火垂るの墓情報

火垂るの墓の漫画版とは?原作・野坂昭如の世界を詳しく解説!

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火垂るの墓の漫画版とは?原作・野坂昭如の世界を詳しく解説!

火垂るの墓の漫画版について最初に知っておくべきこと

多くの方がスタジオジブリの映画版で知っている「火垂るの墓」ですが、実は漫画版も存在することをご存じでしょうか。野坂昭如の原作小説をベースにした漫画版は複数制作されており、それぞれが異なるアプローチで戦争の悲劇を描いています。

ホーム社 MANGA BUNGOシリーズ『火垂るの墓』(ホーム社、2010年7月10日)画:三堂司。原作:野坂昭如として刊行されたものが最も知られており、現在でも入手可能です。また、それ以前には滝田ゆうによる漫画化も行われていました。

なぜ漫画版が制作されたのか?

野坂昭如の原作小説は、1967年(昭和42年)10月、『オール讀物』に発表され、1968年(昭和43年)3月に刊行された短編集『アメリカひじき 火垂るの墓』(文藝春秋)に収録された。同年には『アメリカひじき』と共に、第58回(昭和42年度下半期)直木賞を受賞した名作です。その普遍的なテーマ性と強烈な印象から、様々なメディアで翻案され、漫画もその一つとなったのです。

三堂司版「火垂るの墓」の特徴と魅力

2010年にホーム社から発売された三堂司版「火垂るの墓」は、MANGA BUNGOシリーズの一作として制作された作品です。このシリーズは文学作品の漫画化に特化しており、原作への敬意を込めて制作されています。

三堂司のアプローチの特徴

三堂司氏の描く節子がたまらなく可愛いのですが、母親の死や親戚に邪険にされ傷付き、飢えや病気で痩せこけ変わり果てていく姿は見るに耐えませんという読者の評価からも分かるように、三堂司は特に節子の描写に力を入れています。

特に印象的なのは、清太が節子の長い髪を三つ編みに結って、「かわいいで」と言ってあげますが、その節子には元気いっぱいで目をキラキラ輝かせ無邪気に笑っていた、かつての面影は無く・・・という場面の描写です。視覚的な表現によって、戦争が奪っていく無垢な命の輝きを鮮烈に表現しています。

読者に与える影響

石ころをご飯だと言って「どうぞおあがり」と差し出す目も虚ろな節子を見て涙する清太、この二人の兄妹に私も涙が止まりませんでしたという読者の感想は、三堂司版が持つ強い感情的訴求力を物語っています。

滝田ゆう版との違いと特色

三堂司版以前には、漫画家・滝田ゆうによる「火垂るの墓」の漫画化も存在していました。「火垂るの墓」は原作に忠実に淡々と漫画化した滝田ゆう版があります。これは宙コミック文庫『怨歌劇場』収録のものとして1993年に発売されています。

滝田ゆうの独特な表現方法

滝田ゆう版は激情を廃して波紋のない静けさのまま悲惨を描くから、喪失の瞬間の虚しさがものすごく大きい。野坂昭如の血液に流れてるアッサリとした諦念がものすごく色濃く出てるという評価が示すように、滝田版は三堂司版とは全く異なるアプローチを取っています。

淡々とした画調で描かれる戦中戦後の戦災孤児の飢餓描写が重くのしかかってくる滝田版は、野坂昭如の原作が持つ独特の文体と世界観をより忠実に再現していると評価されています。

原作小説「火垂るの墓」の深い背景

漫画版を理解するためには、まず野坂昭如の原作小説について深く知る必要があります。野坂自身の戦争体験を題材とした作品で、兵庫県神戸市と西宮市近郊を舞台に、戦火の下、親を亡くした14歳の兄と4歳の妹が終戦前後の混乱の中を必死で生き抜こうとするが、その願いも叶わずに栄養失調で悲劇的な死を迎えていく姿を描くこの作品は、単なるフィクションではなく、作者の実体験に基づいています。

野坂昭如の贖罪の念

原作の根底には、野坂昭如の深い悔恨の念があります。ぼくはせめて、小説「火垂るの墓」にでてくる兄ほどに、妹をかいがってやればよかったと、今になって、その無残な骨と皮の死にざまを、くやむ気持が強く、小説中の清太に、その想いを託したのだ。ぼくはあんなにやさしくはなかったという野坂自身の告白が示すように、この作品は自己の贖罪として書かれました。

やせ衰えて骨と皮だけになった妹は誰にも看取られることなく餓死している。こうした事情から、かつては自分もそうであった妹思いのよき兄を主人公に設定し、平和だった時代の上の妹との思い出を交えながら、下の妹・恵子へのせめてもの贖罪と鎮魂の思いを込めて、野坂は『火垂るの墓』を書いたのです。

SNSでの話題と読者の反応

「火垂るの墓」の漫画版について、多くの読者が深い印象を受けているようです。

「三堂司氏の描く節っちゃんがホントに可愛いので是非読んでみて下さい。」

「滝田ゆうさんはそろそろまた再評価されてもいいですよね」

「高畑勲がのちに劇場アニメ化した有名な野坂作品を遥か前の高度成長期、ガロ系作家の滝田ゆうが掌編として漫画化していた」

「映画は一度も通して観たことがないが、もし滝田ゆう版の「火垂るの墓」が映画化されたなら是非観たいなと思っている」

漫画版と映画版・原作小説の違い

各メディアでの「火垂るの墓」は、それぞれ異なる特徴を持っています。漫画版は視覚的表現を活かして、原作の情感を独自の方法で表現しています。

表現手法の違い

媒体主な特徴表現方法
原作小説野坂昭如独特の文体内面描写と関西弁の語り
三堂司版漫画親しみやすい絵柄感情的な視覚表現
滝田ゆう版漫画淡々とした画調静謐な悲しみの表現
高畑勲版映画アニメーション動的な映像と音楽

各版の受容のされ方

アニメは、見つめる清太の物語ではなく、清太によって見つめられる節子の物語として受容されてきたようだという指摘がある通り、媒体によって受け手の印象は大きく異なります。漫画版では、読者のペースで読み進められるため、より内省的な体験が可能になっています。

現代における「火垂るの墓」漫画版の意義

戦争体験者が少なくなる現代において、漫画版「火垂るの墓」は重要な意味を持っています。日本人はみな野坂昭如氏の名篇『火垂るの墓』を何とかして忘れようと努め、しかしつひに忘れることができなかつたという丸谷才一の評価は、この作品が持つ普遍性を示しています。

若い世代への影響

漫画という親しみやすい媒体を通じて、戦争の悲惨さと人間の尊厳について考える機会を提供しているのが、漫画版の大きな価値です。特に三堂司版は、現代の読者にも受け入れられやすい絵柄で描かれており、戦争を知らない世代にも強い印象を与えています。

文学作品としての評価

彼は小説を書くことによって、焼跡闇市への回帰をくり返してきた。死んだ肉親や過ぎ去った過去を悼むというよりも、内発的な声にしたがってそれをまとめたというところに、彼の文学の独自性があるのだろうという評論家の指摘は、原作の文学的価値の高さを示しています。漫画版はこの文学性を視覚的に翻案した作品として価値があります。

入手方法と読み方の提案

現在、三堂司版の「火垂るの墓」は比較的入手しやすい状況にあります。原作小説の『火垂るの墓』は現在、新潮文庫から刊行されている作品集『アメリカひじき・火垂るの墓』で読むことができます。出版社:新潮社 値段:文庫版605円、電子書籍版484円と合わせて読むことで、より深い理解が得られます。

推奨読書順序

  1. 原作小説を最初に読む – 野坂昭如の文体と内面描写を体験
  2. 漫画版を読み比べる – 三堂司版と滝田ゆう版の表現の違いを確認
  3. 映画版を鑑賞する – 高畑勲の解釈と演出を理解
  4. 再度原作を読み直す – より深い理解で作品を再体験

まとめ:火垂るの墓漫画版が持つ独自の価値

「火垂るの墓」の漫画版は、野坂昭如の原作小説が持つ深い人間性と戦争の悲劇を、視覚的表現という独自の方法で現代に伝える貴重な作品です。三堂司版の感情的な表現力と滝田ゆう版の静謐な叙情性は、それぞれ異なるアプローチで読者の心に訴えかけます。

戦争体験の継承という観点からも、親しみやすい漫画という媒体を通じて若い世代に戦争の現実を伝える意義は計り知れません。戦争という枠組みではなく、もっと小さい枠組みで、語っていきたいという現代的な読み方も可能にしており、普遍的な人間ドラマとしても読むことができます。

原作小説、漫画版、映画版それぞれが持つ独自の魅力を理解することで、「火垂るの墓」という作品の真の深さを味わうことができるでしょう。特に漫画版は、読者一人一人のペースで深く味わえる媒体として、この名作を後世に伝える重要な役割を果たしているのです。

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