海底ケーブルとは?BTS釜山公演を支えたインフラの仕組み・役割を徹底解説

海底ケーブルとは?BTS釜山公演を支えたインフラの仕組み・役割を徹底解説

BTSの世界同時配信を支えた「見えないインフラ」の正体

BTSの釜山公演が世界約190カ国で同時生中継され、1840万人もの視聴者を集めたことをご存知でしょうか。その規模感もさることながら、画面がカクついたり途切れたりすることなく、世界中の人々がリアルタイムで同じパフォーマンスを楽しめたことには、実は驚くべき技術が隠されています。

「衛星通信で配信したんじゃないの?」と思われる方も多いかもしれません。でも実は、現代の国際インターネット通信の約95%以上は、私たちの足元…正確には海の底を通る「海底ケーブル」が担っているんです。

この記事では、BTSの釜山公演という身近な話題から、普段は意識することのない「海底ケーブル」というインフラについて、その仕組みや役割、そして韓国・釜山が果たしている重要な役割まで、詳しく解説していきます。

海底ケーブルって何?基本の仕組みを分かりやすく解説

海底ケーブルは「海の光ファイバー」

海底ケーブルとは、その名の通り海底に敷設された通信ケーブルのことです。大陸と大陸、国と国をつなぐ国際通信の「大動脈」として機能しています。

ケーブルの中心部分には、光ファイバーコアと呼ばれる部分があります。ここを光信号が高速で走り抜けることで、膨大なデータが伝送されるんです。YouTubeの動画も、InstagramのストーリーズもNetflixのドラマも、国境を越えるときはほとんどこの海底ケーブルを通っています。

海底ケーブルの構造:なぜ海底で壊れないの?

「海の底にケーブルを敷いて大丈夫なの?」という疑問は当然ですよね。実は海底ケーブルは、過酷な環境に耐えるための多層構造になっています。

中心の光ファイバーコアの周りには、まず絶縁体が巻かれます。その外側には防水層があり、さらに鋼鉄ワイヤーで補強されています。深海部分ではシンプルな構造でも問題ありませんが、浅い海域では船の錨や漁具に引っかかるリスクがあるため、より頑丈な保護層が施されているそうです。

面白いことに、サメがケーブルをかじってしまうというリスクも実際にあるとされています。そのため、サメが嫌がる素材を使ったり、特殊なコーティングを施したりといった対策も取られているんですよ。

衛星じゃダメなの?海底ケーブルが主役の理由

「宇宙に衛星があるんだから、そっちを使えばいいのでは?」と思う方もいるでしょう。確かに衛星通信も存在しますが、実は国際的なデータ通信の主役は圧倒的に海底ケーブルなんです。

その理由は主に3つあります。

1つ目は**通信容量**です。海底ケーブルは何百本もの光ファイバーを束ねることができ、衛星とは比較にならないほど大量のデータを同時に送れます。

2つ目は**遅延の少なさ**です。衛星は地上から何万キロも離れた軌道上にあるため、信号が往復する時間がかかります。一方、海底ケーブルは物理的な距離は長くても、光の速さで信号が伝わるため遅延が少ないんです。

3つ目は**安定性**です。悪天候や太陽フレアなどの影響を受けやすい衛星通信に比べ、海底ケーブルは環境の変化に強く、安定した通信が可能です。

BTSの釜山公演のような大規模な生配信では、遅延が少なく大容量のデータを安定して送れることが絶対条件。だからこそ、海底ケーブルが不可欠だったんです。

BTS釜山公演を支えた「釜山の海」の役割

釜山は「データの港」だった

韓国の港湾都市・釜山といえば、物流や造船の拠点として有名ですよね。でも実は、釜山は「データの港」としても極めて重要な役割を果たしているんです。

釜山には「KT釜山国際通信センター」という施設があります。ここは海底ケーブルが陸上に上がってくる「陸揚げ局」と呼ばれる拠点で、複数の国際海底ケーブルが集中しています。

BTSの釜山公演の映像は、この釜山の通信センターを経由して、アジア、北米、ヨーロッパなど世界各地へと送り出されていったと考えられます。まさに釜山は、韓国発の文化コンテンツを世界に届ける「デジタルの玄関口」なんです。

KT釜山国際通信センターって何をしているの?

KT釜山国際通信センターは、単に海底ケーブルが上陸している場所というだけではありません。ここには高度な通信技術と運用ノウハウが集積しています。

このセンターでは、複数の海底ケーブルシステムから送られてくる国際トラフィックを受け止め、韓国国内のネットワークへとスムーズに接続する役割を担っています。いわば国際通信の「交通整理」をしているようなイメージです。

さらに注目すべきは、KTが「ネットワーク運用センター(NOC)」としての役割も果たしている点です。これは、韓国国内だけでなく、他国にある陸揚げ局まで遠隔で監視・管理する機能のこと。つまり、アジア太平洋地域の海底ケーブルネットワーク全体の「司令塔」的な役割も担っているんです。

釜山と巨済の「二重化」で安心を確保

通信インフラで何より大切なのは「止まらないこと」です。どんなに高性能でも、1箇所に障害が起きただけで全てがストップしてしまうようでは困りますよね。

KTは釜山だけでなく、近隣の巨済(コジェ)にも陸揚げ局を設けています。この「二重化」により、万が一片方の拠点に問題が発生しても、もう一方でカバーできる仕組みになっています。

韓国の通信会社でこうした二重化体制を持っているのはKTだけとされており、これが高い信頼性につながっているんです。

韓国KTの海底ケーブル運用技術がスゴイ理由

50年の歴史と「無事故」の実績

KTと海底ケーブルの関わりは、1980年に開通した韓国初の国際海底ケーブル「JKC(日韓ケーブル)」から始まります。つまり約50年にわたる運用の歴史があるんです。

そして驚くべきことに、2000年以降、韓国領海内でKTが管理する海底ケーブルに障害が1件も発生していないとされています。この「無事故」実績は、単なる運ではなく、高度な技術とノウハウの結果なんです。

リスクを避けるルート設計

海底ケーブルにとって最大のリスクは、自然災害や人為的な損傷です。特に海底地震、火山活動、活発な漁業エリア、国際紛争地域などは、ケーブルにとって危険なゾーンとなります。

KTは長年の経験から、こうしたリスクの高い海域を避け、最も安定したルートを選定するノウハウを蓄積してきました。ケーブルを敷設する前には海底の地形や海流、地質などを詳細に調査し、慎重にルートを決定します。

また、浅海部分では特に保護を強化したり、危険な海域では複数のルートを用意して冗長性を確保したりと、細かな配慮が積み重ねられています。

国際コンソーシアムから信頼される運用力

現代の海底ケーブルは、1つの企業や国が単独で作るのではなく、複数の国や通信事業者が共同で出資する「コンソーシアム」形式が一般的です。

KTは、APG(Asia Pacific Gateway)やNCP(太平洋横断ケーブル)など、主要な国際海底ケーブルコンソーシアムに参加しています。そしてその中で、高い運用技術を認められ、各国の陸揚げ局を遠隔管制するNOCの役割を任されているんです。

これは単に「ケーブルを持っている」というだけでなく、「運用のプロフェッショナル」として国際的に評価されている証拠と言えるでしょう。

海底ケーブルの未来:2029年までに容量5倍へ

爆発的に増え続けるデータトラフィック

BTSのような大規模配信イベント、eスポーツの世界大会、4K・8K映像のストリーミング、そしてこれから普及するであろうVRやメタバース…。国際的なデータトラフィックは今後も爆発的に増加していくと予測されています。

特に高画質映像やマルチアングル配信、インタラクティブなコンテンツが当たり前になれば、必要な通信容量は現在の何倍にもなるでしょう。

KTの野心的な拡張計画

こうした需要増加を見越して、KTは2029年までに国際バックボーン網の容量を現在の約5倍に拡張する計画を発表しています。

具体的には、新規の海底ケーブルシステムの建設に加え、既存ケーブルの増強、さらには釜山・巨済以外の新たな地域にも陸揚げ局を展開する構想があるとされています。

これにより、より多くのデータを、より安定して、より速く世界中とやり取りできる環境が整備されることになります。

「文化強国」を支える通信インフラ

K-POPや韓流ドラマ、映画、ゲームなど、韓国発のコンテンツが世界中で人気を集めています。そしてこうした文化コンテンツの世界展開には、それを支える強力な通信インフラが不可欠です。

BTSの釜山公演が1840万人に届けられたのも、Netflixで韓国ドラマが世界中で視聴されるのも、背景には海底ケーブルという「見えないインフラ」があります。

韓国は文化コンテンツという「ソフト」だけでなく、それを世界に届ける通信インフラという「ハード」の両面で力を入れており、この相互作用が韓国の文化発信力をさらに強化しているんです。

現在運用されている主要な海底ケーブルシステム

KTが運用する5本のケーブル

現在、KTはアジア方面向けに3本、北米方面向けに2本、合計5本の海底ケーブルシステムを運用しています。韓国全体では9本の海底ケーブルが運用されていますから、その半数以上をKTが担っていることになります。

アジア方面のケーブルは、日本、中国、台湾、香港、シンガポール、フィリピンなどを結び、アジア域内の高速通信を支えています。一方、北米方面のケーブルは太平洋を横断し、アメリカ西海岸とつながっています。

APG(Asia Pacific Gateway)の役割

特に重要なのがAPG(Asia Pacific Gateway)と呼ばれる海底ケーブルシステムです。これは日本、中国、韓国、台湾、香港、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポールなど、アジア太平洋地域の主要国を結ぶ大容量ケーブルです。

KTはこのAPGにおいて、単なる参加者ではなく、中核的な運用主体の1つとして機能しています。他国の陸揚げ局まで遠隔管制できるNOCの役割を担っているのは、その技術力の高さが評価されているからなんです。

太平洋横断ケーブルNCP

NCP(太平洋横断ケーブル)は、韓国と北米を直接結ぶ重要なルートです。アジア発のコンテンツをアメリカやカナダに届けたり、逆にアメリカ発のサービスをアジアで利用したりする際に、このケーブルが活躍します。

BTSの釜山公演も、北米地域への配信にはこのNCPが大きな役割を果たしたと考えられます。

海底ケーブルを脅かすリスクとその対策

自然災害:地震・津波・海底火山

海底ケーブルにとって最も恐ろしいのが、海底地震や津波、海底火山の噴火などの自然災害です。特に環太平洋の「火の輪」と呼ばれる地震帯は、高いリスクエリアとなります。

KTはルート設計の段階で、できる限りこうした地震帯や火山地域を避けるようにしています。完全に避けることが難しい場合は、複数のルートを用意して冗長性を確保します。

人為的損傷:船の錨・底引き網

意外かもしれませんが、海底ケーブルの損傷原因で多いのが人為的なものです。特に船の錨や底引き網などの漁具が、浅海部分のケーブルに引っかかってしまうケースがあります。

これを防ぐため、浅い海域では通常より厚い保護層を施したり、漁業禁止区域を設定したり、航路から離れた場所を選んだりといった対策が取られています。

サメの攻撃という意外なリスク

信じられないかもしれませんが、サメが海底ケーブルをかじってしまうという事例が実際に報告されています。サメは電磁場を感知する能力があり、ケーブルから発せられる微弱な電気信号に反応してしまうのではないかと言われています。

現代のケーブルでは、サメが嫌がる素材を使ったり、特殊なコーティングを施したりして、こうした生物的リスクにも対応しています。

国際紛争・テロのリスク

海底ケーブルは国際通信の要であるがゆえに、紛争時の標的になるリスクもあります。また、意図的な破壊工作やサイバーテロの対象になる可能性も指摘されています。

KTは政情が不安定な地域や紛争海域を避けたルート設計を心がけています。また、物理的なセキュリティだけでなく、サイバーセキュリティにも高度な対策を施しているとされています。

海底ケーブルの保守・メンテナンス

24時間365日の監視体制

KT釜山国際通信センターでは、24時間365日体制で海底ケーブルの状態を監視しています。通信品質、信号の強さ、エラー率など、様々なパラメータをリアルタイムでチェックし、わずかな異常も見逃さないようにしています。

BTSの釜山公演のような大規模イベントの際には、特に監視を強化し、トラブルが起きないよう万全の体制で臨んでいると考えられます。

修理はどうやるの?専用船の存在

万が一海底ケーブルに損傷が発生した場合、どうやって修理するのでしょうか?実は世界には「ケーブル修理船」と呼ばれる専用の船が存在します。

この船は損傷箇所まで航行し、海底からケーブルを引き上げて修理します。深海部分では数千メートルの深さからケーブルを引き上げる必要があり、高度な技術と専用機材が必要となります。

KTは長年の運用経験から、迅速な修理体制も整えています。ただし前述の通り、2000年以降韓国領海内での障害はゼロという驚異的な実績を維持しているため、実際に修理が必要になるケースは極めて稀だそうです。

定期的な予防保守

障害が起きてから対処するのではなく、障害を未然に防ぐための予防保守も重要です。KTでは定期的にケーブルの状態を詳細に診断し、劣化の兆候がないかチェックしています。

また、海底の地形変化や新たなリスク要因(新設された航路や漁場など)についても継続的に情報収集し、必要に応じて対策を講じています。

グローバル配信イベントと海底ケーブルの関係

BTS公演級のイベントに必要な通信容量

BTSの釜山公演のように、世界190カ国以上で1840万人が同時視聴するイベントでは、一体どれほどの通信容量が必要になるのでしょうか?

仮に1人あたり平均5Mbps(メガビット毎秒)の高画質配信だとすると、1840万人で計算すると約92Tbps(テラビット毎秒)という天文学的な数字になります。実際には全員が同じタイミングで最高画質で見ているわけではないので、実効的な数字はもう少し小さくなりますが、それでも膨大な容量が必要です。

こうした大容量データを安定して届けられるのは、まさに海底ケーブルのおかげなんです。

eスポーツ・グローバルカンファレンスの増加

BTSのような音楽公演だけでなく、近年はeスポーツの世界大会や、企業のグローバルカンファレンスなど、「同時多発視聴」を前提としたイベントが増加しています。

特にeスポーツでは低遅延が重要です。プレイヤーの操作が0.1秒遅れるだけで勝敗に影響するため、遅延の少ない海底ケーブル経由の通信が不可欠となります。

4K・8K・VR配信時代への備え

これからは4K、8K、さらにはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)を使った配信も一般化していくでしょう。こうした高精細・没入型のコンテンツは、現在の何倍ものデータ量を必要とします。

KTが2029年までに国際バックボーンを5倍に拡張する計画を進めているのは、まさにこうした未来を見据えてのことなんです。次世代のBTS公演では、VRヘッドセットをつけてステージ上にいるような体験ができる…そんな日も遠くないかもしれません。

韓国が「通信インフラ強国」になった背景

政府の積極的なICT投資

韓国が通信インフラで強みを持つようになった背景には、政府の積極的なICT(情報通信技術)投資があります。1990年代から「情報化社会」を国家戦略として推進し、光ファイバー網の整備や海底ケーブルへの投資を進めてきました。

その結果、韓国の国内インターネット速度は世界トップクラスとなり、それが国際通信インフラの強化にもつながっています。

地理的優位性:アジアと世界をつなぐハブ

韓国は地理的に、日本・中国・ロシアという大国に囲まれつつ、東南アジアや太平洋への玄関口でもあります。この立地は、アジアと世界をつなぐ通信ハブとして理想的なんです。

釜山が海底ケーブルの陸揚げ拠点として選ばれたのも、こうした地理的優位性があってこそです。

産業界と技術開発の連携

KTのような通信企業だけでなく、サムスンやLGなどの電子機器メーカー、造船会社、通信機器メーカーなど、関連産業が総合的に発展してきたことも大きいです。

海底ケーブルの製造、敷設、運用、メンテナンスという一連の技術を国内で完結できる体制が、韓国の競争力を支えています。

まとめ:見えないインフラが支える「つながる世界」

BTSの釜山公演を1840万人が楽しめたのは、メンバーのパフォーマンスや制作スタッフの努力はもちろんですが、その背後には海底ケーブルという「見えないインフラ」の存在がありました。

普段私たちは、海の底に何百本もの光ファイバーケーブルが走っていることなど、ほとんど意識しません。でも、YouTubeを見るとき、海外の友達とビデオ通話するとき、世界のニュースをチェックするとき…実はその裏側では、海底ケーブルが黙々と働いているんです。

KT釜山国際通信センターは、その重要な拠点の1つ。約50年の運用歴と無事故の実績、24時間365日の監視体制、そして2029年に向けた5倍への拡張計画。これらすべてが、私たちの「つながる世界」を支えています。

次にBTSのライブ配信を見るとき、あるいは韓流ドラマをNetflixで楽しむとき、ちょっとだけ「釜山の海の底」に思いを馳せてみてください。そこには、世界をつなぐ光のハイウェイが走っています。

文化コンテンツという「見えるもの」と、通信インフラという「見えないもの」。この両輪が揃ってこそ、韓国発のコンテンツは世界中の人々に届けられるのです。そしてこれからも、海底ケーブルは私たちの知らないところで、世界をつなぎ続けていくことでしょう。