もののけ姫のエンディング曲の魅力に迫る
「もののけ姫のエンディング曲が頭から離れない」「あの美しい歌声の正体が知りたい」そんな思いを抱いたことはありませんか?1997年公開のジブリ映画『もののけ姫』の主題歌は、宮崎駿が作詞、久石譲が作曲・編曲を手がけ、米良美一が歌唱した名曲として、今なお多くの人々の心を捉え続けています。
この記事では、もののけ姫のエンディング曲について、米良美一の歌声の秘密から歌詞の深い意味まで、あらゆる角度から詳しく解説していきます。映画を観たことがある方も、これから観る方も、きっと新しい発見があるはずです。
もののけ姫のエンディング曲の基本情報
『もののけ姫』は、米良美一のデビュー・シングルとして1997年6月25日にリリースされ、最高位は13位ながら、40万枚以上を売り上げている楽曲です。2004年に12cmCDで再発売されているという事実からも、その人気の高さがうかがえます。
項目 | 詳細 |
---|---|
楽曲名 | もののけ姫 |
作詞 | 宮崎駿 |
作曲・編曲 | 久石譲 |
歌唱 | 米良美一 |
発売日 | 1997年6月25日 |
最高位 | 13位 |
売上枚数 | 40万枚以上 |
米良美一の歌声の秘密:カウンターテナーという声種
カウンターテナーとは何か
米良美一は、世界的にも評価されているカウンターテナー歌手として知られ、スタジオジブリの劇場アニメ映画『もののけ姫』のテーマ曲に抜擢され、その類まれな歌唱力から世界的に知られるようになったアーティストです。
カウンターテナーとは、西洋音楽における成人男性歌手のパートの一つで、女声に相当する高音域を歌う声種です。変声を過ぎた男性が裏声(ファルセット)や頭声を使って、女声パート(アルト、メゾソプラノ、ソプラノ)あるいは女声に相当する音域を歌うことを指すのが特徴です。
米良美一の歌唱技術の特徴
宮崎県西都市出身で、2万人にひとり程度の割合で発症する難病、先天性骨形成不全症を持ち生まれた米良美一は、洗足学園音楽大学音楽学部卒業後、アムステルダム音楽院にオランダ政府給費留学という経歴を持つ本格的な声楽家です。
映画『もののけ姫』主題歌の大ヒットで、当時日本ではまだほとんど知られていなかった”カウンターテナー”という声種を一気にメジャーなものにした存在として、日本の音楽界に大きな影響を与えました。
米良美一の音域は最低音mid1Gから最高音hiGまでの2オクターブで、地声のキーが高いので最低音が高めで、最高音は男性としてはかなり高いという特徴があります。
もののけ姫の楽曲における歌唱の特徴
興味深いことに、「もののけ姫」の楽曲は全編に渡りファルセットで構成されており、最高音もhiD#とそこまで高くなく、音域は1オクターブです。これぐらいなら素人の男性でも頑張れば出せるレベルだが、米良美一さんほどの声の太さやビブラートなどの技巧で歌唱することは素人では出来ないというのが、プロとしての技術の差を示しています。
宮崎駿が紡いだ歌詞の深い意味
歌詞に込められたアシタカとサンの関係性
この楽曲は、アシタカからサンへの想いを綴った歌だといわれている楽曲として位置づけられています。歌詞の解釈については、研究者や評論家による様々な考察が行われています。
冒頭の「はりつめた弓の ふるえる弦よ」のフレーズから、矢を射るために弦を力いっぱい引いている様子が窺えるが、矢を放つところまで描かれていないことに注目すると「ふるえる弦」はアシタカの葛藤を比喩していると解釈できるという深い分析があります。
「おまえ」と「そなた」の謎
歌詞には特徴的な呼称が登場します。宮崎によると歌詞中の「おまえ」及び「そなた」は両方ともアシタカによるサンに対する呼称とのことだが、同一人物(サン)に対する特定人(アシタカ)による呼称が複数あることはやや不自然であるという指摘もあり、この部分は多くの議論を呼んでいます。
サンの横顔を「とぎすまされた刃の美しいそのきっさき」に似ていると表現している点が興味深く、研ぎ澄ました刃の切っ先は美しく輝く一方で、軽く触れただけで傷がつくほど切れ味が鋭くなっているという比喩は、サンの内面の美しさと同時に、その鋭さを表現しています。
歌詞が語る「もののけ達だけ」の意味
「悲しみと怒りに ひそむ まことの心を知るは 森の精 もののけ達だけ もののけ達だけ」という部分では、どんなに相手の心を理解したいと願っても、分かち合えない悲しみや怒りは必ずあり、その奥にある「まことの心」を知っているのは「もののけ達だけ」と歌われています。
この部分は、全てを理解し合う必要はなく、受け入れたり反発し合ったりしながら生きていくことこそ人間の在り方だと教えてくれているメッセージとして受け取られています。
久石譲の作曲技術と音楽的特徴
映画音楽としての完成度
久石譲つくり出す音楽は『もののけ姫』の世界観を見事に表現し、そこに米良美一の高く澄んだカウンターテナーが合わさると、どこか人間離れした空気感があるという評価を受けています。
楽曲の構成は非常にシンプルでありながら、その中に映画の壮大なテーマが込められています。この曲の2番に歌詞がないのは、ふさわしい言葉が浮かばなかったからだそうという事実も、制作者たちのこだわりを示しています。
音楽的な構成要素
楽曲は主に以下の要素で構成されています:
- 導入部:静かで神秘的な音楽から始まる
- 主旋律:米良美一のカウンターテナーによる歌唱
- 間奏:オーケストラによる壮大な演奏
- エンディング:余韻を残す美しい終結
映画との関係性と文化的影響
映画「もののけ姫」との一体性
『もののけ姫』は宮崎駿が構想16年、制作に3年もの年月をかけた超大作で、映画のキャッチコピーは「生きろ。」という非常にシンプルでありながら深いメッセージを持つ作品です。
宮崎駿監督も『もののけ姫』の”狙い”について、「世界全体の問題を解決しようというのではない。荒ぶる神々と人間との戦いにハッピーエンドはあり得ないからだ。しかし、憎悪と殺戮の最中にあっても、生きるに値することはある。素晴らしい出会いや美しいものは存在し得る」と語っています。
日本の音楽文化への影響
米良美一は、カウンターテナー歌手という職業を日本に知れ渡らせた最も有名な存在として、日本の音楽界に大きな影響を与えました。
この楽曲は、単なる映画の主題歌を超えて、日本人に新しい音楽体験を提供し、第2次世界大戦後、アルフレッド・デラーの登場によって再びカウンターテナーは復活したという世界的な流れの中で、日本におけるカウンターテナーの普及に大きな役割を果たしました。
SNSや専門家による評価と反響
多くの音楽評論家や専門家、そしてファンたちがこの楽曲について言及しています。
「透きとおる歌声に誰もが『本当に男性の声?』と驚いた。ミステリアスで、どこかノスタルジックなファンタジーの世界へようこそ。」
引用:レコチョク 楽曲解説
「米良美一『もののけ姫』歌詞の意味を考察!生きることの美しさに心が震える」
引用:UtaTen記事タイトル
「いい歌ですね! しょうおんかいのときにきれいな声を出せるようにこの曲でやらせてもらってます! 本当にありがとうございます!米良美一さん!」
引用:UtaTenユーザーコメント
カバー版とリメイクの展開
様々なアーティストによるカバー
タンポポ児童合唱団、栗コーダーカルテット、速水けんたろう、遠藤正明、DAISHI DANCEなど、多くのアーティストがこの楽曲をカバーしており、その普遍的な魅力を物語っています。
現代版アレンジ
2017年12月15日には、DJ、作曲家、編曲家であるTeddyLoidとのコラボによる、「もののけ姫 2018 feat. 米良美一」が配信開始され、現代的なアレンジで新しい世代にも親しまれています。
制作背景とエピソード
宮崎駿の作詞プロセス
宮崎駿自身が作詞を手がけたこの楽曲には、映画の世界観と完全に一致したメッセージが込められています。続く歌詞がないことで言葉にできない複雑な気持ちや人の儚さがより浮き彫りになっているという解釈もあり、制作者の意図が深く考えられていることが分かります。
久石譲の音楽的挑戦
久石譲は、この楽曲において従来のジブリ音楽とは異なるアプローチを取りました。カウンターテナーという特殊な声種を活かした楽曲構成は、彼の音楽的挑戦の一つと言えるでしょう。
米良美一の起用経緯
1996年に日本歌曲のアルバムを発売し、これを聴いた宮崎駿が、アニメ『もののけ姫』の主題歌へ起用し、広く日本中に知られるようになり、カウンターテノールの存在を一般に知らしめたという経緯があります。
楽曲の技術的分析
音域と歌唱技術
最低音mid1G、最高音hiG、音域2オクターブという米良美一の音域は、この楽曲においても十分に活かされています。男性の歌唱力向上の練習曲としても「もののけ姫」はよく使われ、ファルセットを鍛えることは歌唱力の向上に役立つとされています。
楽曲構成の特徴
楽曲は以下の特徴を持ちます:
- Aメロ:静かで内省的な歌詞
- Bメロ:徐々に盛り上がりを見せる展開
- サビ:「もののけ達だけ」の印象的なフレーズ
- 間奏:オーケストラによる壮大な演奏
- エンディング:余韻を残す美しい終結
現代におけるもののけ姫エンディング曲の意義
環境問題への関連性
宮崎駿監督は、もののけ姫という作品を通じて「生と死を分けている限り、この世から争いも憎しみも無くならない」ということを伝えているのではないかという考察があります。現代の環境問題を考える上でも、この楽曲のメッセージは重要な意味を持ち続けています。
多文化理解への貢献
『もののけ姫』では徹底的に”二項対立”を避けており、現実にある戦争も、得てしてそのようなもので、”どちらかが悪い”と単純に説明できるものではなく、それぞれが様々な価値観や事情を持っているというメッセージは、現代社会の多様性理解にも通じます。
別の視点から見る楽曲の魅力
癒し系音楽としての側面
透明な澄んだ声は、癒し系音楽として人気が高く、musiCare HEALING SERIES:究極のリラクセーション・ヴォイス 米良美一の世界といったアルバムも制作されるなど、リラクゼーション音楽としての側面も持っています。
クロスオーバー音楽の先駆け
バロック作品から日本歌曲、歌謡曲にポップスと幅広いジャンルのレパートリーを誇り、多彩な演奏活動を行なってきた米良美一の多様性は、この楽曲においても発揮されており、クラシックとポピュラー音楽の境界を超えた作品として評価されています。
まとめ:永遠に愛され続けるエンディング曲
もののけ姫のエンディング曲「もののけ姫」は、映画『もののけ姫』主題歌として映画のヒットとともに米良の声種であるカウンターテナーが日本で一般に知られるきっかけとなった記念すべき楽曲です。
宮崎駿の深い洞察に基づく歌詞、久石譲の繊細で壮大な作曲、そして米良美一の類まれな歌唱力が融合したこの楽曲は、単なる映画音楽の枠を超えて、日本の音楽文化に大きな影響を与え続けています。
曲を聴くだけで映画の名シーンが蘇る主題歌にふさわしい名曲として、この楽曲は今後も多くの人々の心に響き続けることでしょう。アシタカとサンの物語を通じて描かれた人間の複雑さと美しさ、そして「生きる」ことの意味を問いかけるメッセージは、時代を超えて私たちに大切なことを教えてくれる、真の傑作なのです。
「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない」「それでもいい。サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。共に生きよう。会いに行くよ、ヤックルに乗って」という映画の最後の会話と同様に、この楽曲もまた、完全な理解や和解ではなく、違いを受け入れながら共に生きていくことの美しさを歌い上げているのです。