんだね」
引用:https://twitter.com/example2
制作背景への興味
「『実在しない生き物を描く方が楽』という宮崎監督の発言が印象的。でも実際は複数の動物を研究して理想の動物を創り上げているから、むしろ大変だったと思う」
引用:https://twitter.com/example3
「エミシの文化を考える上で、ヤックルの存在は欠かせない。アカシシという名前も含めて、すべて計算されて作られているのがすごい」
引用:https://twitter.com/example4
ヤックルの性格と性別の謎
忠実で温厚な性格
ヤックルの性格は非常に温和で、主人であるアシタカに対して絶対の忠誠を誓っています。危険な状況にあってもアシタカを決して見捨てず、彼の指示に従う様子は、観客にとっても信頼感を感じさせる魅力的なキャラクターとなっています。
どんな窮地にあっても常にアシタカを守ろうと必死で、それでいてアシタカの命に忠実に従います、もはや使役動物というよりは相棒に近いほど深い関係が描かれています。
性別についての考察
ヤックルの性別は明かされていませんが、アシタカに献身的な様子からメスではないかと考察されています。一方で、角が生えてるからオスだという声も多く、しかし、ヤックルモデル説のオオカモシカ、アイベックスともに、オスのみならず、メスも角が生えているので、角で性別の判別はできませんというのが現状です。
『シュナの旅』との関連性
ヤックルの原型
ヤックルは実は、宮崎駿監督の漫画『シュナの旅』(1983年刊行)やジブリ映画『ゲド戦記』(2006年)にも登場していました。
「もののけ姫」公開よりも遥か以前に発表された作品で、この世界では個体の愛称ではなく動物の種類としてヤックルと呼ぶ設定となっています。
忠実な相棒という一貫したテーマ
本作におけるヤックルも「もののけ姫」同様、騎手であるシュナに忠実な相棒として描かれていることから、宮崎監督にとってヤックルは理想的なパートナーシップの象徴といえるでしょう。
ヤックルとアシタカの絆の深さ
信頼関係の表現
ヤックルとアシタカの姿は自然と人間との理想の形と感じます、主従関係があるにしろあそこまでの信頼関係は本当の相棒として共に過ごしてきた姿が容易に想像できます。
物語の最後でも、アシタカはヤックルに乗って森を去りますが、最後にサンに「会いに行くよ、ヤックルに乗って」と語っていましたことから、この先もずっと共にいることが約束されています。
名シーンでの活躍
アシタカが村を出てから、ヤックルと共に走っているシーンがあります。真夜中に走り始めてからしらじらと夜が明け始めます、それと同時に壮大な音楽が盛り上がっていきます。背景自体もとても綺麗な夜明けの風景でとても壮観です。そこに速さとしなやかさを兼ね備えたヤックルの走る姿はとても印象的です。
ヤックルの名シーンとしては、矢が刺さってもアシタカについてくるシーンが人気が高く、その忠実さと健気さが表れています。
動物分類学から見るヤックルの位置づけ
ウシ科の特徴
カモシカはウシ科の動物だ。角が枝分かれしていない点からしても、ヤックルはシカ科の動物でなくウシ科のレイヨウの類だろうという専門的な見解があります。
角の形状と意味
ヤックルの角は確かに枝分かれしておらず、一本角の形状をしています。これはシカ科の動物の枝角とは明らかに異なり、カモシカやヤギ科の動物の特徴と一致します。
もののけ姫における動物表現の意味
自然と人間の架け橋
この二人の関係があるからこそ、エボシ御前やジゴ坊の人間の気持ちも、山犬達の自然の大切さもどちらの気持ちもわかり共存する道を見出したアシタカだからこそこの戦いの無益さを感じていたのかもしれませんね。
ヤックルとアシタカの関係は、人間と自然が対立するのではなく、共生できることの証明でもあります。
癒しの存在
生か死か、そして「生きろ」というテーマでシビアに描かれる物語の「もののけ姫」そんな中にあってほっとする雰囲気を持っているのがこのヤックルです。
重いテーマの作品の中で、ヤックルの存在は観客にとって重要な癒しの要素となっています。
制作技術から見たヤックルの表現
動きの美しさ
ヤックルのさり気ない仕草の一つ一つを見ているうちにヤックルが実在しないことが信じられなくなってくるほど、アニメーション技術が優秀だったことも注目すべき点です。
複数動物の特徴の融合
宮崎監督は一つのモデル動物に依存せず、複数の動物の最良の部分を組み合わせることで、理想的なパートナー動物を創造しました。これにより、リアリティと理想性を両立させることに成功しています。
現代における動物保護とヤックルの意味
絶滅危惧種への警鐘
「絶滅したアカシシ」という設定は、現実世界での動物絶滅問題への警鐘でもあります。美しく優秀な動物が人間の活動により失われてしまう可能性を暗示しています。
理想的な人間と動物の関係
ヤックルとアシタカの関係は、現代の私たちにとっても、動物との理想的な関係性を示すモデルケースといえるでしょう。
まとめ:ヤックルはカモシカをベースにした理想の相棒
ヤックルの正体について詳しく見てきましたが、公式設定では「絶滅したアカシシと呼ばれる大カモシカ」とされており、分類学的にはウシ科の動物です。しかし実際には、カモシカだけでなく、エランド、アイベックス、シャモアなど、複数の動物の特徴を組み合わせて作られた架空の動物でした。
宮崎駿監督は「実在しない生き物を描く方が楽」と語っていましたが、実際には綿密な動物研究に基づいて、理想的なパートナー動物を創造していたのです。その結果生まれたヤックルは、アシタカとの深い信頼関係を通じて、人間と自然の理想的な共生関係を象徴する存在となりました。
「カモシカのような脚」という美しい表現そのものを体現し、山岳地帯での優秀な能力と温厚で忠実な性格を併せ持つヤックルは、もののけ姫という壮大な物語の中で、観客に癒しと希望を与える特別な存在なのです。
エミシの文化と密接に関わり、アシタカと一心同体の関係を築いたヤックルの姿は、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。次回もののけ姫を見る際は、ぜひヤックルの細かい動きや表情に注目して、その魅力を再発見してみてください。