火垂るの墓が地上波で放送されない理由の結論
火垂るの墓が地上波で長期間放送されなかった最大の理由は、視聴率の低迷によるものです。正式に「放送禁止」になったわけではなく、結論、「火垂るの墓」は地上波で放送禁止になっていませんが、2007年以降の視聴率を見てみると、一気に7〜9%に落ち込みました。


具体的な数字を見ると、2018年4月5日高畑監督が逝去したことによって急遽追悼放送された際も6.7%と視聴率は良くありませんでした。この視聴率の低さが、テレビ局にとって放送メリットが少ないと判断される要因となったのです。
しかし朗報もあります。戦後80年に当たる2025年8月15日(金曜日)に地上波放送が復活することが発表されました。これにより、長年の沈黙が破られることになります。
視聴率低迷が示す厳しい現実
火垂るの墓の視聴率推移を見ると、その変化は歴然としています。黄マーカー:初期の高視聴率から現在まで、劇的な変化を遂げています。
放送年 | 放送日 | 視聴率 |
---|---|---|
1989年 | 8月11日 | 20.9% |
2001年 | 8月10日 | 21.5%(最高記録) |
2007年 | 9月21日 | 7.7% |
2009年 | 8月14日 | 9.4% |
2013年 | 11月22日 | 9.5% |
2015年 | 8月14日 | 9.4% |
2018年 | 4月13日 | 6.7%(最低記録) |
『火垂るの墓』歴代最高視聴率は、2001年8月10日に放送された21.5%ですが、その後は下降の一途をたどっています。2007年以降は一度も視聴率が10%を超えることはありませんでしたという厳しい現実があります。
他のジブリ作品との視聴率格差
同時期の他のジブリ作品と比較すると、火垂るの墓の苦戦ぶりが明確になります:
- となりのトトロ(2018年8月17日):14.0%
- 千と千尋の神隠し:常に高視聴率を維持
- 火垂るの墓(2018年4月13日):6.7%
『火垂るの墓』と同時上映された『となりのトトロ』は2年おきに放送され続け、今なお2桁中盤の世帯視聴率を記録し続けていることからも、両作品の明暗がうかがえます。
放送されない背景にある複数の要因
視聴率低迷の背後には、複数の複合的な要因が存在します。これらの要因が相互に影響し合い、放送機会の減少に繋がっています。
①作品内容の重さとトラウマ問題
火垂るの墓は怖くて見れないという方も非常多いです。具体的には以下のような問題があります:
- 包帯を巻いた母親の重篤な状態の描写
- 栄養失調で衰弱していく節子の姿
- 戦争による残酷な現実の描写
- 救いのないバッドエンドの結末
「夜寝れなくなった」「暗闇が怖い」「一人でお風呂に入れなくなった」と言った声もあります。このようなトラウマ体験が、視聴者離れに繋がっている可能性があります。
②時代との価値観のギャップ
時代的に厳しいとみられているのは、「子どもが戦争で社会や大人から孤立し、命を落としてしまう」という救いのない物語が現在の視聴者感情には合いづらいからです。
現代の視聴者の中には、主人公の清太に対する見方も変化しています:
- 働こうとしない姿勢への批判
- 親戚への感謝の気持ちの不足
- 妹を死に追いやった「自己責任」という視点
清太は14歳の少年ですが、働かず、親戚の世話になってもお礼すら言わず、手伝いもせずに、人々とのつながりを絶って孤立し、妹・節子を死に追いやった「加害者」であり、「自己責任」という見方の人が増えていたという指摘もあります。
③商標問題説の真相
長年噂されてきた「サクマドロップス商標問題説」についても検証が必要です。佐久間製菓の兄弟が分離して別々の会社を作ってそれぞれが「サクマ式ドロップス」「サクマドロップス」という商品を作ることになりましたという経緯があります。
しかし、その後は「サクマ式ドロップス」のシーンはそのまま使用され、後には節子のイラストが入ったサクマ式ドロップスも発売されていますことから、この問題は解決済みとされています。
SNSとウェブ上での反響と議論
火垂るの墓の地上波放送については、SNSやウェブ上で活発な議論が続いています。
放送復活を望む声
「火垂るの墓やってないな」「火垂るの墓っていつから金曜ロードショーで放送しなくなったんだろう」「火垂るの墓何でテレビで放送せんなったんやろうな不思議や」
多くの視聴者が火垂るの墓の地上波放送を待ち望んでいることがわかります。
トラウマ体験を語る声
「火垂るの墓、小6の時学校で見て、見る前は授業ないからウキウキしてたけど、お母さんが包帯巻かれてるシーンあたりからもう怖くて見れなくてそっから1ヶ月くらい夜のお風呂とか寝るの怖くてなんなら今でもトラウマで多分一生見れない」
このような体験談は、作品の持つ強烈な印象力を物語っています。
戦争記憶継承への願い
「いつのまにか火垂るの墓も放送されなくなったねぇ。。。新しい戦前にしないことは私たちの責任」
戦争体験を次世代に伝える重要性を訴える声も多く見られます。
Netflix配信への期待
「海外Netflix配信での高評価が復活の後押し」「配信初週:Netflix世界ランキング7位(非英語映画部門)」
海外での高評価が、国内での再評価に繋がっている状況も見られます。
業界関係者の本音
「『火垂るの墓』は時代的に厳しい」「ジブリの中で『火垂るの墓』にこだわる必然性は薄い」
テレビ業界関係者の率直な意見も明らかになっています。
2025年放送復活の背景と意義
2025年8月15日の放送復活には、深い意味が込められています。この決定に至った背景を詳しく見てみましょう。
終戦80年という節目の重要性
高畑勲が監督・脚本を務めた劇場アニメ「火垂るの墓」が、8月15日の「金曜ロードショー」(日本テレビ系列)で放送されることが分かった。この決定は単なる偶然ではありません。
戦後80年という重要な節目において、戦争の記憶を風化させないための重要な取り組みと位置づけられています。戦争孤児の兄妹が懸命に生き抜こうとする姿を描いた本作が、戦後80年を迎えた今年、広く読まれるべき名作として、アニメ、原作ともにあらためて注目を集めています。
海外Netflix配信成功の影響
2024年9月から海外のNetflixで配信が始まると、世界中で大きな反響を呼びました。この海外での評価が、今回の地上波復活の後押しとなったのです。
具体的な成果として:
- Netflix世界ランキング7位(非英語映画部門)
- 「圧倒された」「必ず観なければいけない作品」などの高評価
- 国際的な再評価による国内での関心復活
日本テレビの編成判断の変化
日テレの福田博之社長は会見で「特別な理由があるわけではなく、色々な状況から編成判断をしている」と述べました。この発言は、これまでの視聴率重視の判断から、社会的意義を重視する方向への変化を示唆しています。
現在の視聴環境の多様化
地上波放送の復活と並行して、視聴環境も大きく変化しています。
Netflix配信の意義
2025年7月からはついに日本のNetflixで配信されることでも話題になった「火垂るの墓」。これにより、視聴者は自分のペースで作品を鑑賞できるようになりました。
Netflix配信のメリット:
- 好きな時間に視聴可能
- 一時停止や巻き戻しが自由
- 心の準備をした状態での視聴が可能
- 家族での視聴タイミングの調整が容易
多様な視聴選択肢
現在では以下のような視聴方法が選択できます:
- 地上波放送(2025年8月15日)
- Netflix配信(2025年7月15日から)
- TSUTAYA DISCASなどのDVDレンタル
- 購入DVD/Blu-ray
作品の社会的価値の再認識
長期間の放送停止を経て、火垂るの墓の社会的価値が改めて見直されています。
戦争記憶継承の重要性
今年は終戦80年です。戦争の記憶はどんどん薄れ、最近では平和教育の教材として活用されていた『はだしのゲン』(著:中沢啓治)が削除されるなど、そもそも触れられる機会も限られてきました。
このような状況において、火垂るの墓は貴重な戦争体験伝承の媒体として位置づけられています。
教育的価値の再評価
作品が持つ教育的価値について、以下の側面が注目されています:
- 戦争の悲惨さを具体的に描写
- 民間人、特に子どもへの戦争の影響を明示
- 食糧不足や社会システムの破綻を描写
- 戦時下の人間関係の変化を表現
国際的な評価と認知
海外の視聴者からは「圧倒された」「必ず観なければいけない作品」などの声が殺到したことから、作品の普遍的な価値が国際的に認められていることがわかります。
今後の展望と課題
2025年の地上波復活は、新たな転換点となる可能性があります。
視聴率への期待と現実
今回の放送では、以下の要素が視聴率にプラスの影響を与える可能性があります:
- 7年間の空白による話題性
- Netflix配信による再認知効果
- 終戦80年という節目への関心
- 国際的評価による国内関心の復活
ただし、「家族で安心して楽しむジブリ作品」というイメージか外れて、視聴者層の幅が狭まっているという課題は依然として存在します。
継続的な放送への道筋
今回の放送結果次第では、以下のような展開が期待されます:
- 定期的な放送の復活
- 他のプラットフォームでの展開拡大
- 教育機関での活用促進
- 国際配信のさらなる拡大
現代における作品の意義
世界では、今も戦時中の国々があり、清太と節子のような犠牲者が多くいます。「火垂るの墓」は確かに過去の物語ですが、しかし一概に過去の物語だと言い切ることはできないのですね。
現代の国際情勢を考えると、この作品が持つメッセージの重要性は増していると言えるでしょう。
まとめ
火垂るの墓が地上波で長期間放送されなかった理由は、「放送禁止」ではなく視聴率低迷による商業的判断が主要因でした。2007年以降の視聴率一桁台の継続と、2018年の過去最低記録6.7%が、テレビ局の放送意欲を削ぐ結果となりました。
しかし、2025年8月15日の地上波復活は、作品の社会的価値が再認識された証拠です。海外Netflix配信での高評価、終戦80年という節目、そして戦争記憶継承の重要性が考慮された結果と言えるでしょう。
今後は地上波放送とNetflix配信の相乗効果により、新たな視聴者層の開拓と作品価値の再発見が期待されます。視聴率だけでは測れない作品の深い意義が、改めて評価される時代が到来したのかもしれません。
火垂るの墓は単なるエンターテイメント作品を超えて、平和の尊さを伝える貴重な文化遺産として、これからも多くの人に見守られ続けていくでしょう。

