崖の上のポニョを初めて観た時、「ポニョって一体何者なの?」「なぜフジモトは人間を嫌うの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。宮崎駿監督の作品には必ず深い設定が隠されており、崖の上のポニョも例外ではありません。今回は、映画では詳しく説明されなかった登場人物たちの正体について、徹底的に解明していきます。
ポニョの本当の正体:海と人間のハーフ
ポニョの正体は「海の女神と元人間の魔法使いのハーフ」です。母は海の女神(チョウチンアンコウ)、父は元人間なので、ポニョは「海と人間のハーフ」と言えます。
ポニョの本名は「ブリュンヒルデ」です。実はこの「ブリュンヒルデ」は、ワーグナーの『ワルキューレ』に由来しています。興味深いことに、ブリュンヒルデは北欧神話に登場する戦乙女ワルキューレの長女の名前で、その役割は「死者を黄泉に導く」ことだとされています。
項目 | 詳細 |
---|---|
本名 | ブリュンヒルデ |
愛称 | ポニョ(宗介が命名) |
父親 | フジモト(元人間の魔法使い) |
母親 | グランマンマーレ(海の女神・チョウチンアンコウ) |
正体 | 海と人間のハーフ |
能力 | 形態変化、魔法の使用 |
グランマンマーレは見た目や大きさを自在に変化させることができますが、ポニョもその才能を継いでいると考察できます。(だからこそ、半魚人や人間に姿を変えられたのです)
フジモトの正体と過去:ノーチラス号の元乗組員
フジモトの正体は「元人間の魔法使いで、かつてはノーチラス号の乗組員だった」人物です。実はフジモトは、『海底二万マイル』に登場するネモ船長のノーチラス号の乗組員だったというのです。
フジモトが人間を嫌う理由は、戦争を強く憎んでいたネモ船長と同じく、フジモトも戦争の愚かさを目の当たりにしてきたのでしょう。だからこそフジモトは人間をやめて、人間を「汚らわしい生き物」と呼ぶのかもしれません。
フジモトの年齢と活動期間
フジモトの年齢は相当なものです。フジモトが乗っていた「ノーチラス号」は1870年代を舞台にしている話なので、フジモトの年齢は100歳以上だと考えられます。
フジモトが、自分の船の中で海の生命のエキスを抽出しているシーンで、一番古い壺には「1871年」という年号が書いてあるんです。1907年前後から、魔法で海水を浄化・精製した「生命の水」の抽出を開始し、珊瑚の塔の内部にある井戸に貯蔵しているというのが公式設定です。
海の時代復活計画:カンブリア紀への回帰
フジモトの最終目的は「カンブリア紀のような海の時代を復活させること」でした。フジモトは「生命の水」の力を使ってカンブリア紀のような「海の時代」の再来を夢見ていたが、ポニョにより「生命の水」をすべて奪われてしまった。
具体的な計画内容は以下の通りです:
- 「生命の水」を使って、世界の海に「カンブリア紀にも比肩する生命のバクハツ」をもたらす
- 「いまわしい人間の時代」が終わり、「ふたたび、海の時代がはじまる」ことを企図
- 「海の力がDNAのラセンのすみずみまでしみわたる」効果がある
カンブリア紀とは、約5億4200万年前から約4億8830万年前までの時代で、この時期に動物の多様性が一気に増大した可能性があります。これをカンブリア爆発と呼ぶ時代です。
なぜ海の時代を復活させたかったのか
フジモトが海の時代復活を望んだ理由は、傲慢にも海洋を汚染し続ける……しかも屈辱的なことに、廃棄物や排泄物や放射能汚染水まで垂れ流す人類を放置するわけにはいかないという強い環境保護意識からでした。
グランマンマーレの正体:チョウチンアンコウの海の女神
グランマンマーレの正体は「チョウチンアンコウの海の女神」です。公式設定では、正体はチョウチンアンコウであり、他にも男がいるとされている。チョウチンアンコウの交尾はオスがメスに噛み付き、一体化するため、他の男はグランマンマーレに吸収されたか別に暮らしていると考えられる。
興味深いことに、グランマンマーレの女性の形をした部分というのは、この触手の先端部分なんですよ。この部分が女の人の形をしているんですけど、その奥には、超巨大な、大きさが1キロくらいあるグロテスクな深海生物の本体が存在しているというのが宮崎駿監督の設定です。
SNSやWEBで話題の投稿・考察
ポニョの正体について、多くのファンが独自の考察を展開しています。
ポニョ見る度にフジモトの生態?面白いなあ好きだなあってなる 水の中では水泡が無ければ息ができず、陸の上では海洋深層水を撒かないと歩けない 人間を捨てたクセに海の眷属にもなりきれない すき
この投稿は、フジモトの中途半端な存在に注目した鋭い観察です。人間を捨てたクセに海の眷属にもなりきれないという状況が、フジモトというキャラクターの複雑さを物語っています。
だから私の好きなジブリ男子はポニョのフジモトだって言ってるじゃないですか!!!!
引用:https://pre-cinema.com/2019/08/23/ponyo-fuzimoto-syoutai/
フジモトの人気の高さを表すコメントです。一見怪しげな外見ながら、娘思いの父親という一面が多くのファンの心を掴んでいます。
ポニョの意味がわかりません。あのストーリーで何をいいたかったのでしょうか?
引用:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1136460431
このような疑問を持つ方も多いですが、登場人物の正体を理解することで物語の深層が見えてきます。ポニョは単純な子ども向け映画ではなく、環境問題や生命の循環を扱った深遠な作品なのです。
彼はポニョの曲を作曲するにあたって、「死後の世界、輪廻、魂の不滅など哲学的なテーマを投げかけている」とインタビューに答えていました。
久石譲氏のこの発言は、ポニョが単なる魚の子ではなく、死後の世界、輪廻、魂の不滅など哲学的なテーマを投げかけている存在であることを示しています。
別の視点から見た正体の真相
これまでの情報を整理すると、崖の上のポニョの登場人物たちは、それぞれが複層的な意味を持つ存在だということが分かります。
宮崎駿監督の意図
宮崎駿監督はフジモトについて「日本のお父さんの非常に大きな部分を象徴しているようなキャラクター」と記者会見で語ったことがあります。つまり、フジモトは単なる魔法使いではなく、人類の将来とか地球環境とか、いろんなことを悩みながら、ほんとに無力なんですよね。娘ひとりどうすることもできないでオタオタしてるっていうねという現代の父親像を投影したキャラクターなのです。
ポニョが持つ二重の意味
ポニョは「人間になりたい魚の子」という表面的な設定と、死者を黄泉に導くブリュンヒルデという深層的な設定を併せ持っています。これにより、作品は子どもから大人まで異なるレベルで楽しめる構造になっています。
環境問題への警鐘
フジモトの「海の時代復活計画」は、マイクロプラスチックの汚染に至っては、自然界の浄化力で間に合うはずもなく、ここは一日も早く地球を大掃除して、キレイにするしかないという現代の環境問題に対する警鐘でもあります。
まとめ
崖の上のポニョの登場人物たちの正体は、以下のようにまとめることができます:
- ポニョ(ブリュンヒルデ):海の女神と元人間のハーフで、本来の役割は死者を導く存在
- フジモト:元ノーチラス号乗組員の魔法使いで、100年以上かけて海の時代復活を計画していた
- グランマンマーレ:チョウチンアンコウの海の女神で、複数の夫を持つ存在
これらの複雑な設定により、崖の上のポニョは表面的には愛らしい子ども向け作品でありながら、深層では環境問題、生命の循環、現代社会への批評など、多くのテーマを内包した作品となっています。
ポニョを観る際は、ぜひこれらの設定を頭に入れて鑑賞してみてください。きっと新たな発見があるはずです。宮崎駿監督が仕込んだ深いメッセージを感じ取れることでしょう。そして、フジモトの娘への愛情や、グランマンマーレの包容力、ポニョの純粋さが、より一層心に響くはずです。