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火垂るの墓の絵本は?原作野坂昭如から生まれた絵本の種類を完全解説!

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火垂るの墓の絵本は?原作野坂昭如から生まれた絵本の種類を完全解説!

「火垂るの墓の絵本」は、野坂昭如の名作小説を原作として、複数の出版社から異なる形態で刊行されています。原作小説の深い世界観を、視覚的に表現した絵本版は、年齢を問わず多くの読者に愛され続けており、戦争の記憶を次世代に伝える重要な役割を果たしています。

火垂るの墓の絵本版一覧:種類と特徴

火垂るの墓の絵本は、主要なものだけで3つの異なる版が存在しています。それぞれ異なる出版社から発売され、独自の特色を持っています。

絵本版 出版社 発売年 特徴 ページ数
アニメ絵本『火垂るの墓』 新潮社 1988年5月 田村隆一の詩を収録、近藤喜文・百瀬義行による絵 詳細不明
徳間アニメ絵本『火垂るの墓』 徳間書店 1988年8月 高畑勲監督による映画版をベース 112ページ
絵本『火垂るの墓』実写映画版 情報センター出版局 2008年 実写映画を基に編集・構成 詳細不明

新潮社版絵本:田村隆一の詩が織りなす世界

新潮社では公開に合わせ、田村隆一の詩を収録した『絵本 火垂るの墓』、『「火垂るの墓」メモリアルアルバム 節子』などを刊行されました。この新潮社版絵本の最大の特徴は、詩人・田村隆一による詩が収録されていることです。

田村隆一は戦後日本を代表する詩人の一人で、戦争体験を持つ詩人として野坂昭如とは深い共感があったと考えられます。絵:近藤喜文、百瀬義行。詩:田村隆一という記載からも分かるように、スタジオジブリの優秀なアニメーターである近藤喜文と百瀬義行が手がけた美しい絵に、田村隆一の詩情豊かな言葉が重なることで、原作の持つ鎮魂の想いがより深く表現されています。

この新潮社版の絵本は、アニメ映画の公開と同時期に刊行されたことで、映画の感動をそのまま紙面で味わえる貴重な作品となっています。新潮社は原作小説の出版社でもあることから、野坂昭如の意向が強く反映された絵本として位置づけることができるでしょう。

徳間書店版アニメ絵本:映画の世界観を完全再現

最も知名度が高いのが、徳間書店から出版された『徳間アニメ絵本5 火垂るの墓』です。アニメーション映画監督。1935年、三重県生まれ。作品にTVシリーズ「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」など、劇場用長編「火垂るの墓」を手がけた高畑勲監督による映画版を忠実に絵本化したこの作品は、112ページという大ボリュームで構成されています。

この徳間版絵本の特筆すべき点は、以下の通りです:

  • 映画の名場面を完全収録:アニメーションの美しいカットが絵本として再構成
  • AB変型判の大型サイズ:257×210×13mmで迫力ある画面構成
  • 充実したページ数:112ページという分量で物語を丁寧に描写
  • 子どもから大人まで:幅広い年齢層に対応した構成

昭和20年。日本は第二次世界大戦のまっただ中にあり、町や村は焼かれ、食べる物もなく、人々は辛い生活を強いられていました。戦争に巻きこまれ、幼くして死んでいった清太と節子の兄妹の姿を描き、直木賞を受賞した野坂昭如氏の小説を、哀しくも美しい映像でアニメーション化した感動作として紹介されている通り、戦争の悲惨さと兄妹の愛情を美しい絵で表現しています。

実写映画版絵本:リアルな戦争体験を伝える

2008年には、実写映画「火垂るの墓」に基づき、編集・構成された写真絵本も刊行されました。この版の特徴は、実写映画のスチール写真を使用することで、よりリアルな戦争体験を伝えている点にあります。

1945年6月、神戸は、アメリカ軍による大空襲を受けた。14才の清太は、4才の妹、節子をおぶって、爆弾が落ちてくる中を走って逃げたという冒頭の説明からも分かるように、実際の戦争の恐怖をより直接的に表現することで、戦争の記憶の風化を防ぐ役割を果たしています。

原作者野坂昭如の絵本への想い

野坂昭如自身は、絵本化について特別な想いを持っていました。燒跡に生きる可憐な兄妹の物語は、版を重ね、絵本になり、アニメイションになる。忘れたいといふみんなの欲求にもかかはらず、それは国民的説話となつたという作家・丸谷才一の評価からも分かるように、絵本化は作品の普遍性を高める重要な役割を果たしています。

野坂昭如が実際の戦争体験で体験した妹への贖罪の念が、絵本という形を通してより多くの人に伝わることで、戦争の記憶が次世代に継承されています。ぼくはせめて、小説「火垂るの墓」にでてくる兄ほどに、妹をかわいがってやればよかったと、今になって、その無残な骨と皮の死にざまを、くやむ気持が強く、小説中の清太に、その想いを託したのだという野坂の言葉は、絵本版においてもその精神が受け継がれています。

話題のSNS投稿:絵本版への反響

SNSやWeb上では、火垂るの墓の絵本版について多くの投稿が寄せられています。以下に代表的なものを紹介します:

火垂るの墓を知ったのは実はこの絵本からです。当時同級生に借りたことがきっかけでした。絵本でもだいぶトラウマになった記憶があります。

引用:紀伊國屋書店レビュー

この投稿は、絵本版が多くの人にとって火垂るの墓との最初の出会いであることを示しています。子どもの頃に絵本で出会った体験が大人になっても強烈な印象として残っていることが分かります。

映画は無理、と思っていたらこの本でもやられました。…ジブリパークには火垂るの墓コーナーあるのかしら…泣くな、きっと。娘さんが読み終わって「映画みる自信ない…」わかる~。

引用:紀伊國屋書店レビュー

この投稿からは、絵本版であっても映画版に匹敵する感動と衝撃を与えていることが読み取れます。親子での読み聞かせの際にも、大きな影響を与える作品であることが分かります。

夏休みに息子と甥っ子に映画「火垂るの墓」を観せて 自分なりな平和学習かなと思っていたら まさかの甥っ子(中1)が この原作で読書感想文を書きたいと言ってきたので即ポチ。

引用:Amazonレビュー

この投稿は、現代の教育現場において火垂るの墓が平和学習の教材として活用されていることを示しています。絵本版は、特に若い世代にとって戦争について考える入り口となっています。

アニメ映画「火乗るの墓」を絵本化したものです。 「いのち」の尊さを伝える絵本を親子で読むのもいいですね。

引用:中津川市立図書館

図書館からの推薦コメントは、絵本版が社会的に重要な意義を持つ作品として認識されていることを示しています。「いのち」の尊さという普遍的なテーマが、絵本という形で効果的に伝えられています。

「ホタルとんだ..ホタルとまった...」は餓死衰弱死寸前の妹のうわごとである.楽しかったお兄ちゃんとのおもいでを見ているのだ.”火垂るの墓”が暗示されている.

引用:Amazonレビュー

この深い考察は、絵本版においても原作の象徴的な表現が効果的に再現されていることを示しています。蛍のイメージが持つ意味の深さが、視覚的な絵本においてさらに強調されています。

絵本版が持つ教育的価値

火垂るの墓の絵本版は、単なる娯楽作品を超えた重要な教育的価値を持っています。特に以下の点で評価されています:

  1. 戦争の記憶の継承:実際の戦争体験者が少なくなる中で、戦争の悲惨さを次世代に伝える重要な媒体
  2. 平和教育のツール:学校や家庭での平和教育において活用される
  3. 命の尊さの理解:子どもたちに生命の大切さを伝える
  4. 家族愛の描写:兄妹の絆の美しさと強さを視覚的に表現
  5. 歴史学習の補助教材:昭和20年の日本の状況を理解する助け

「いのち」の尊さを伝える絵本を親子で読むのもいいですねという図書館の推薦にあるように、親子でのコミュニケーションツールとしても機能しています。

原作との違い:絵本独自の表現

絵本版は原作小説や映画版とは異なる独自の特徴を持っています。最も大きな違いは、視覚的な表現による情感の伝達です。

原作小説でその夜、布引の谷あいの螢、無数にとび立ち、一筋の流れとなり、三宮駅浜側の夏草のしげみに流れおち、くさむら一面無数の螢火にかざられたという、うち捨てられた節子の骨を、守るようにあやすようにあやすようにと描かれた美しい結末の場面も、絵本版では蛍の光が幻想的な絵として表現され、野坂昭如の持つ独特の文体美と視覚的な美しさが融合しています。

また、絵本版では子どもの読者を意識した編集が行われており、原作の持つ複雑な大人の事情や社会的背景よりも、兄妹の純粋な愛情と戦争の悲しさに焦点が当てられているのが特徴です。

火垂るの墓絵本の今後:継承される記憶

火垂るの墓の絵本版は、戦後80年近くが経過した現在でも、その価値を失うことはありません。やがては、作者が誰だつたのか、民族の記憶が薄れ、ただ説話だけが残るにちがひない。ちようど安寿と厨子王の話のやうにという丸谷才一の予言通り、火垂るの墓は日本の国民的説話として定着しつつあります。

絵本版の存在は、この国民的説話を次世代に伝える重要な役割を担っています。特に、デジタル化が進む現代において、紙の絵本が持つ触感や温かみは、戦争の記憶をより深く刻み込む効果を持っています。

現代の子どもたちにとって、戦争は遠い過去の出来事となりつつありますが、絵本版火垂るの墓は戦争の現実を身近に感じさせる貴重な媒体として機能し続けています。

まとめ

火垂るの墓の絵本版は、野坂昭如の原作小説の深い精神を受け継ぎながら、新潮社版、徳間書店版、実写映画版それぞれが独自の特色を持った貴重な作品群です。

田村隆一の詩が織り込まれた新潮社版、映画の美しさを完全再現した徳間書店版、リアルな戦争体験を伝える実写映画版-これら3つの絵本版は、異なるアプローチで火垂るの墓の世界観を表現し、幅広い読者層に戦争の記憶と平和の大切さを伝え続けています。

野坂昭如が妹への贖罪の念から生み出したこの物語は、絵本という形を通してより多くの人々の心に届き、戦争の悲惨さと命の尊さを次世代に継承する重要な役割を果たしています。現代においても色褪せることのないこの作品の価値は、絵本版によってさらに広く深く伝えられていくことでしょう。

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