企業の価値を評価する際や株式投資を検討する上で、PER(株価収益率)は重要な指標の1つです。PERは株価と1株当たりの純利益の関係を示す数値であり、企業の収益性を判断する上で有用な情報を提供してくれます。しかし、PERを適切に活用するためには、その計算方法や解釈の仕方、注意点などを理解しておく必要があります。本ブログでは、PERの概要から具体的な活用方法、留意点までを詳しく解説していきます。
1. PERとは?
PER(株価収益率)は、株式投資や企業の分析において重要な指標の1つです。株価収益率は、企業の株価が1株あたりの利益の何倍であるかを示します。つまり、株価がどの程度利益性を反映しているかを測る指標です。
1.1 PERの計算式
PERの計算式は、株価を1株あたりの当期純利益(予想値)で割ることで求められます。
1.2 PERの意味
PERは、株価が当期純利益に対してどの程度の倍率で評価されているかを示します。つまり、投資家がどれだけの価格を支払って企業の利益を得ているかを示す指標です。
1.3 PERの解釈
PERの数値が高いほど、株価が割高であるとされます。一方、数値が低いほど、株価が割安であるとされます。しかし、業種によってPERの基準は異なるため、一般的な基準と比較しながら解釈する必要があります。
1.4 PERの業種別目安
PERの基準は業種によって異なるため、同じ数値のPERでも業種ごとに適切な判断基準が異なります。業種別の平均や過去のデータを参考にすることで、より正確な判断ができます。
1.5 PERの判断に考慮すべき要素
PERの数値だけで判断するのではなく、その数値の理由や将来の成長性なども考慮する必要があります。株価の上昇や下落の要因、業績の推移、市場の競争状況など、さまざまな要素を総合的に考慮することが重要です。
投資家にとっては、PERの数値が小さいほど割安とされますが、将来の成長性や企業の業績などを総合的に判断することが重要です。株式投資や企業の分析において、PERは重要な指標となります。
これがPERとは何かについての説明です。次に、PERの計算方法について解説します。
2. PERの計算方法
株価収益率(PER)は、以下の方法で計算されます。
2.1 株価
株価とは、市場での現在の取引価格のことです。具体的には、株式を購入する際に支払う必要がある価格です。
2.2 1株当たり利益(EPS)
1株当たり利益(EPS)は、企業の純利益を発行済み株式数で割った値です。これは、1株あたりの利益金額を表しています。
2.3 PERの計算方法
PERは、株価を1株当たり利益(EPS)で割ることで求められます。つまり、株価÷EPSの計算結果がPERとなります。
2.4 1株当たり利益の予測値の利用
通常、実際の利益の代わりに将来の1株当たり利益の予測値を使用します。予測値は、企業の成長性を反映した将来の業績を予測したものです。
2.5 PERの意味
計算されたPERの値は、株価が1株当たり利益の何倍であるかを示します。例えば、ある企業の株価が100円で1株当たり利益が10円であれば、その企業のPERは100円÷10円=10倍となります。
投資家は、割安か割高かを判断する際に、計算結果のPERを重要な指標として利用することができます。ただし、単一の数値だけではなく、企業の業績や将来の成長性を総合的に分析することが重要です。
3. PERの見方と判断基準
PER(株価収益率)を評価するにあたっては、以下のポイントを考慮しながら判断する必要があります。
総合的な判断のために他の指標も考慮する
PERの数字だけでは、「割高」または「割安」を判断することはできません。他の指標との総合的な判断が必要です。以下に注意点を挙げます。
- 同業他社との比較や複数年のPERの推移を確認しながら判断する。
- 他の指標(例:PBR)も考慮する。
マイナスのPERにも注意が必要
PERは当期純利益を株価で割った値ですが、当期純利益が赤字の場合、PERはマイナスになります。マイナスのPERに関する注意点は以下の通りです。
- マイナスのPERの場合、投資対象としての評価が難しくなります。
- マイナスであるからといって必ずしも投資を避ける必要はありません。
- マイナスになった要因を特定し、それを加味して投資判断を行う必要があります。
一般的な基準は存在しない
PERの適切な水準には絶対的な基準は存在しません。以下にPERの目安に関する注意点を挙げます。
- 業界や業種によって水準が異なるため、同業他社同士の比較に使用されます。
- 日経平均株価のPERを考慮して、約15倍を目安とすることもあります。
- 30〜40倍が一般的に適正とされていますが、これも目安であり、各企業や業界の状況によって異なる場合があります。
PERを評価する際には、これらの要点を考慮し、他の指標との比較や業界水準との関係を考えながら判断する必要があります。また、PERの数値だけでなく、企業の将来性や財務状況なども総合的に考慮することが重要です。
4. PERの活用場面
PERは様々な場面で有効に活用することができます。以下に具体的な活用場面を紹介します。
1. 企業価値評価における活用
- 企業価値評価では、PERを使用して株主や債権者に対する企業の価値を算定します。
- マルチプル法(類似会社比較法)と呼ばれる企業評価手法では、PERを活用して他の類似企業との比較を行います。
- マルチプル法は、同業他社との比較に基づいて対象企業の価値を推定する方法です。
2. 株式投資の判断基準としての活用
- PERは株式投資における有効な判断基準となります。
- 未使用資金の運用や将来の資産運用を考える際にも、PERを活用して株式投資への資金配分を検討する必要があります。
- 株式投資でどの銘柄を選ぶべきか迷った場合には、PERを確認してその銘柄が割高か割安かを判断することが重要です。
以上がPERの活用場面です。企業価値評価や株式投資の判断基準としてPERは有効ですが、利用する際にはいくつかの注意点があります。次のセクションではPERを利用する際の注意点について詳しく説明していきます。
5. PERの利用時の注意点
PERを活用する際には、以下の点に注意する必要があります。
1. 赤字だと使えない
- 赤字の企業ではPERでの分析ができないため、注意が必要です。
- 利益が赤字の場合、分母がマイナスになり割高・割安を正確に測定できません。
- 一時的に利益が赤字になる場合もありますが、予想PERを利用すると比較が可能です。
- 予想PERは株価を予想利益で割って求める指標ですが、予想利益が大幅に変動する可能性があることに注意が必要です。
2. 同じ会社もしくは同業他社で比較する
- 業種ごとに目安の数値が異なるため、同じ会社や同業他社との比較にPERを利用する方が適切です。
- 成長局面にある情報・通信業などは一般的にPERが高い傾向にあります。
- 同じ会社の推移を確認する際には、直近だけで判断せず複数年のPERの推移を確認することが重要です。
3. 特殊な事情でPERが上昇することがある
- 特別利益や特別損失が発生すると、本業の利益に変動がなくてもPERが大きく変動することがあります。
- 不動産の売却などが特別利益を生み出す場合があります。
- 特別損失が発生するケースは、不動産の帳簿価額を下回る価格で売却する場合や災害損失などが該当します。
これらの注意点を踏まえながら、PERを活用することが大切です。PERを単独の指標ではなく、他の指標と合わせて判断することで、より正確な投資判断が可能となります。
まとめ
PERは株式投資や企業分析において非常に重要な指標です。PERの値が高い場合は株価が割高であり、低い場合は割安であると考えられます。しかし、PERの解釈には注意が必要で、業種によって基準が異なることや、企業の特殊な事情によってPERが大きく変動することがあります。したがって、PERだけでなく、企業の業績や成長性、同業他社との比較など、様々な要素を総合的に考慮しながら投資判断を行うことが重要です。PERは有効な指標ですが、他の指標と併せて活用し、慎重に分析することが成功する投資につながるのです。