崖の上のポニョの数あるシーンの中でも、多くの視聴者に強い印象を残すのがモールス信号のシーンです。海上の船にいる父・耕一と、陸上の家にいる宗介とリサが光の点滅でやり取りする場面は、アナログな通信手段の温かみを感じさせる名シーンとして知られています。
結論:モールス信号で交わされた愛情あふれる家族の会話
結論から述べると、このモールス信号シーンでは宗介が「QR(こちら)」「SOK(宗介どうぞ)」、リサが「BAKA(ばか)」を連打し、耕一が「LLS(LOVE LISA=愛してるリサ)」と返事をするという、家族の愛情に満ちたやり取りが描かれています。
このシンプルながらも心温まる会話は、家族の絆と愛情の深さを表現した宮崎駿監督の演出の妙として高く評価されているのです。
なぜモールス信号を使ったのか?背景と理由を解説
船乗りの職業的必然性
「小金井丸」の船長である耕一は、宗介とライトを使い、モールス信号でやりとりをする。まだ5歳なのにモールス信号を使える宗介を、耕一は同乗する船員に「天才」と自慢しているという描写からも分かるように、モールス信号は船乗りにとって必要不可欠な通信手段でした。
モールス信号は19世紀中頃から普及され始め、船同士の通信や海難事故の救助信号として使われました。昔の船乗りにとって、これは生命線とも言える重要な技術だったのです。
家族のコミュニケーション手段
耕一は予定を変更して帰れなくなったことを電話で伝えていますが、あえてモールス信号でメッセージを送るのには深い意味があります。これは単なる情報伝達ではなく、家族との特別なコミュニケーション手段として使われているのです。
具体的なモールス信号の内容を詳細解説
宗介からのメッセージ
モールス信号 | 意味 | 説明 |
---|---|---|
QR | こちら | 通信開始の合図 |
SOK | 宗介どうぞ | 自分の存在を知らせる |
このとき宗介は、ライトを使ったモールス信号で「QR(こちら)」「SOK(宗介どうぞ)」とメッセージを送っています。わずか5歳の宗介が高速でこれらの信号を送る様子は、多くの視聴者を驚かせました。
リサの怒りのメッセージ
楽しみにしていた反動で、耕一に「BAKA(ばか)」と送るリサ。猛スピードで「BAKA」を連続するという場面では、リサの心情が手に取るように伝わってきます。
久しぶりに夫が帰ってくると聞いて張り切って料理の準備をしていたリサの期待と失望の気持ちが、この「BAKA」の連打に込められているのです。
耕一の愛情あふれる返答
すると耕一からは「LLS(LOVE LISA=愛してるリサ)」と返事が来るのです。その後もBAKAと送り続けるリサとそれに返事し続ける耕一という展開は、夫婦の愛情の深さを表現した名シーンです。
船体全体を光らせて「愛してる」のメッセージを送る耕一の姿は、まさに愛情表現の極致と言えるでしょう。
SNSでも話題!モールス信号シーンへの反応
ふと思った、スタジオジブリの作品には思いのほか作中に連絡手段としてのモールス信号を使ってる場面が多かったする。崖の上のポニョ、紅の豚、天空の城ラピュタなど。コクリコ坂からはモールスじゃないけど国際信号旗を使ってるので、これも同様な連絡手段。
引用:Twitter投稿
発光信号で宗介と耕一がコミュニケーションをとるこのシーン。猛スピードで「BAKA」を連続するリサにむけて耕一が発していた信号は「LLS:Love Lisa」の連続。必死の愛のメッセージにもリサがむくれたまま
そうすけのお母さん、りさが船乗りの夫が久しぶりに帰ってくるから手料理を頑張って作ろうとするのに結局帰ってこれなくてBAKA BAKA BAKAってモールス信号で送ってふてくされて寝るシーン…
引用:Ameblo
5歳でモールス信号を理解する宗介の驚異的能力
高速ライトを使用したモールス信号の意味を理解できる、そうすけの頭脳にも驚きました!という声が多く上がるように、宗介の能力は本当に驚異的です。
現実的には不可能な技能
かなり高速な発光信号でのやり取りだったので、普通の5歳の子供が理解できるものではありませんというのが実情です。しかし、これこそが宮崎駿監督の意図的な演出なのです。
家族の絆を表現する手法
宗介がモールス信号を理解できるという設定は、家族の深い結びつきと、父親に対する憧れの表現として機能しています。船乗りである父の技術を習得している宗介の姿は、親子の絆の深さを象徴しているのです。
ジブリ作品におけるアナログ通信の魅力
【天空の城ラピュタ】だけでなく、他のジブリ作品にもモールス信号が使われています。【崖の上のポニョ】では宗介がモールス信号を使い、父親の船に向けてメッセージを送るシーンも。また、【コクリコ坂から】では旗信号が物語の中で大切な役割を果たしていました。
ジブリ作品に共通するテーマ
- 天空の城ラピュタ:ムスカ大佐のモールス信号
- 紅の豚:飛行艇からの発光信号
- コクリコ坂から:国際信号旗による意思疎通
- 崖の上のポニョ:家族間のモールス信号
このように、ジブリ映画ではあまりメジャーではない通信方法が登場するため今の子どもたちが見たら新鮮な発見があるかもしれません。
別の視点から見たモールス信号の意味
現代への問題提起
崖の上のポニョのキャッチコピーでもある「うまれてきてよかった」にもあるように、様々な社会問題がある中でも子供達に生まれてきて良かった思えるような世界を作りたかったのではないでしょうか?
デジタル化が進む現代において、アナログな通信手段による家族のコミュニケーションを描くことで、本当に大切なものは何かを問いかけているのです。
温かみのある人間関係の描写
全セリフ通してシンプルな内容でしたが、耕一・リサ・宗介それぞれのお互いに対する愛情を感じる場面でもありますよね。家族の絆を感じて、崖の上のポニョの魅力を再発見できた気がしますという感想が示すように、このシーンは家族愛の表現として完璧に機能しています。
まとめ:モールス信号に込められた宮崎駿監督のメッセージ
崖の上のポニョのモールス信号シーンは、単なる通信手段の描写を超えた深い家族愛の表現でした。
このやりとりを今までに何度もしているからなのだそうですという設定からも分かるように、これは家族の日常的なコミュニケーションの一部として描かれています。
宮崎駿監督は、現代の便利な通信手段に慣れきった私たちに対して、本当に心のこもったコミュニケーションとは何かを問いかけているのです。5歳の宗介がモールス信号を理解できるという非現実的な設定も、家族の絆の強さと愛情の深さを表現するための重要な演出だったのです。
次回「崖の上のポニョ」を観る際には、ぜひこのモールス信号シーンに注目してみてください。きっと新たな発見と感動が待っているはずです。