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もののけ姫とナウシカの共通点とは?宮崎駿の環境思想とジブリ比較を徹底解説!

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もののけ姫とナウシカの共通点とは?宮崎駿の環境思想とジブリ比較を徹底解説!

もののけ姫を愛するファンの皆さんなら、きっと一度は「この作品、ナウシカと似てない?」と感じたことがあるでしょう。実際、多くの人がこの2作品に共通する何かを感じ取っています。単なる偶然の一致なのか、それとも宮崎駿監督の深い意図があるのか?今回は、もののけ姫とナウシカの関係性を、宮崎駿の環境思想と併せて徹底的に解明していきます。

もののけ姫とナウシカが似ている理由とは?

宮崎駿が描く「自然と人間の対立」という共通テーマ

「ナウシカ」と「もののけ姫」は環境汚染や自然破壊がメッセージの作品だと思われます。また、人間と自然の共存も含まれるのではないでしょうかと指摘されているように、両作品の根底には同じテーマが流れています。

ナウシカの世界設定:

– 巨大産業文明が滅びてから1000年後の世界

– 「腐海」と呼ばれる猛毒を放つ細菌の森に脅かされています

– 自然(腐海・王蟲)と人間(各国の軍隊)の対立構造

もののけ姫の世界設定:

– 室町時代の日本

– 古き神々(シシ神・山犬)と人間(タタラ場・侍)の対立構造

– 古い時代の日本もまた、腐海に飲み込まれ、複数の国の軍が進攻し合うナウシカの世界のように、民衆たちにとって生きづらいものだった

主人公の役割の違いから見える監督の成長

『風の谷のナウシカ』において「王蟲」は”自然の象徴”そのものであり、ナウシカは彼らと手を取り合うことで、「自然との共存を成し遂げた姿」を私たちに提示しました。しかし、『もののけ姫』における「山犬族」は、自然に生かされている1つの存在にすぎません

この違いこそが、宮崎駿監督の思想的発展を示しています。ナウシカでは「理想的な解決」を提示したのに対し、もののけ姫ではより現実的で複雑な問題として描かれているのです。

宮崎駿の環境思想の核心

アニミズムという根底思想

宮崎は「アニミズムはぼく、好きなんですよ」と明言しているこのアニミズムこそが、両作品に共通する世界観の土台となっています。

宮崎のアニミズム観の特徴:

  • 森の中には「何かがいる」という日常経験に根ざす感覚
  • 薄暗いところに置かれたモノが信仰の対象になる日本古来の神道的世界観
  • 「こわい」という畏敬の念を持つことの重要性
  • 神聖な森と人々の心はつながるのだという考え

照葉樹林文化論との関係

宮崎駿監督は、もののけ姫をつくるにあたり、中尾佐助さんの照葉樹林文化論という考え方に影響を受けています

照葉樹林文化論とは:

地理的範囲 中国雲南省を中心とする東亜半月弧から日本西南部まで
共通文化要素 農耕・モチ・納豆・焼畑・茶・絹・漆など
宮崎への影響 日本文化の起源をアジア全体の文脈で捉える視点
作品への反映 アシタカの蝦夷の設定や森の神々の描写

この人間と自然の関係を大きな枠組みで捉えた考え方に出会い、宮崎監督は感動しましたこの感動が、もののけ姫の世界観に深く反映されているのです。

両作品に見る宮崎駿の「懲罰から肯定へ」の変化

ナウシカで描けなかった「怒り」

この時、宮崎駿は何よりもとにかく「王蟲を一匹も殺したくない」と強く思っていたという。それはつまり「怒り」を売ることだけは許せなかったということなのだろう

宮崎監督は映画版ナウシカにおいて、「懲罰」として振り下ろしきることもまた出来なかった。通俗文化の担い手としての「自覚」からだと言うが、それはまるで葛藤の末の決断を「言い訳」しているようにさえ見える状況でした。

もののけ姫で達成された「肯定」の姿勢

『もののけ姫』では「懲罰」から「肯定」へと宮崎駿の考え方がシフトしている。人間には汚い面もあれば良い面もある。サンは「人間を許すことはできない」と言い、アシタカは「それでもいい」と答える

この変化こそが、両作品の最も重要な違いです。ナウシカでは「宿題が残った」結末となったのに対し、人間は愚かで、どうしようもない。だが、神からの視点ではなく、自分自身の問題として引き受け、呪いを背負いながら、それでも生きていくのだという態度をもののけ姫で表現したのです。

具体的な場面比較から見える共通点

主人公と自然との交感シーン

ナウシカの場合:

– 王蟲の心を読み取る能力

– 腐海の植物との対話

– 風を読む技術

アシタカの場合:

– ヤックルとの心の交流

– シシ神の森での体験

– 森の精霊たちとの接触

どちらも「生命の持つ魂の同質性に気づく能力」を、アニミズムを土台としたシャーマニックな能力として描かれています。

「生きろ」というメッセージ

このテーマは、もののけ姫では、明示的には、アシタカからサンへの「生きろ!お前は美しい」という台詞として現れています

両作品に共通するのは、凶暴で愚かで、苦しみから逃れられない、そして滅びが必然であることが前提での『生きろ(生きねば)』というメッセージです。

SNSでの反響と評価

以下は、両作品の関係性について語られたSNS投稿の一部です:

この映画を初めて見た時に、非常にナウシカと似てると思った。蟲が古き神々であり、ナウシカがアシタカ。宮崎駿の原点回帰というか、彼が人生を賭けて伝えたいテーマなんだろうな。

「風の谷のナウシカ」と「もののけ姫」が似ているといった感想をよく耳にします。時代背景や似ているシーンそしてキャラ達。そう言われてみると、なんだか似ているところもあるような気がします。

これらの声からも分かるように、多くの観客が両作品の類似性を感覚的に捉えています。

宮崎駿の環境思想の現代的意義

矛盾を抱えた環境保護観

宮崎自身は頑ななほど環境主義者とみなされることを嫌う。エコロジストだと思われたくないからタバコをぷかぷか吸うのだと言い、「自然を守る」というスローガンは嫌になると語る

この矛盾した姿勢こそが、宮崎駿の環境思想の特徴です。単純な環境保護ではなく、人間の複雑さを含めた現実的な共生を模索しているのです。

人工と自然の境界を超えた思想

宮崎は人の関与の有無によって自然の価値は変わらないとするこの考え方は、現代の環境問題にも重要な示唆を与えます。

宮崎の自然観の特徴:

– 「人が植えた木だから自然の木じゃない、原生林にならないから大事にしてもしょうがないんだと言ってるよりも、人がつくった森でも、森としてちゃんと機能して、想像もつかない複雑な生態系になったりするんだと思うほうが、僕の気持ちに合います」

– 人間を超えた自然界の生命の営みへの信頼

– もしかしたら、この地球の中では、人間同士の戦争や原子力すらも、ありふれた自然の一部なのかもしれないという視点

両作品のつながりと監督の意図

ナウシカからもののけ姫への発展

「風の谷のナウシカ」では一歩踏み出せなかった「自然と人間」というテーマを掘り下げて結論のない問題をそのまま作品にすることでした。もののけ姫では宮崎駿監督いわく、エンターテイメント作品には不向きとされる現代の厳しい課題が詰め込まれているといいます

時間軸の設定に込められた意味

『もののけ姫』は私たちの”過去”、『風の谷のナウシカ』は私たちの”未来”を描いた作品と言われています。過去の世界から何を学び、未来の世界に何を残していくのか

この時間軸の設定により、宮崎監督は人類の歴史全体を通じた環境問題を描いているのです。

アシタカの選択に込められた監督の答え

サンとの別れの時、アシタカは森には行かずタタラ場で暮らすことを選択します。その上で、森で暮らすサンと「共に生きよう」と誓うのです。これは、”人間”と”自然”の間に自分が立ち、この先の両者の関係を繋いでいくという覚悟の現れでもあります

宮崎監督はインタビューで、「彼らはずっと良い関係を続けていくだろうと思います。」「それから、サンが生きていくために、アシタカはいろいろな努力をするだろうと思います。同時に、タタラ場の人々が生きていくためにも、大変な努力を払うだろうと。」と語っています。

この「努力」こそが、宮崎駿が考える現代人への答えなのです。

現代に響く両作品のメッセージ

微生物レベルでの自然理解

児童文化研究者の村瀬学は、宮崎アニメの独創は、アニメーションの世界を、菌類や微生物の世界とじかに重ね合わせたことある、と述べている

腐海は、単なる死や毒の世界ではない。蟲や木々や菌たちは、腐海の中でいきいきと生きている。腐海の中で新しい進化を遂げながら

この視点は、現代の環境問題を考える上で極めて重要です。表面的な「汚染」や「破壊」だけでなく、生態系全体の複雑な営みを理解することの重要性を示しています。

SDGsとの関連性

この世界の構図は、グローバル化が進む現代こそ、経済発展と環境保護の両立が必要になっている。SDGS(持続可能な開発目標)を実現させるためには、まず私達一人一人の社会全体の意識改革が必要ではないか

まとめ:もののけ姫とナウシカに込められた普遍的メッセージ

この2つの作品にはナウシカでは表現出来なかった思いを、もののけ姫で吐き出したという知られざるつながりがありました

もののけ姫とナウシカは、単なる似た作品ではありません。宮崎駿監督の環境思想の発展過程を示す、密接に関連した作品群なのです。

両作品が現代に投げかける問い:

1. 人間と自然の真の共存は可能なのか?

2. 環境破壊を続ける人間をどう受け入れるか?

3. アニミズム的世界観の現代的意義とは?

4. 「生きる」ことの意味を問い直す必要性

「自然との共存を成し遂げるためにはどうすればいいのか?」この作品は『風の谷のナウシカ』と同じテーマを描きながらも、最後に私たちに大きな”宿題”を残しているのです

この「宿題」こそが、現代を生きる私たちが向き合うべき課題です。宮崎駿は両作品を通じて、環境問題の単純な解決策ではなく、複雑な現実と向き合い続ける姿勢の重要性を示しているのです。

アシタカが示した「それでも生きろ」というメッセージは、環境問題に対する絶望ではなく、希望への道筋を示しています。完璧な解決策がなくても、一人一人が自分の立場で「努力」を続けること。それが、もののけ姫とナウシカが現代に投げかける、最も重要なメッセージなのです。

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