経営環境が厳しい中、企業は資金繰りを改善し、事業の継続を図る必要があります。そのような状況下で活用される手法の一つがDDS(デット・デット・スワップ)です。DDSは企業の負債構造の見直しを通じて、キャッシュフローを改善し、再建を目指す方法です。本ブログでは、DDSの概要から実施手順、メリット・デメリットまで詳しく解説します。財務リストラを検討されている経営者の皆様に、DDSの実態をご理解いただけるよう丁寧に説明していきます。
1. DDSとは何か?
DDS（デット・デット・スワップ）は、企業が資金繰りを改善するために利用する手法です。具体的には、債権者との合意に基づいて一定期間の返済猶予を得ることで、企業のキャッシュフローを安定させることを目指します。
1.1 返済負担の一時的な軽減
DDSを利用することで、企業は返済の負担を一時的に軽減することが可能です。具体的には、元本の返済を猶予し、利息のみを支払うことができます。これにより、企業は一定期間中に現金を確保し、経営の安定を図ることができます。
1.2 債権者との合意が必要
DDSを実施するためには、金融機関や債権者との合意が不可欠です。したがって、個別の交渉や協議が必要となります。企業は、債権者との間で返済計画の再調整や条件の変更を協議する必要があります。
1.3 信用力の低下に注意
DDSを行うことで、企業の信用力が低下する可能性があります。債権者は、返済猶予を許すことでリスクを負うことになるため、企業の信用力が減少する可能性があります。そのため、DDSによる影響を考慮し、慎重に判断する必要があります。
1.4 DDSとDESの違い
DDSとDES（Debt Equity Swap）は似た手法ですが、異なる特徴を持っています。DDSでは債務の猶予を得ることでキャッシュフローを改善しますが、DESでは債務を株式に換えることで負債の削減と資本強化を図ります。企業は、それぞれの手法の特徴や適用条件を考慮して、最適な選択を行う必要があります。
以上が、DDS（デット・デット・スワップ）についての概要です。次に、DDSを活用するメリットについて説明します。
2. DDSを活用するメリット
DDS（デット・デット・スワップ）を活用することには、以下のようなメリットがあります。
安い金利での融資が可能
DDSを活用する最大のメリットは、より安い金利での融資を受けることができる点です。DDSを実施することで金利が約1%以下に下がり、返済額を削減することができます。企業としては資金を確保することが重要であり、DDSによる金利の低下は大きな利点となります。ただし、業績が上向きになり利益が発生した場合には金利が上昇することにも注意が必要です。
金融機関からの融資がしやすくなる
DDSの実施により、事業を継承する企業への信頼が回復します。これにより、金融機関からの融資を受けやすくなります。資本性借入金への変更により、返済までの猶予期間が発生し、債務超過が解消されると判断されるからです。企業はリソースを充実させることができ、事業拡大が可能になります。したがって、DDSは企業再建に大きな影響をもたらすものです。
キャッシュフローの大幅改善が見込める
DDSの実施により、金利が低下し、金融機関からの融資が取りやすくなることは、キャッシュフローの改善に直結します。債務超過の場合、キャッシュフローの改善は困難ですが、DDSの実施により大幅に改善することができます。この点だけでもDDSの実施は意義があります。
アモチゼーションの負担がなくなる
DDSによるもう一つのメリットは、アモチゼーション（定額返済）による負担がなくなることです。資本性借入金への変更により、返済方法が5～15年の期日一括返済となります。そのため、毎月のアモチゼーションによる負担がゼロになります。DDSにより債務超過が解消されることは大きなメリットです。
以上がDDSを活用する際のメリットです。ただし、DDSの実施にはデメリットや注意点も考慮する必要があります。次のセクションで詳しく説明します。
3. DDSを行う際の手順
企業がDDSを実施するためには、以下の手順が必要です。
① 専門家に相談する
DDSを行うかどうかを検討する際は、まずは専門家に相談しましょう。顧問税理士や公認会計士など、DDSに関する知識と経験を持つ専門家に相談することが重要です。専門家にはDDSの意味やメリット・デメリット、DESとの違いなどについて質問することもできます。
② 金融機関にDDSの申込みをする
DDSを実施することが決まったら、金融機関にDDSの申込みをします。ただし、債権者である金融機関の同意が必要です。申込みは通常却下されることはありませんが、審査結果によってはDDSができない場合もあります。
③ 審査を受ける
金融機関への申し込み後は、審査を受ける必要があります。審査では、申込み時に提出した書類や財務指標などがチェックされます。審査に合格すれば次のステップに進むことができます。
④ 債務の種類を変更する
審査に通過したら、債務の種類を変更します。具体的には、借入金を劣後ローンなどに変更することです。ただし、審査に通過したからといって自由に債務の種類を変更できるわけではありません。合理的な事業計画書の作成と交渉が必要です。
DDSを行う際には、以上の手順が必要です。多くの手順があるため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。DDSにより事業継承がしやすい企業へ再建させるためには、適切な手順を踏むことが欠かせません。
4. DDSのデメリットと注意点
DDS（デット・デット・スワップ）を実施する際には、以下のデメリットや注意点にも留意する必要があります。
経営者への負担増加
DDSを行う場合、金融機関などの債権者は直接的なメリットを享受しません。そのため、経営者自身が個人的に負担を負う可能性があります。個人資産の提供や補償などの要請が行われる場合もあります。結果として、DDSには経営者にとって大きな負担が生じることがデメリットとして挙げられます。
会社の経営状況の報告義務
DDSの実施により、月々の会社の経営状況を報告する必要性が生じます。特約事項に応じた報告が求められるケースもあります。資金繰り表の提出や赤字決済の制約などが発生することもあります。このような制約はDDSのデメリットとなります。
債務者の義務設定
DDSを実施する際には、特約事項に基づき、債務者としての義務が設定されることがあります。特定の義務を遵守する必要があります。ただし、これらの義務はDDSの特約事項に明記された内容に対してのみ課せられるものであり、経営状況の回復があればほとんど影響を受けません。
利息の増加
DDSを実施することで一時的に利息が低下する場合がありますが、業績が回復し利益が増加すれば利息も上昇する可能性があります。DDSを実行する際には、利息が高騰するリスクも考慮する必要があります。
これらのデメリットや注意点はDDSを実施する際に押さえておくべきポイントです。DDSは企業のキャッシュフローを改善する機会であるが、専門家との十分な相談と事前の慎重な検討が重要です。
5. DDSとDESの違い
DDS（デット・デット・スワップ）とDES（デット・エクイティ・スワップ）は、企業再建手法の一つであり、それぞれには以下の違いがあります。
DDS（デット・デット・スワップ）
DDSは、債権の種類を交換する手法です。具体的には、借入金を劣後債に変えることで、返済の順番を変更します。DDSの特徴は以下の通りです:
- 劣後ローンへの転換が目的とされる。
- 返済義務のある劣後債は最後の段階で返済される。
DES（デット・エクイティ・スワップ）
DESは、債務を資本金へ転換する手法です。具体的には、債務を出資された資金へ変えます。DESの特徴は以下の通りです:
- 資本金への一部転換が目的とされる。
- 返済義務のない資金へ変換される。
DDSとDESは、いずれも企業再建手法として利用されますが、それぞれには異なる手法や目的が存在します。DDSは劣後ローンへの転換により返済の順番を変え、資金繰りを改善します。一方、DESは債務を資本金へ変換することで、企業の負債を減らし返済の負担を軽減します。
企業がどちらの手法を選択するかは、その企業の状況や目的によって異なります。適切な手法を選ぶためには、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
まとめ
DDSとDESは、企業再建の有効な手段として活用されています。DDSでは返済義務のある劣後債への転換により資金繰りを改善し、DESでは債務を資本金へ変換することで返済負担を軽減します。企業はそれぞれの特徴を理解し、自社の状況に合わせて最適な手法を選択する必要があります。また、DDSやDESを実施する際は、専門家のアドバイスを得ながら、慎重に検討することが重要です。企業再建にはさまざまな選択肢がありますが、適切な手法を選択し、計画的に実行することで、企業の持続的な成長につなげていくことができるでしょう。