崖の上のポニョで宗介の父・耕一を演じた長嶋一茂は、実は本作が声優デビュー作品でした。声優経験が全くなかった長嶋一茂の演技は一体どうだったのでしょうか?
結論:長嶋一茂の声優としての評価は賛否両論
長嶋一茂は「がっかりタレント声優ランキング」で2位にランクイン(126票)し、「声優という仕事では”本業”の域には届かなかった」と評価されています。しかし、その一方で宮崎駿監督からは特別な配慮を受け、結果的に「宗介を溺愛する優しくもたくましい父親役を見事に演じきっており、本作になくてはならないキャラクター」となりました。
なぜ長嶋一茂は声優として厳しい評価を受けたのか
アフレコ経験ゼロからのスタート
長嶋一茂自身が「宮崎さんの作品に参加できるのはとても光栄だと思う反面、アフレコの経験がなく、不安もありますが、楽しみにしています」とコメントしていた通り、完全に未経験からの挑戦でした。
長嶋一茂はアニメ映像のキャラクターの口の動きに自身のセリフを合わせるアフレコに苦戦しましたが、その際、宮崎監督に「一茂くんの間合いでしゃべってくれ。映像をこっちが合わすから」と提案されました。これは声優としては異例の配慮です。
視聴者が感じた違和感
アンケートでは「セリフは少なかったけど、発する声が長嶋一茂そのものだった」「本人の性格がジブリ作品に向いていないように思った」という厳しい意見がありました。
バラエティー番組での天然キャラのイメージが強すぎて、視聴者の頭から離れなかったことが影響していたようです。
長嶋一茂の声優としての具体的な評価例
宗介の父・耕一役の特徴
キャラクター設定 | 長嶋一茂の演技 |
---|---|
内航貨物船「小金井丸」船長 | 船乗りらしい男性的な声質 |
家を不在にすることが多い | 家族への愛情を込めた温かい声 |
宗介を自慢の息子だと思っている | 父親らしい優しさのある口調 |
他のジブリ作品でのタレント声優と比較
「がっかりタレント声優ランキング」では、1位の糸井重里(177票)、3位の木村拓哉(117票)に次ぐ2位という結果でした。しかし、これは必ずしも演技力の絶対的な評価を意味するものではありません。
SNS・WEBで話題になった長嶋一茂の声優評価
肯定的な意見
千葉・小湊を舞台にしたハートフルストーリー。長嶋一茂の朴訥さと、北乃きいのまっすぐな眼差しもあって、素晴らしい作品になった。正直、日本郵政の宣伝映画であることは否めないが、ふたりの演技力がその匂いを打ち消した。
これは『ポストマン』という映画のレビューですが、長嶋一茂の「朴訥さ」が演技に活かされていると高く評価されています。
宮崎監督の特別配慮について
当時を振り返り、”迷惑を掛けた”と気にしていた様子の長嶋さんだったが、結果、宗介を溺愛する優しくもたくましい父親役を見事に演じきっており、本作になくてはならないキャラクターとなっていた。
引用:ふたまん+
批判的な意見
演じているというより”素”の一茂が見え隠れしてしまったという声が多く、「セリフは少なかったけど、発する声が長嶋一茂そのものだった」という厳しい評価もありました。
引用:週刊女性PRIME
業界内での評価
これまで積極的にプロの声優以外を作品で起用してきたジブリ。『餅は餅屋』という言もあるが、ジブリ作品は、こと声の部分では専門外の未熟さも魅力のひとつとしているのかもしれない。
引用:週刊女性PRIME
別の視点から見た長嶋一茂の声優としての価値
ジブリ作品におけるタレント起用の意図
ジブリ作品でのお父さん役というのは、脇役でありながらもどんなお父さんなのかが分かる大事な役どころで、「現実にどこにでもいるような人物」であることが求められました。
長嶋一茂の起用は、まさにこの方針に沿ったものだったのです。となりのトトロのお父さんの声優を務めた糸井重里さんも「仕事に没頭しすぎる不器用さがありつつ、サツキとメイを育てる優しい父親」にぴったりの声をしていたから選ばれました。
宮崎監督の声優に対する考え方
宮崎駿監督は、プロの声優について「『わたし、かわいいでしょ』みたいな声を出すでしょ。あれがたまらんのですよ」とコメントし、プロの声優を使わない理由を語っています。
この考え方からすると、長嶋一茂の「素」の部分が見えてしまうことは、むしろ監督の意図に沿っていたと考えられます。
まとめ
長嶋一茂の声優としての評価は確かに厳しいものがありますが、それは必ずしも失敗を意味するものではありません。
宮崎駿監督が「一茂くんの間合いでしゃべってくれ。映像をこっちが合わすから」という特別配慮をしたということは、長嶋一茂の持つ自然な魅力を活かそうとしていたことの表れです。
「がっかりタレント声優ランキング」2位という結果は、むしろ長嶋一茂の知名度の高さと、視聴者の期待の大きさを反映したものと考えるべきでしょう。
ジブリ作品におけるタレント起用は、完璧な演技よりも「リアリティ」と「親しみやすさ」を重視する方針の表れです。長嶋一茂の起用も、この方針に沿った結果として、一定の成功を収めたと評価できるのではないでしょうか。
声優としての技術的な完成度よりも、キャラクターの魅力を引き出すことに成功した例として、長嶋一茂の耕一役は崖の上のポニョという作品に欠かせない要素となっているのです。