量子コンピューターでできないことはあるのか?

quantum computing 量子コンピューターについて

近年、量子コンピュータが世界中で注目を集めています。この画期的な技術は、従来のコンピュータでは解決が困難だった問題に対して新たなアプローチを提供し、未来の技術革新に寄与することが期待されています。しかし、量子コンピュータにはまだ実現困難な課題や制約も存在しており、理解しておくことが重要です。本ブログでは、「量子コンピュータでできないこと」とその背後にある制約や技術的課題について掘り下げていきます。量子コンピュータの可能性だけでなく、その限界を見据えた議論に興味のある方はぜひお読みください。

1. はじめに

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量子コンピュータは、近年急速に注目を浴びている革新的な技術です。この技術の進歩により、従来のコンピュータでは解けなかった問題に新たな解決策を提供する可能性があります。しかし、一方で量子コンピュータにはまだ解決すべき課題や制約も存在しています。

本稿では、量子コンピュータの現状と課題について概観していきます。まずはじめに、量子コンピュータができないことについて概要を見ていきましょう。量子コンピュータの応用範囲や制限事例についても触れます。また、量子コンピュータの技術的課題や現在の実力についても考察します。

本稿では、以下の項目に焦点を当てて取り組みます。

  1. 量子コンピュータができないことの概要
  2. 具体的な制約と限定事例
  3. 量子コンピュータのタイプと技術的課題
  4. 量子コンピュータの現在の実力と取り巻く状況

次の章から、これらのテーマについて詳しく見ていきます。量子コンピュータの可能性を最大限に引き出すためには、その制約と技術的課題に向き合い、解決策を見つけていく必要があります。今後の量子コンピュータの発展に非常に興味がある方には、本稿が役立つ情報となることでしょう。

References:

quantum computing

  • 次のリンク先がまとまっていますので、そちらをご覧ください。
  • 他にも
    • 誤り耐性がない量子計算機はスケールしない
    • Grover検索はクエリ計算量
    • 指数時間かかるものが2次の高速化しても、計算量的には計算できないまま
    • 誤り訂正による計算量の増加を踏まえても、量子計算機は速いのか
    • 共通鍵暗号の解読はどうなのか

    • など、列挙しはじめるとキリがなさそうですが、まずは本文に挙げたようなことが共通認識になればと思います。
  • 量子コンピュータにつながる基盤技術を求めて
  • 2019年度中を目途に、量子コンピュータが日本初上陸する。東工大と東北大が形成する研究拠点に量子コンピュータ「D-Wave」本体が設置されるのだ。これまでは海外に設置されたマシンにクラウド経由で接続していたが、格段に使いやすさが向上することで、民間企業と連携しながら、東工大の基礎研究と東北大の応用研究を掛け合わせた世界的な研究拠点への発展が期待されている。
  • 世界規模で目覚ましい研究開発が進む量子コンピュータ分野において、半導体のシリコンを用いた基盤技術の開発に取り組んでいる小寺哲夫准教授。量子コンピュータのさらなる進化に向けた研究の現状と展望を小寺准教授と学生2名にうかがった。
  • 2021年7月27日、新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センターで稼働を開始した、量子コンピューター「IBM Quantum System One」。

2. 量子コンピュータができないことの概要

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量子コンピュータは非常に高速な計算が可能であると言われていますが、すべての計算問題においてその能力を発揮するわけではありません。以下に、量子コンピュータができないことについて概要を説明します。

2.1 並列計算の制約

量子コンピュータは、並列計算によって多くの組み合わせを同時に計算することができます。しかし、結果を取り出す際には制約があります。量子ビットは状態を読み出すと、確率的に1つの状態に確定し、以前の情報が失われます。つまり、並列計算はできるものの、取り出せる結果はひとつ限りです。

2.2 確率的な演算結果

量子コンピュータの演算結果は確率的に変化します。量子状態の読み出し時にエラーが発生するため、正確な結果を得ることはできません。量子コンピュータは確率的な結果を取得するタスクには非常に効果的ですが、確実に正しい答えを求められるような問題には適していません。

これらの制約により、量子コンピュータは特定の問題にのみ適用できることがわかります。問題の性質に応じて計算方法を工夫する必要があります。

3. 具体的な制約と限定事例

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量子コンピュータには現在いくつかの制約があります。以下で、量子コンピュータの制約と具体的な限定事例について説明します。

3.1 量子ビットの数の限定

現在の量子コンピュータは、利用できる量子ビットの数に制約があります。通常、数十から数百の量子ビットしか利用できず、そのため非常に限定的な問題にしか対応できません。

3.2 特定の計算に特化した問題設定

現在の量子コンピュータは、特定の問題に最適化された計算しか行えません。例えば、ランダム量子回路のサンプリングなどの特定の計算には非常に優れた性能を持つ反面、一般的な演算や複雑な問題には適応できません。

3.3 必要な技術の未解決な課題

量子コンピュータの実用化には、いくつかの未解決の技術的課題が存在します。例えば、量子ビットの安定性や誤り訂正機能の実現、大規模な量子回路の構築などが課題とされています。

3.4 限定的な応用例

現在の量子コンピュータは、特定の応用例において限定的な成功を収めています。例えば、量子アニーリング方式を利用した組合せ最適化問題の解決や、量子ゲート型の量子コンピュータを用いた素因数分解の高速化などが知られています。

以上のように、現在の技術レベルでは量子コンピュータには制約があり、特定の計算に特化した問題設定しか対応できません。また、まだ解決されていない技術的な課題もあり、実用化には時間がかかるとされています。しかし、限定的な応用例においては従来のコンピュータよりも高速な計算が可能であることが示されています。

4. 量子コンピュータのタイプと技術的課題

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現在、量子コンピュータの開発は様々なタイプのコンピュータとそれぞれの技術的課題に取り組む必要があります。ここでは主な量子コンピュータのタイプと直面している技術的課題について説明します。

4.1 超伝導量子コンピュータ

超伝導量子コンピュータは現在最も進歩している量子コンピュータのタイプです。超伝導状態の量子ビットを利用して計算を行いますが、以下のような技術的課題が存在します。

  • 量子エラー訂正: 超伝導量子コンピュータでは、量子ビットがノイズに弱いため、エラーを訂正する技術が必要です。しかし、現在の集積度では、量子エラー訂正機能を搭載することが難しい状況です。
  • 冷凍機のサイズと熱流入問題: 超伝導量子コンピュータは極低温環境を必要とするため、特殊な冷凍機が必要です。しかし、現在の集積度では、冷凍機のサイズが大きくなりすぎるため、実現には課題があります。また、冷凍機と制御機器の間の熱流入問題も解決する必要があります。

4.2 光量子コンピュータ

光量子コンピュータは光を利用した量子ビット(光量子ビット)を使用して計算を行います。このタイプのコンピュータは、量子エラー訂正が不要であるという利点がありますが、まだまだ技術的な課題が存在します。

  • 光量子ビットの安定性: 光量子ビットは環境の影響を受けやすいため、安定性の向上が求められます。また、光量子ビット間の相互作用の制御も技術的な課題となっています。
  • 光量子ビットの生成と検出: 光量子ビットの生成と検出には高性能な光素子が必要です。現在の技術では、この要件を満たすことが難しいため、研究が進められています。

4.3 その他の量子コンピュータ

超伝導量子コンピュータと光量子コンピュータ以外にも、イオン量子コンピュータや中性原子量子コンピュータなど、様々なタイプの量子コンピュータが研究開発されています。これらのタイプの量子コンピュータもそれぞれ独自の技術的課題を抱えています。

  • イオン量子コンピュータ: イオン量子コンピュータでは、イオンを使った量子ビットを利用します。このタイプのコンピュータでは高い制御精度が求められるため、技術的な課題が存在します。
  • 中性原子量子コンピュータ: 中性原子量子コンピュータは、中性原子を使った量子ビットを利用します。このタイプのコンピュータも高い制御精度やビット間の相互作用の制御など、技術的な課題を抱えています。

これらの量子コンピュータの技術的な課題は、研究者や企業の技術開発によって解決されていくことが期待されています。量子コンピュータの実用化に向けた研究開発は現在も進行中であり、様々なタイプのコンピュータの進化が期待されています。

5. 量子コンピュータの現在の実力と取り巻く状況

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現在の量子コンピュータの実力はまだ充分ではありませんが、世界中で様々な研究と開発が行われています。以下では、現在の量子コンピュータの状況について詳しく見ていきましょう。

量子ビット数の向上

量子コンピュータの性能向上には、まずは量子ビット数の増加が必要です。現時点では、IBMの超伝導量子コンピュータが最大127量子ビットの集積度を持っていますが、エラーが多く計算能力を十分に発揮することができていません。

量子エラー訂正機能の重要性

量子ビットのエラーに対処するためには、量子エラー訂正技術の導入が不可欠です。現在の量子コンピュータはエラーが発生しやすく、エラーを検出し訂正する技術が重要です。誤り耐性のある汎用量子コンピュータの実現には、約100万個の物理量子ビットが必要とされています。

集積度の限界

超伝導量子コンピュータの集積度は指数関数的に増加しており、2035年頃には100万個の物理量子ビットを搭載した量子コンピュータが実現する可能性があります。しかし、集積度を増やすにはさまざまな課題が存在します。例えば、冷凍機や量子コンピュータチップの制御機器との接続などがあります。

量子コンピュータの限定的な応用分野

量子コンピュータは特定の数学的問題において高速化が期待されますが、一般的な計算やエクセルの表計算などには適していません。ただし、創薬や材料開発、人工知能、金融など幅広い産業分野で破壊的なインパクトが期待されています。特に金融業界では量子コンピュータの活用が進みつつあり、証券会社や銀行がビジネス適応を検討しています。

技術開発競争と未来への展望

量子コンピュータの研究開発は世界的な競争となっており、さまざまな方式の研究が行われています。超伝導量子コンピュータがリードしていますが、光量子コンピュータやシリコン量子コンピュータなど他の方式も注目を集めています。しかし、量子コンピュータの実現にはまだ多くの課題が残されており、非連続的なイノベーションと長期の時間が必要です。

現時点では量子コンピュータの実力はまだ限定的ですが、研究と技術開発の進展によりその実力は向上していくことが期待されています。さらに、量子コンピュータの応用範囲は広く、経済活動や社会問題の解決にも貢献する可能性があります。まだ課題は多く残されていますが、今後の進展に期待したいところです。

まとめ

現時点では量子コンピュータの実力は限定的ですが、研究と技術開発の進展によりその実力は向上していくことが期待されています。量子コンピュータは特定の数学的問題において高速化が期待され、創薬や材料開発、人工知能、金融など幅広い産業分野で破壊的なインパクトが期待されています。さらに、技術開発競争も激化し、超伝導量子コンピュータを始めとした様々な方式の研究が行われています。量子コンピュータの実現にはまだ多くの課題が残されており、非連続的なイノベーションと長期の時間が必要ですが、その可能性は広範であり、経済活動や社会問題の解決にも貢献することが期待されます。今後の進展に期待したいところです。

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