「もののけ姫のモロの君について詳しく知りたい」「山犬の正体や背景を理解したい」と思っているあなた。もののけ姫を何度見ても、モロの君の複雑な感情や山犬一族の深い設定について、まだまだ知らないことがたくさんありませんか?
この記事を読めば、モロの君と山犬一族について、表面的な情報だけでは分からない奥深い真実と、宮崎駿監督が込めた深い意図まで完全に理解できます。
モロの君の正体と基本設定
モロの君はシシガミの森を守る神様で、劇中では「モロ」と呼ばれています。特徴は全身をおおう白い毛と、しっぽが2本あること。サンから「母さん」と呼ばれているため、メスと考えられます。巨大な体は5メートルほどと予想され、立ち上がったとき高さは大人の人間をはるかに上回るほどです。
モロは人間たちの罠を見破るなど高度な知能を持っており、人間やほかの動物と意思疎通ができます。
モロの君の年齢と寿命
モロの君は300歳の犬神で、真っ白な毛並みと二本の尻尾が特徴です。モロはかなりの高齢で死が近いことを悟っており、死を受け入れる諦めの境地に達しています。しかし死ぬ前に、宿敵であるエボシ御前に一矢を報いようとする希望を捨てていません。
性格と特徴
強そうな見た目に反して、性格は思慮深く穏やか。相手が間違っているとわかっていても、自分の意見を押し付けない広い心の持ち主です。森を奪う人間を嫌悪しつつも、見境なく人間を襲うようなことはしません。
この複雑な性格設定こそが、モロの君が単なる敵役でも守護者でもない、多面的なキャラクターとして描かれている理由です。
山犬のモデルとなった存在
ニホンオオカミとしてのモデル
もののけ姫の犬神一族は、ニホンオオカミがモデルになっています。そのため、もののけ姫の犬神一族は、ニホンオオカミがモデルになっています。
山犬は美しい白い毛並みで描かれ、そのモデルは日本にかつて生息していたニホンオオカミです。
三峰神社の「おいぬさま」
モロのモデルと言われているのは、埼玉県秩父市にある三峰神社で「おいぬさま」として崇められているニホンオオカミです。
ニホンオオカミを守護神とする三峰神社の境内には、狛犬の代わりにオオカミの像が置かれています。この神社でオオカミを崇拝するようになった由来は、神話にまで遡ります。
東征中のヤマトタケルが現在の三峯神社のある山に登って、イザナギとイザナミの国造りを偲んで創建したと伝えられる三峰神社。その地にヤマトタケルを導いたのが、オオカミだったそうです。
モロの君とサンの特別な関係
サンの生い立ち
モロの言葉によればサンは「森を侵した人間が、我が牙を逃れるために投げてよこした赤子」です。森に入ってモロに遭遇した人間がその巨大な体に恐れをなして、生贈として捧げた赤ん坊がサンだったと考えられます。
母親としてのモロ
サンを自分の娘として育ててきたたモロですが、サンが山犬でもなく人間でもない存在であることに苦悩している様子。アシタカに「サンは我が一族の娘、森と生き、森が死ぬときはともに亡びる」と断言するモロ。しかしサンには、「あの若者(アシタカ)と生きる道もあるのだが」と漏らすあたりに、彼女が抱えているジレンマが感じられました。
この複雑な親心こそが、モロの君の人間性(神性)を象徴する重要な要素なのです。
美輪明宏による圧巻の声優演技
キャスティングの秘話
モロの声優を務めたのは歌手、俳優、演出家、タレントなどとして活躍する美輪明宏です。最初モロのキャラの設定を知らなかった美輪は、モロを崇高な神様として演じていました。しかし宮崎駿監督から、前述したような脚本にはない裏設定を教えられると、すぐに柔らかみのある声の演技に変えたそうです。
監督の指導による変化
もののけ姫の制作段階において、宮崎駿監督は山犬のキャラクターを、「自然の側に寄り添う正義の存在だけにしたくない」と考えていました。自然は凶暴さや残忍さを持っていますが、同時に優しさも持っています。そのため、シシ神の森を守っている山犬一族は、そのような複雑で奥深さを持っている存在にしたかったそうです。
そんな監督の要望を受け、美輪明宏さんは慈悲深さや威厳さ、神聖さを持つモロの君を見事に演じきりました。
山犬の子供たちの設定と役割
モロの子の基本情報
人語を解する犬神モロの子。2体居る。共に名前は不明。彼らもまた人語を解する高い知能と精神性を有するが、若いのか荒々しく血気盛んな性格。
山犬役を渡辺哲が務めている。
性別と性格
モロの君には二頭の子供たちがいますよね。性別は、山犬の兄弟という設定からオスだということが推測されます。映画の中では子供たちの名前は呼ばれることがないため、名前は不明。
モロの子は多くをサンと共に行動し、モロの君と共に森を守ってきました。それによって人を殺めたこともありました。しかし、そんなモロの子にも心があり、サンやモロといった家族がいて思いやる気持ちがありました。また、最後まで森を守るという使命を果たそうとしていました。
モロの君の名言と深いメッセージ
「黙れ小僧!」の真意
モロがアシタカに対して放った、「黙れ小僧!お前にあの娘の不幸が癒せるのか?」という名言が挙げられます。このセリフは、人間であるサンを山犬一族として受け入れ、本当の兄弟として生きてきた絆や慈悲深い気持ちを強く表現しています。
最期の執念
また、モロの君の首だけでも動いた理由についても山犬であるが故の本能と、森を壊した人間への恨みが大きく、首だけになっても動いていたのだと解釈されます。
SNSで話題となるモロの君の魅力
近年、SNSでもモロの君への注目が高まっています。特に印象的な投稿をいくつか紹介します:
復活したシシ神の森でモロ一族は今も生きています🐺 ハッピーエンドな #もののけ姫
引用:https://maidonanews.jp/article/14965513
この投稿は、実際の白いシェパード犬たちが森を駆け回る様子を「モロ一族の末裔」として紹介したもので、多くのファンから絶賛の声が寄せられました。
もののけ姫のモロの君が頭に浮かんだ
引用:https://ghibli-lab.com/moronokimi-gender/
このような投稿からも、モロの君がいかに多くの人の心に深い印象を残しているかが分かります。
モロの子供「コイツは食べていい?」 サン「おけ」
引用:https://ghibli-lab.com/moronokimi-gender/
山犬の子供たちの愛らしい一面を切り取った投稿も話題になっています。
隠された設定と裏話
モロと乙事主の恋愛関係
実は宮崎駿監督が語った裏設定では、「モロは100年ほど前、乙事主と恋愛関係にあった」と発言しています!
この設定により、美輪明宏さんのアフレコがOKになったという制作秘話もあります。
モロの子供の父親について
なお、モロの君に子供が居るなら父親たる夫(オスの犬神)も居そうなものだが、公式からはそのような存在についての情報の公表は一切なく、真実は不明である。ファンの間では「夫は既に亡く、サンの所持する犬牙の短剣や毛皮のマントがその遺品にあたる」とする説や、「そもそもモロの君に夫はおらず、子供たちもサン同様拾って育てた」など、夫が居るか居ないかさえもはっきりしていないが故に様々な説が唱えられた。
古代神殿の秘密とモロの正体
評論家の岡田斗司夫氏による深い考察によると、モロが住む場所には重要な秘密があります。
モロのねぐらは、全てが岩で出来ています。それも、床、天井、壁が、それぞれ巨大な1枚岩で出来ていて、床も天井も水平なんですね。つまり、どういうことかというと、モロのねぐらは古代人の神殿なんですよ。古代の巨石文明の時代、日本には”本当の神様”が住んでいたんです。モロ達のような一族というのは、巨大な獣であり、おまけに人の言葉を話すことが出来たので、古代人達から崇められていた。
なぜかというと、モロは”犬の神様”だからです。犬というのは、人類にとって、一番古く、一番忠実な友なんですよ。そんな犬の神様だから、もう誰も訪れなくなった神殿に、今もなお、誰かが帰ってくるのを待ちながら、ずっと住み続けてくれているんです。
この解釈により、モロの人間に対する複雑な感情がより理解できます。
宮崎駿監督の環境メッセージ
絶滅への警鐘
『もののけ姫』の山犬について調べていると、宮崎駿監督がこの『もののけ姫』という作品を通して何を伝えたかったのかが少し垣間見える気がします。山犬のモデルが狼だとすれば、ニホンオオカミは現代ではすでに絶滅しているものであり、『もののけ姫』で描かれていることはまさに「既に絶滅しかかっている貴重な自然と動物」を迫害しにきた人間たちの図ではないでしょうか。
複雑な対立構造
もちろん、人間側にも色々事情はあります。でもモロやサン、山犬たちの側からすれば、人間たちは自分たちを追いやり、迫害する「悪」でしかありません。
モロの君の死と継承
最期の戦い
死因がわかる直接的な描写はありませんが、もともと寿命が残り僅かだったのだと考えられます。最後にサンを助けるために力を振り絞り、寿命をまっとうしたと考えるのが自然です。首だけになってエボシに襲いかかったのは、山犬としての最後の執念といえます。
山犬一族の未来
モロは愛情深くサンを育てたので本当の親子のような絆で結ばれています。モロの死後も、その意思は山犬の子供たちとサンに受け継がれていくのです。
海外での評価と反響
最近では海外でもモロの君への注目が集まっています。
そのタイトルは「スタジオジブリで最も印象的なキャラクターは、日本のドラァグクイーンが演じていた」というもの。『もののけ姫』の犬神、モロの君、美輪明宏のことである。公開から25年を経て、なぜかSNSで『もののけ姫』の舞台裏を描くドキュメンタリーが話題になり、オリジナル版の美輪明宏の演技が絶賛されている。
モロの笑い声を演じる美輪明宏の姿に感動するツイートには、7万以上の「いいね!」が付き、「ミヤザキのこんな笑顔は初めて見た」「信じられないほどマジカルな瞬間」など、興を抑えられない書き込みが相次いでいる。
まとめ
もののけ姫のモロの君と山犬一族は、単なるアニメのキャラクターを超えた深い存在です。ニホンオオカミをモデルとし、三峰神社の「おいぬさま」の信仰に根ざしたその姿は、失われた自然への鎮魂と、人間と自然の複雑な関係を象徴しています。
美輪明宏さんの卓越した声優演技により命を吹き込まれたモロの君は、300歳という長い生涯を通じて、森を守り続ける母なる神として、そして人間の子サンを愛情深く育てる優しい母親として、二面性を持つ存在として描かれています。
宮崎駿監督が込めた環境への警鐘、古代から続く人と自然の絆、そして愛情の深さといった普遍的なテーマが、モロの君というキャラクターを通じて見事に表現されているのです。
このように「もののけ姫」の山犬は、セリフと気高さを通じて深いメッセージを伝えており、改めて意識して観れば、より深く楽しめることでしょう。
モロの君の物語は、現代を生きる私たちにとって、自然との共生とは何かを考えさせる重要な示唆を与え続けています。その複雑で奥深い設定と表現の数々を理解することで、「もののけ姫」という作品の真の深さを味わうことができるのです。